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特集
2012年4月20日号
News Focus

より安全で快適な地下鉄の実現に向けて

〜あなたと走る。都営交通〜

 東京都交通局では、トンネル築造技術を駆使して地下鉄の建設を進め、現在、浅草線、三田線、新宿線、大江戸線の4線合わせて109キロ、106駅で毎日おおよそ230万人のお客様にご利用いただき、東京都心を巡る交通体系の一翼を担っている。京浜急行電鉄、京成電鉄、北総鉄道、芝山鉄道と都営の5社相互乗り入れしている「浅草線」は、最も古く建設され、既に営業開始から51年目を迎えた。また、リニアモーター駆動の鉄軌道として建設され、比較的新しい都心環状地下鉄「大江戸線」も、既に全線開業から11年を経過した。今後とも安心して快適に利用していただくため、日夜さまざまな改良を重ね運営しており、その一端を紹介する。

 

駅施設の快適性の向上

■1(ワン)ルートの確保

 交通局では現在、「バリアフリー新法」や「東京都福祉のまちづくり条例」等を踏まえ、誰もが利用しやすい駅とするため、全ての駅でホームから地上まで、エレベーター等で移動できるようにする、いわゆる「1(ワン)ルート」確保の整備を進めている。

 都営地下鉄4線のうち大江戸線(38駅)は、開業当初から1ルートの確保が図られているが、残りの3線については100%の1ルート確保が図られていない。今後、平成24年度末までに、全ての駅で1ルート確保をする予定である。

 なお、平成23年度末時点で、1ルート確保駅は、106駅中99駅(約93%)である。

 今年度の工事は、新たに着工する箇所を含め、7駅11基を予定している。

■エスカレーターの更新・増設

 都営地下鉄の駅構内には、エスカレーターが約800基設置されている。

 交通局では設置後30年を経過したエスカレーターについて機器更新を実施してきている。機器更新によって安全装置の付加を行い安全レベルの向上が図れることとなる。

 また今後は、乗換え駅などで設置可能な箇所には、お客様の利便性を向上させるため、エスカレーターの増設を計画的に実施していく。今年度は3駅5基を予定している。

■ホーム上の安全対策

 ホーム上の安全対策として可動式ホーム柵の設置を進めており、三田線は全駅設置完了、大江戸線は平成25年6月完了を目処に鋭意設置工事を進めている。

 これに先立ち、補強が必要な駅について、鋼製の補強柱をホーム下に設置する工事を行った。また、これに合わせてホーム乗降口の一部にスロープを設け、ホームと電車との床の段差を縮小して車椅子利用者の利便性向上を図った。

■トイレのグレードアップ

だれでもトイレ

『だれでもトイレ』

 駅のトイレを、お客様が快適にご利用いただけるよう、ユニバーサルデザインを取り入れ、清潔感と機能性を備えたトイレへ計画的に改良工事を進めている。

 「バリアフリー新法」において、ベビーチェア、ベビーベッド、オストメイト水栓器具は、一般トイレへの配置が原則となったことから、“だれでもトイレ”に集中していた機能を一般トイレにも配置している。

 具体的には、①段差の解消②防菌・消臭材料の使用③洋式トイレを多く配置④一般トイレ内にオストメイト対応の水栓器具があるブースを設置⑤パウダーコーナーの設置⑥ベビーベッド・ベビーチェアの設置⑦着替え用フィッティングボードの設置⑧だれでもトイレの温水洗浄暖房便座の設置―などを進める。

 なお、トイレ面積等の制約があるため、これらの施設を全て配置できない場合がある。

■地下駅の火災対策

 国土交通省は、平成15年2月18日韓国大邱(テグ)市の地下鉄火災事故(死者133名、負傷者146名)を踏まえ、平成16年12月27日付で「地下鉄道の火災対策の基準について」(新基準)を定めた。

 それに伴い交通局では平成16年度より旧基準に適応させるとともに、大火源火災に対する排煙設備の改良、避難経路の安全性確保、エスカレーターの踏段降下防止装置設置による避難路としての機能付加、駅構内固定型売店の防災設備整備等の新基準にも対応させる防災改良工事を行っている。

 23年度末現在1駅を残し全駅完了しており、24年度中に最後の1駅も完了予定である。

 

勝どき駅大規模改良工事

 大江戸線・勝どき駅は、駅周辺の開発に伴い、乗降客数が急速に増大し、大江戸線各駅の中でも特に混雑が激しくなってきたことから、これまで、出入口の増設、エスカレーターの高速化、駅に隣接する地域の再開発に合わせた新たな出入口の設置など、さまざまな対策を講じてきた。

 しかしながら、今後も、駅周辺の開発が予定されており、さらに利用者の増加が見込まれることから、ホームの1面増設や改札口のある地下一階コンコースの一体化など、勝どき駅の大規模改良を実施し、利用者の安全と運行の定時性確保など利便性の向上を図ることとしている。

 平成23年8月、土木工事に着手し、現在、道路管理者や各埋設物管理者と調整しながら埋設物の支障移設工事を進めており、平成24年末には、土留工を開始する予定である。営業路線を運行しながら工事を実施するため、列車運行への影響や安全の確保を図りながら、平成27年度末供用開始を目指して工事を進めていく計画である。

 

