地域防災力向上を目指して【7】
秋葉原東部町会連合会 社会福祉法人三井記念病院(千代田区)
連合町会と病院が一体となった防火防災体制の確立に取り組む
「東京防災隣組」とは、意欲的に地域の防災活動に取り組み、地域の実情に合った共助の仕組みを継続的に行う団体に対して東京都が認定する制度。今年春の「東京防災隣組」第1回認定団体に決定した、千代田区の秋葉原東部町会連合会と社会福祉法人三井記念病院(神田和泉町)でつくる「防災隣組」は、地元8町会と病院が一体となって防災体制を確立する活動だ。都内でもめずらしい取り組みを紹介する。
取材/津久井 美智江
臨場感あふれる防災訓練
去る9月8日、秋葉原東部町会連合会と三井記念病院が、千代田区と合同で体験型の防災訓練を実施した。
災害に備え、住民を中心に避難所を開設するとともに、住民・事業所・行政が相互に連携し、支援する体制を強化することを目的に行われた訓練には、地域の住民をはじめ、医師、看護師、消防職員など合わせて約350人が参加。
さらに、千代田区と姉妹都市である群馬県嬬恋村と秋田県五城目町が、交流事業の一環として救援物資の提供と配給訓練を行ったほか、神田消防署による「防災・救急フェア」も開催された。
会場となったのは、千代田区立和泉公園、三井記念病院、ちよだパークサイドプラザ。「東京湾北部を震源として、マグニチュード7・3、震度6弱の地震が発生し、一部家屋の倒壊、ケガ人が出ている。また、ライフラインの部分的な寸断、電車等の公共交通機関の寸断が生じた」という想定だ。
「町会の皆さんや病院職員が被災者役として模擬患者になるのですが、災害メイクもリアルで、毎回臨場感あふれる訓練になっています」と話すのは、三井記念病院事務部施設管理課シニアマネージャーの三浦禎悦(よしえつ)さん。最初は5人だった町会の皆さんによる被災者役も今年は15人に増え、病院職員も含めた模擬患者総数は60人の規模になったと言う。
「一人でも多くの方に訓練に参加していただくためには、ふだんから地域に溶け込むことが大事だと考え、高血圧や糖尿病といった病気のセミナーのほか、コンサートなどを開催しているんですよ」
千代田区という都心にありながら、意外にも地域の結びつきが強いことは少々驚きであった。
顔の見える関係をつくる
今回の訓練は、秋葉原東部町会連合会と三井記念病院との間で平成21年7月27日に締結した「災害時相互応援協定」に基づくものだが、そもそもの始まりは、“災害に強い病院作り”をテーマに繰り返し検討を重ね、都と連携してトリアージ研修を開催するなど防災意識を高めてきた三井記念病院が、神田消防署に防災訓練について相談したことだった。防災には地域との協力が不可欠との提案を受け、平成19年7月31日に三井記念病院と地元である神田和泉町会と協定を締結。すぐにより広域に及ぶ8つの町会からなる秋葉原東部連合会との災害時相互応援協定につながった。
「和泉公園周辺のこの地域は、関東大震災の際に地域住民の連携によるバケツリレーで延焼を食い止めた地域。もともと防災意識が高いんですよ」と教えてくれたのは、秋葉原東部町会連合会会長・千代田区立神田佐久間町三丁目町会会長の鈴木精一さんだ。防災訓練はもちろんのこと、祭りや運動会の準備に忙しい日々を送っている。
「千代田区は、地震が起きた時は住民は自宅待機なんですよ。そういうちょっとしたことを知るためにも、地元のイベントには参加してほしい。自助・共助・公助といいますが、やはり一番大事なのは共助です。まずは隣近所の人と顔見知りになってほしいですね」
三井記念病院のセミナーやコンサートもそうだが、防災訓練だけでなく、地域の催しに参加することは、顔の見える関係をつくる上で大いに役立っているのだ。そして、顔の見える関係こそが“共助”の基本になることはいうまでもない。
三浦さんは言う。「訓練は毎回BCP(業務継続計画)を策定して挑みますが、毎回新たな課題が見つかります。訓練と見直しの積み重ねが重要なんです」
9月8日に行われた訓練の様子
東京湾北部を震源として、マグニチュード7.3、震度6弱の地震が発生し、一部家屋の倒壊、ケガ人が出ている。また、ライフラインの部分的な寸断、電車等の公共交通機関の寸断が生じたという想定
三井記念病院
病院では、災害対策本部を設置。患者や職員の安全確認を行い、医療継続の決定や負傷者の受け入れ体制準備の訓練
起震車、EV閉じ込め体験、応急救護訓練、はしご車乗車体験も行われた
和泉公園
リアルな災害メイクを施した被災者役の住人
和泉公園では、神田消防署・消防団指導による初期消火訓練、救出訓練、傷病者搬送訓練が行われた
嬬恋村、五城目町の消防団員および職員による救援物資の配給訓練