らくがきスポーツカフェ(26)
これからにも注目
強いぞ!ヤングなでしこ
スポーツ・プロデューサー、NPO法人スポーツ見物協会 堀田 壽一
ドイツの右サイド攻めに、日本のゴールキパー(GK)が前に出た。次に見たのは、軽くキックされたボールがGKの頭の上をふわりとループとなってゴールへ入るシーンだった。2失点目だ。
「あの失点だけが悔やまれる」と大会後に吉田弘監督が語ったように、日本選手はドイツのフィジカルと技術の強さに圧倒されていたようだった。
FIFA U―20女子ワールドカップ ジャパン2012の準決勝戦、20歳以下の「ヤングなでしこ」は決勝進出をかけてドイツと戦った。記者席には試合映像が見られるテレビが数台置いてあり、そこにGKの唖然とした顔が映し出された。GK池田咲紀子選手には思いもよらない失点だったのだ。
記者席ではヤングなでしこの実力は高く評価され、「優勝もできるのでは?」という予測が大勢だった。事実、スイス戦を取材して、その実力は偽りのないものと知らされた。とにかく“巧い”のだ。
スイス戦4:0、続く韓国戦も1:1と同点にされるものの、終ってみれば3:1と突き放していた。見ていてワクワクするサッカーをした。
しかしドイツ戦、早々と2失点するとみな顔色が変わった。ボールは奪われる、パスする相手が見つからない。そして、コーナーキックから3点目を失ったのは前半19分だった。
「落ち着け。まだ20分だ。GK、もっと声をあげろ!」と私は心の中で叫んでいた。
驚くことに、この日は国立競技場に2万8306人の観客が集まった。その観客が後半に入って湧いた。ヤングなでしこが、パスをつなぎサイドから攻め上がり、守りを崩してゴールに迫る、という本来のゲーム運びを取り戻したのだ。だが、3点差は大きく、無失点記録を続けるドイツの厚い壁は破れなかった。悔やまれる前半の気迫負けだった。
GKの池田選手は浦和レッズレディーズに戻る。浦和レッズレディーズの先輩GKの山郷のぞみ選手には、「ドイツ戦は何だ!」と、ぜひとも池田選手に雷を落としてもらいたい。へこたれない選手に成長させよう。池田選手には素質がある。
女子ワールドカップは2015年カナダで開催される。また一人、注目して追いかけたい選手が現れた。
<筆者紹介>
堀田 壽一(ほった じゅいち)
愛知大学経済学部卒業。NHK入局。報道カメラマンを経て、NHKスペシャル「アフリカに架ける橋」「飢餓地帯を行く」「呉清源」など幅広いジャンルでカメラマンとして活躍。スポーツも各種目を取材、スポーツ報道センターチーフプロデュサーとしてサタデースポーツ、サンデースポーツ副編集長を務める。オリンピックはリレハンメル、アトランタ、シドニー、サッカーは1998年のフランス大会を現地取材。特にJリーグは1983年から取材を続けている。1997年、NHK退職後、関連会社でスポーツ番組制作に参加。2007年からフリーランス・スポーツプロデューサー。日本トップリーグ連携機構マネージメント強化プロジェクトアドバイザー、NPO法人スポーツ見物協会会員。