本所吾妻橋駅改良工事

構築施工中(本所吾妻橋駅)

 本工事は、浅草線本所吾妻橋駅南行線改札口と地上を結ぶエレベーターを設置するための構築を新設するとともに、合わせて、平成16年に改正された火災対策基準に基づき、防火シャッターの設置や排煙設備の改良を行うものである。

 現場は三ツ目通りと浅草通りの幹線道路が交差する箇所であることや、直近には北十間川が流れ、地下水位の高い軟弱な地盤であることなど、困難な工事が当初から予想された。

 これまで、施工の最中に東日本大震災を経験したほか、近隣の宅地にあった古井戸の影響で歩道が陥没するといったトラブルに見舞われたが、無事、掘削が終了し構築工事を鋭意進めている。

 

地下鉄構造物の補強

■構造物の耐震化

24年度耐震工事予定箇所

24年度耐震工事予定箇所

 交通局では、平成7年に発生した阪神淡路大震災を受け、同規模の直下型地震にも耐えられるよう、国の通達に基づき、高架・橋梁の橋脚や地下駅の柱の補強、橋桁の落橋防止装置の設置などの耐震対策を実施し、これまでに完了している。

 しかし、昨年の東日本大震災の際、震源地に近い仙台市営地下鉄では、構造物の崩落など大きな被害はなかったものの、高架部でコンクリートが剥落するなどの被害が発生した。このため、当局では独自に、施設の耐震性を改めて検証した上で、安全性をより高める対策を実施することとした。

 これに基づき、24年度は浅草線や三田線の入出庫線高架部などで、これまで国の通達にない高さ4メートル未満の柱の補強を実施する。

■長寿命化

 地下鉄構造物は開業後50年以上経過し、今後補修が必要な箇所の増加が予想される。

 これまで日常点検や定期点検に基づき、必要な補修を行ってきた。しかし今後は、長寿命化及び補修費用の平準化を図るため、長期的な視点に立った、計画的な補修を行っていく予防保全型の管理手法を導入することとした。

 現在、浅草線第一期開業部の浅草橋駅~蔵前駅のトンネル区間において、漏水箇所に止水剤を注入する漏水対策、鉄筋露出・浮き・ジャンカ部の補修を行う変状対策等、長寿命化を図るための試験施工を行っている。

 平成24年度内には、その効果を確認した後、引き続き隣接区間から全線に展開していく予定である。

■塩害対策

 河川とトンネルが交差している区間では塩分を含んだ水が浸透し鉄筋が腐食するなど、塩害による劣化が進行している。

 そのため河川交差部において健全度調査を実施し、劣化の状態により、コンクリート表面の劣化部分については除去し、健全な補修材に置き換える断面修復工事、漏水部分には止水注入工事などの補修を実施している。

■はく落対策

 シールド部分については、点検ハンマーで打撃してその打撃音と反発によってコンクリートの浮き、はく離の状態を確認する打音調査を実施し、変状が発見された箇所に対して、内側に鋼材を設置するなどのはく落対策工事を実施している。

 さらに高架部分についても、小さなはく落によるコンクリートの落下が第三者に対して重大事故に繋がる恐れがあるため、高架下利用者と公衆への被害防止を目的として、同様の調査と工事を実施している。

道路行政との連携

 交通局では、街路の新設工事などで当局施設と近接施工となる箇所については、道路事業者から事業を受託し工事を施工している。

 近年の実績としては、環状第2号線本線部の地下トンネルが浅草線、三田線と近接するため建設局から工事を受託し、この2月までに全ての工事を完了した。

 また、現在、新宿線と交差する外かく環状道路を東日本高速道路(株)からの受託によりトンネル築造工事に着手したほか、荒川線と平行する環状第5の1号線、補助90号線、補助81号線についても軌道移設や街路築造を建設局から受託し、24年度以降工事に着手する予定だ。

 なお、三田線巣鴨駅から西巣鴨駅付近で行われている国道17号線の拡幅事業に合わせて、通風口の移設工事についても順次施工している。

■東京外かく環状道路新宿線交差部建設工事

土留抗施工中の外環道

土留抗施工中の外環道

 本工事は、千葉県市川市内において新宿線と交差する外かく環状道路の本線トンネル(片側2車線、構造幅員41・9メートル)約90メートルを築造するものである。当該箇所は当局のシールドトンネルとの離隔が小さく、通常の開削工法ではリバウンドによる影響が大きいと判断したため、先端部に鋼製の刃口を取り付けたボックスカルバートをPC鋼線と油圧ジャッキで土中にけん引する非開削工法を採用した。工事は昨年8月に着手し、平成26年度の竣工を目指している。

 

運行を支える保守管理

■都営地下鉄、都電荒川線、日暮里・舎人ライナーの保守管理

三田線高島平駅付近 分岐器交換工事

三田線高島平駅付近 分岐器交換工事

 線路(軌道)の保守・点検作業は、毎日休むことなく行われており、電車の営業時間中は、走行する列車の間合いをみて、線路の異常の有無を点検している。

 また、線路の工事においては、終車後から始発までの2~3時間の中で行っており、レール、分岐器、砕石及びリアクションプレート等の交換や乗り心地改善のためのレール削正作業等を行い、日々、安全で快適な輸送の確保を目指している。

 

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