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特集
2011年6月20日号
News Focus

高水準な水道施設の構築に向けて

東京都水道局における取り組みを紹介する

 水道は最も重要なライフラインの一つであり、都市活動や生活を営む上で欠かすことができない都市インフラである。先の東日本大震災では水道施設も大きな被害を受け、耐震性の向上をはじめとする施設のレベルアップの必要性が再認識されている。国内水道のトップランナーである東京都水道局は、昨年1月に策定した「東京水道経営プラン2010」に基づき、より高いレベルの震災対策や安全でおいしい水の供給など、高水準な水道施設の構築に向けた数多くの先駆的な取組みを行っている。そこで、東京都水道局における取り組みを紹介する。

 

安定給水の確保

震災対策の着実な推進

水道の耐震継手の構造

 わが国は世界有数の地震国であり、国の地震調査研究推進本部の予測によると、関東地方におけるマグニチュード7程度の大地震の発生を、今後30年以内に70%という非常に高い確率で予測している。

 また、平成18年5月に東京都が公表した「首都直下地震による東京の被害想定」では、震災発生時の断水率を最大79・5%、通常復旧までの日数を30日以内としており、水道施設における大きな被害を想定している。

 断水による都市活動や都民生活への影響は計り知れず、首都機能の確保と都民の生活を守るため、東京都水道局では震災対策を最重要課題の一つとして取り組んでいる。これまで、重点的に取り組んできた耐震強度の低い経年管の取り替えはほぼ終了し、現在、浄水場や給水所などの耐震化について数値目標を掲げて計画的に実施している。

 さらに、「東京水道経営プラン2010」では、耐震継手管の導入に特に力を入れており、これまでの管路の取替計画を大幅に前倒しする「水道管路の耐震継手化緊急10か年事業」を立ち上げた。 耐震継手は、管路の接合部分に抜け出し防止機能を持たせたもので、阪神・淡路大震災において接合部分における抜け出しによる被害が多発したことを教訓に東京都水道局では全面的に採用している。

 東日本大震災においても耐震継手の効果が確認されており、震災時における断水被害の軽減に大きな効果が期待できる。

管路取替事業の推移
※クリックすると拡大されます

 同事業では、平成22年度から31年度までの10年間に、24%の耐震継手管の採用率を48%に、震災時の復旧日数を30日以内から20日以内に短縮することを目標としている。

 平成22年度は主に体制整備と工事設計を中心に実施しており、工事量としては平成23年度から本格的に増加することになる。主要施設整備事業における事業規模は22年度の168キロメートル、256億円の事業費に対して、320キロメートル、495億円と、ほぼ倍増を見込んでいる。

 

給水安定性の一層の向上

多摩丘陵幹線 シールドマシン

多摩丘陵幹線 シールドマシン

 震災時の給水確保はもとより、事故時等を含めた給水安定性の向上も東京都水道局の主要施策の一つであり、送配水管ネットワークの整備や給水所の新設・拡充など、高水準な水道施設の整備に向けた取り組みを実施している。

 送配水管ネットワークは、浄水場と地域給水の拠点である給水所の間や給水所相互間を結ぶ広域的な送配水管を整備し、効率的な水運用を図るとともに震災時や事故時等におけるバックアップ機能の強化を図ることを目的としている。

 区部では、東京都東端の三郷浄水場および金町浄水場から東京港を横断し、大田区の東海給水所までを結ぶ東南幹線、多摩地区では拝島給水所から八王子市を経由して多摩市の鑓水小山給水所までを結ぶ多摩丘陵幹線の整備を進めている。

東南幹線シールド工事

東南幹線シールド工事

 両路線ともまもなく完成を迎えるが、「東京水道経営プラン2010」では今後、区部では朝霞浄水場と上井草給水所を結ぶ朝霞上井草線の更新に向けた代替路線、多摩地区では東村山浄水場から東大和給水所を結ぶ多摩南北幹線の第一次整備区間を整備することとしており、早期着手に向けて調査・検討を行っている。

 給水所の新設・拡充については、給水所の地域的な偏在や、配水池容量の不足等を解消するために整備を進めており、平成22年度の大谷口給水所の完成に続き、現在、江北給水所の新設と、和田堀給水所および多摩平浄水所、秋留台給水所等で配水池の増強を推進している。

 

安全でおいしい水の供給

高度浄水施設の導入経過及び今後の予定
※クリックすると拡大されます

金町浄水場

金町浄水場

 東京都水道局では平成16年度から「安全でおいしい水プロジェクト」をスタートさせ、水道水に対する不安や不満を解消し、一人でも多くの都民に水道水を飲んでもらうための施策やそのPRを実施している。また、「東京水道経営プラン2010」においても、安全でおいしい水の供給を主要施策の一つに掲げ、水源から蛇口に至るまで、幅広い施策を展開している。

 特に、河川水をおいしい水にするための高度浄水処理の導入は、平成25年度末までに利根川水系の全ての浄水場で、取水量の全量を高度浄水処理できるように整備を進めており、平成21年度には東村山浄水場で施設が完成した。現在、金町浄水場の第三期事業、三郷浄水場の第二期事業、朝霞浄水場の第二期事業を進めており、工事も本格化している。予算額についても平成22年度の211億円から23年度の278億円と67億円を増加させ、目標達成に向けたラストスパートに入ったところであり、より一層東京の水がおいしくなることが期待される。

 また、小中学校の水飲栓直結給水化モデル事業も東京都水道局が力を入れている施策の一つである。この事業は、次世代を担う小中学生に水道水のおいしさを実感してもらうため、小中学校の水飲栓を直結給水方式に切り替える際の技術協力と工事費用の一部を東京都水道局が負担するものである。平成19年度にスタートして以降、高い評価を得ており、事業を実施した学校からは、「水が冷たくなり水道水が好きになった」という児童の声や、「児童の水に関する興味が高まった」といった教員の声も寄せられている。

小中学校水飲栓直結給水化モデル事業のイメージ

小中学校水飲栓直結給水化モデル事業のイメージ

 また、実施対象校の拡大についても要望が寄せられ、平成22年度には対象をこれまでの公立小学校から、私立学校を含めた小中学校に拡大し、事業実施期間も平成19年度から28年度までの10年間に拡大した。

 こうした取り組みの結果、家庭での飲み水としての水道水に満足している都民の割合が、平成15年度の「安全でおいしい水プロジェクト」の開始時点では28・1%だったものが、平成21年度には46・6%まで向上している。

東村山浄水場

東村山浄水場

 東京都水道局では、高度浄水処理の着実な導入をはじめ、徹底した水質管理や直結給水化の推進、貯水槽水道の適正管理など水道水の製造・供給とともに、PR活動の展開やお客さまの声の活用といったハード・ソフト双方の取り組みにより、お客さま満足度のより一層の向上を図り、一人でも多くの都民に水道水を飲んでもらおうという考えだ。

 

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