地域防災力向上を目指して【2】
南町田自主防災組織(町田市) 前編
自治会の枠を超えて、自主防災組織を立ち上げる
意欲的な防災活動を行っている団体として第一回「東京防災隣組」に認定された南町田自主防災組織。設立のきっかけは2004年に起きた中越地震という。自治会の枠を超えた防災組織を築くまでにはどんな苦労があったのか。組織立ち上げの検討から設立までの、手探りの事例を紹介する。
自主防災組織をつくろう
東京都の陸部の南西端に位置する南町田地域は、1975年頃から開発が始まった新興の住宅 地。住所でいうと町田市鶴間1、2、3丁目、境川と国道246号線、16号線にはさまれた一 帯で、中央を東急田園都市線が走る。
人口は約2010人、世帯数は約580。南町田自主防災組織の会員になっているのは426 世帯、そのうちの約50世帯は南町田自治会に入っていない。
実際に災害が起こったら、自治会に入っているかどうかは関係ない。隣に住みながら、非会員 ということで救助をしないとか、自治会の備蓄物資を配布しないということが人道的にできるわ けはなく、逆に非会員に助けてもらうということも大いに考えられる。
自治会からスタートしてはいるが、全世帯の助け合いを目指し、非会員世帯にも広く呼びかけ ているのがこの防災組織の大きな特徴なのだ。
「防災組織立ち上げのきっかけとなったのは、2004年夏に起きた中越地震です。すでに南 町田自治会には自主防災組織である防災隊という組織があり、自治会長が隊長、常任委員が分隊 長を兼ねていましたが、基本的に1年で交代することになっていたので、系統だった行動基準や 数量の根拠立った備蓄もないのが実情でした」と、当時を振り返るのは、副本部長の川口惠一郎 さん。
自治会内の防災体制の現状を踏まえ、11月には防災部の諮問部会として総合防災対策検討委 員会を発足。6ヶ月間の調査・研究・検討に基づき、翌05年5月には中間報告書をまとめた。
「その半年は大変でした。大きな本部会は月に1回以上、ヒヤリング調査や検討委員会といっ た集まりも含め36回にものぼりました」
スタートは被害想定数の算出
自治会全世帯と近隣の老人会世帯を対象にアンケート調査を行うとともに、まず行ったのは町 内の被害想定数の算出。
「私たちの大部分は大きな地震に遭ったことがありませんから、大地震が来たらこの町と自分 の生活はどうなるのか、ということがイメージできにくいのです。阪神・淡路大震災の西宮市の 指数(「地域防災計画の実務」京都大学防災研究所編)を使って算定したのですが、結果は死者 5人、負傷者41人、全壊家屋125軒、要救出現場数50現場、避難者162名、火災発生数 1件というものでした。この数字を見て、町内の人も本気になりましたね」
この被害総定数から導き出された備蓄数量が図1だ。金額にすると228万円+αで260万 円ほど。同様に、通路や空間を考慮した、倉庫の必要ボリュームを出すことができ、全容量が8・ 4m3(立方メートル)となることから、2ヶ所の倉庫が必要ということも判明した。
「1年間で負担するには大きい金額なので、3年間に分けて備蓄をすることにしました。立ち 上げ当初の年会費は2400円でしたが、今は1800円です」
地域内のブロック分けと班分け
次に手がけたのは地域内をブロックに分けることだった。自治会内はすでに19のブロックに分けられていたが、各ブロックは非常に長いブロックがあったり、道路を2本も隔てるような広いブロックもあった。
「同じブロックの人同士でも顔や名前を知らないことが多く、災害時の防災組織として隣近所の助け合いや素早い消火に役に立たないのではないかと思いました。そこで、『ごみの収集』の単位に着目したんです。ごみの集積場所は、運びやすさや週当たりの回数から同じブロックの人が顔を合わせる可能性が高く、挨拶する間柄になっていますからね」
班分けは、町田市の推奨体制に基づいて、①救護班、②消火班、③誘導班、④給食班、⑤情報班とした。阪神・淡路大震災時の助け合いを見ると、救護や消火班は10人以上が望ましいことから、全部で40あったごみ収集ブロックを統合し、23ブロックに統合した。
「実はこのブロック分けが大変な作業で、半年以上かかりました。実際のブロックは20~23世帯が多いのですが、12世帯とか28世帯というケースも地域の特性上あるんです。今考えると、もっと大胆に20数世帯のブロック分けにすべきだったかもしれませんね」
実際に南町田自主防災組織が設立したのは諮問部会発足から1年半後の06年5月。これだけの時間がかかったのは自主防災組織をゼロから設立するに当たり、実にさまざまな問題や課題があったからだ。これから防災組織を立ち上げようとしている方は参考にして、いち早い設立と活動を行ってほしい。
具体的な活動の様子は次号でお伝えする。
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