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特集
2011年7月20日号
News Focus

東日本大震災を教訓に都市基盤整備の一層の強化を

 3月11日に発生した東日本大震災は、被災地域に甚大な被害をもたらしただけでなく、首都東京の防災のあり方にも大きな警鐘を鳴らす結果となった。近い将来、確実に発生すると予想される首都直下地震、さらに大規模な東海・東南海の複合型地震の発生をも想定した防災対策の強化が急がれている。東京都は今回の震災を受け、直ちに「東京緊急対策2011」を策定、6月には総額1370億円の補正予算を編成したところだが、これにとどまらず、現行の長期計画を見直し、年内を目途に「2020年の東京(仮称)」を策定する予定だ。その中では、都市防災の基本となる都市基盤整備についても、一層の強化・促進に向けた取り組みが盛り込まれる見込みだ。今年度進められている都市基盤整備関連事業の現況と、今回の震災を受けた耐震対策について紹介する。

 

公共建築物を耐震化
 津波・液状化対策も強化

耐震化対策

 都市基盤整備において最優先で取り組んでいるのが公共建築物などの耐震化だ。都は来る震災に備え、災害発生時に重要な拠点となる学校や病院等の公共建築物について、助成制度を設けて、耐震化を進めている。

 また、広域的な防災力向上の観点から、特定緊急輸送道路沿いにある旧耐震基準の建築物の耐震化を一層促進するため、新たに条例を制定して耐震診断を義務付け、診断費用の助成も拡充したところ。

 震災時のライフラインの確保では、水道・下水道施設の耐震化が課題となっており、管路の耐震継手化を前倒して推進するほか、水再生センターなど施設の耐震化を進める。

 このほか、今回の震災で各地に液状化の被害が発生したことから、液状化予測の見直しを進めるほか、道路、空港、廃棄物処分場などの液状化対策にも取り組む。さらに、今回の地震では超高層ビルの長周期地震動が新たな課題として浮上した。そのため、まず都庁舎の耐震性能について調査し、この5月に対策をまとめており、今後、制振装置を設置するなど耐震工事に着手する予定だ。

 一方、地球温暖化により、近年多発している局所的豪雨による浸水被害から都民を守るため、危険性が高い地域の浸水被害対策を推進する。具体的には白子川地下調節池など雨水を一時的に貯留する施設の整備を進めるほか、水位予測システムの実用化を目指す。

 

投資的経費は7年連続の増に

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 平成23年度予算では、都市基盤整備を確実に進めるため、東京港の整備や骨格幹線道路の整備、各種施設の耐震化など、投資効果の高い事業や災害対策などに財源を重点的に配分した。

 その結果、今年度の投資的経費は昨年度に比べ2・4%増の8335億円と7年連続の増となっている。

 東京都は、社会資本の整備は新たな雇用や需要を創出し、経済への波及効果も高いことから着実に推進するとしている。

 

首都圏の交通を円滑化
 3環状・多摩南北道路を整備

道路整備

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 依然として慢性的な渋滞が発生する東京の道路。その解消は物流の円滑化やCO2削減など環境面からも最優先の課題だ。

 そのため、高い事業効果を発揮する「東京外かく環状道路」の整備を国と連携して推進するとともに、首都高の「中央環状品川線」、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)など首都圏3環状の整備をはじめ、多摩南北道路などの骨格幹線道路の整備を進める。

 このうち、中央環状品川線(品川区八潮~目黒区青葉台・延長9・4㎞)は、都による街路事業と首都高(株)による合併施行により整備が進められており、平成25年度の完成を目指す。

 さらに右折待ち車両による交通渋滞を緩和するため、右折レーンを設置する「交差点すいすいプラン」についても事業効果が高いことから、第2次事業を着実に進める。

 一方、良好な都市景観の創出、安全で快適な歩行空間の確保、都市防災機能の強化を図るため、電線共同溝を整備し、道路上に張り巡らされた電線類を地下に収容する無電柱化事業も推進する。都道においては、平成27年度までにセンター・コア・エリア内の無電柱化を目指すとしている。

 

連続立体事業を推進
 3港連携で国際競争力を強化

港湾整備

京浜軸の概念
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 東京港は、首都圏4千万人の生活と産業活動を支える重要な都市インフラ。東京港は22年度の外貿コンテナ取扱個数が過去最高となったが、一方で、近年のアジア諸港の躍進により、国際的地位の低下が進み、我が国経済に深刻な影響を与えかねない状況にある。

 そのため、国際コンテナ戦略港湾として、東京港の貨物集荷力の向上や、貨物取扱量の更なる増加に対応する物流機能の強化などを図る。

 具体的には釜山港等から東京港への利用転換の促進に向け、輸送コストを一部補助するほか、港湾機能の強化として、外貿コンテナターミナルの整備、内貿ユニットロードターミナルの整備、臨海地域における道路ネットワークの整備などを進める。

 さらに、平成20年3月に広域連携強化で基本合意した、京浜3港(東京港・川崎港・横浜港)の連携施策として共同ポートセールスの実施や入港料の一元化など、さまざまな取り組みを展開していくとしている。

 

連続立体交差化

連続立体交差事業(JR武蔵小金井駅)

連続立体交差事業(JR武蔵小金井駅)

 踏切による渋滞を解消するとともに、鉄道によって分断されていた市街地の一体的なまちづくりを進める上で、鉄道の連続立体交差化は大きな事業効果があることから、同事業をさらに促進する。

 これまでに17路線32箇所(延長約80㎞)が完了、約320箇所の踏切を除却しており、現在、JR中央線(三鷹駅~立川駅間)、京急空港線(京急蒲田駅付近)など7路線8箇所で事業を行っている。平成23年度は、西武池袋線(練馬高野台駅~石神井公園駅付近)の踏切除却を予定している。

 さらに京王線(笹塚駅~八幡山駅間、八幡山駅~仙川駅間)、西武新宿線(中井駅~野方駅間、東村山駅付近)についても、新規事業化に向けて、今後、鋭意取り組んでいくとしている。

 

豊洲新市場の整備が軌道に
 過度の電力依存から脱却

市場・ダム整備

豊洲新市場の整備スケジュール
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 ここ数年、都民の大きな関心を集めていた築地市場の豊洲移転問題は、3月の都議会で移転関連予算が可決されたことから、移転推進に向け、土壌汚染対策工事、および本体工事の実施設計がいよいよ本格化する。

 同時に、築地地区については、築地の伝統・文化も活かしながら、銀座や都心に近接し、ポテンシャルの高い築地地区を中心とした将来のまちづくりについて検討が進められる見通しだ。

 一方、民主政権のもと、現在、建設が凍結されている八ッ場ダムについては、治水・利水対策上、その整備が不可欠として、今後も、予定通りダムを完成させるよう、国に対して強く要求していくとしている。

 

環境改善

 東京都は2020年までに、東京の温室効果ガス排出量を2000年比で25%削減することを目標に、大規模事業所に対する温室効果ガス排出総量削減義務化や太陽熱の利用拡大など、実効性のある地球温暖化対策を推進している。

 しかし、今回の原発事故による電力不足を受け、直ちに新たに「東京都電力対策緊急プログラム」を策定、①過度の便利さや過剰に電力を消費する生活様式の見直し、②『東京産都市型電力』を確保し、エネルギー源の多様化・分散化を図る、③これらの取り組みにより、低炭素・高度防災都市づくりを進める―こととした。

 都としては、これまでの地球温暖化対策の取り組みを活用しつつ、電力対策を進めていく考えだ。

 

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