フランス料理には地域の名称や人物名などが、そのまま付けられるものがとても多いとか。一般的に知られているもの、あるいはまだまだ知られていないフランス料理についての由来・歴史などを、ARGO総料理長の山下シェフが紹介します。
第5回 ふんわりすべすべの「マカロン・リス」
今回は最近日本でも有名になってきたフランス菓子マカロンについてお話しします。
本連載第1回でもご紹介したように、16世紀にイタリアのカトリーヌ・ド・メディシスがフランス国王アンリ2世のもとに嫁ぐ時に、多くの料理人と菓子職人を引き連れて来ました。その菓子職人によって、マカロンがフランスに持ち込まれたという説がありますが、もう一つ、791年にフランス・ロワール地方のコルムリーの修道院ですでに作っていたという説もあります。いずれにしてもマカロンと言われる菓子は、基本的にアーモンド、卵白、砂糖を使った焼き菓子です。
実はマカロンにはたくさんの種類があり、世間一般にマカロンと呼ばれているものは、「マカロン・パリジャン」です。これはマカロン・リス(表面がすべすべ、つるつるという意味)とも呼ばれ、他のマカロンと違って卵白と砂糖を泡立てて作るのが特徴で、表面がふんわりすべすべに仕上がります。もともとマカロンは、2枚の生地でジャムやクリームをサンドするような菓子ではありませんでした。現にマカロン・パリジャン以外のマカロンは、生地そのものだけを食します。ではなぜマカロン・パリジャンがジャムやクリームをサンドしているのでしょうか?
それは1930年にパリにあるラデュレという菓子店のピエール・デフォンテーヌが2枚のマカロンにジャムやクリームをサンドして売り出したから。現在は日本を含めほとんどの洋菓子店がこのスタイルのマカロンを作っています。
マカロン・パリジャン以外のおもなマカロンの種類は次の通りです。
・マカロン・ド・ナンシー(ロレーヌ地方ナンシーの銘菓)
・マカロン・ダミアン (ピカルディー地方アミアンの銘菓)
・マカロン・ド・モンモリオン(ポワトゥー地方モンモリオンの銘菓)
その他にもマカロン・ド・サンテミリオンや、マカロン・ド・サンジャン・ド・リュズなど、各地方にオリジナルのマカロンが存在しています。
<山下敦司プロフィール>
フレンチレストラン「アルゴ」(千代田区麹町)総料理長。
服部栄養専門学校卒業後、銀座「フランス料理清月堂」、大阪欧風菓子「ケンテル」を経て、1995年渡仏。
エクス・アン・プロヴァンス「ル・クロー・ドゥ・ラ・ヴィオレット」(ミシュラン二ツ星)、パリ「ル・ディヴェレック」(二ツ星)、アヌシー「オー ベルジュ・ド・レリダン」(三ツ星)、ロアンヌ「トロワグロ」(三ツ星)、パリ「ピエール・ガニェール」(三ツ星)と数々の名店で部門シェフを務め、クラシックから最先端のフレンチまで幅広く研鑽を積む。
2000年に帰国後は、ガニェール氏の推薦により「ル・コルドン・ブルー・パリ」にて6年半、料理講座教授。
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