東京の現在を支え、未来を創る下水道
〜東京都下水道事業経営計画2013〜
「経営計画2013」の策定
ポイント
●お客さまの安全・安心を支える施策のスピードアップ
●省エネルギー化と水質改善の両立
下水道は、私たちが利用して汚れた水を浄化して自然に戻し、また、大地が吸収しきれない雨水を速やかに排除してまちを浸水から守る、都市生活や都市活動に不可欠な基幹的施設です。下水道はこのように都市の水循環を健全に保つ役割をたゆみなく果たすことで、私たちの安全・安心で快適な生活を支えています。東京の下水道は、老朽化した施設が急速に増加する一方、東日本大震災や局地的な大雨など、自然災害の脅威も踏まえた対策が急務となっています。また、東京湾や多摩川の水環境改善、省エネルギー化などへの社会的要請も高まっています。今般、下水道局では、こうした状況を踏まえ、下水道事業が将来にわたって、その役割を果たしていくために、今後3か年の事業運営の指針であり、都民の皆さまへの約束である「経営計画2013」を策定しました。
以下、「経営計画2013」の三つの経営方針ごとに主要施策を紹介します。
経営方針 I
「お客さまの安全を守り、安心で快適な生活を支えます」
老朽化施設を計画的・効率的に更新する「再構築」
23区の下水道管は、総延長約1万6千㎞のうち、法定耐用年数50年を超えた延長が既に約1500㎞に達し、今後20年間で新たに約6500㎞増加するなど、老朽化対策が喫緊の課題となっています。
このため、予防保全型の維持管理により30年程度延命し、経済的な耐用年数80年程度で再構築するアセットマネジメント手法を用いるとともに、中長期的な事業の平準化などを勘案しつつ、計画的・効率的に再構築を推進していきます。
また、再構築は老朽化対策にあわせて雨水排除能力の増強などを図ることを基本としていますが、浸水の危険性が少ない流域等で、老朽化対策を先行して実施する手法の拡大により、これまでと同程度の事業費で整備ペースを約2倍にアップします。
局地的な大雨などによる都市型水害を防ぐ「浸水対策」
都市化の進展による下水道への雨水流入量の増加に伴う雨水排除能力の不足や、近年多発している局地的な大雨により、下水道が整備された地域でも浸水被害が発生しています。
このため、1時間50ミリの降雨への対応として、浸水の危険性が高い対策促進地区20地区に加えて、浅く埋設された下水道幹線の流域などの重点地区を新たに選定して対策を実施します。加えて、東京駅丸の内口地区など、特に浸水被害の影響が大きい大規模地下街では、1時間75ミリの降雨への対応を進めていきます。
高度防災都市づくりへ向けた「震災対策」
東日本大震災の教訓を活かし、施設のさらなる耐震化・耐水化などを進め、震災時における下水道機能やお客さまの避難時の安全性などを確保します。具体的には、避難所など2500か所の排水を受け入れる下水道管の耐震化を平成25年度までに完了させるとともに、ターミナル駅や災害復旧拠点となる国、都、区の庁舎など1000か所に対象を拡大し、平成31年度までに対策を完了させます。
さらに、マンホールの浮上抑制対策については、これまでの緊急輸送道路などに加えて、避難所やターミナル駅などと緊急輸送道路を結ぶ道路に対象を拡大し、平成31年度までに完了させます。
また、水再生センターやポンプ所において、震災時にも必ず確保すべき機能を担う施設の耐震化や耐水化を平成31年度までに完了させるとともに、停電や電力不足に対応する非常用発電設備などの自己電源を増強します。
経営方針 II
「良好な水環境と環境負荷の少ない都市の実現に貢献します」
大雨時の水質悪化を防ぐ「合流式下水道の改善」
隅田川の両国橋付近や多摩川の中流域では、河川水量の半分以上を下水の処理水が占めるなど、良好な水環境の実現に向けて下水道が果たすべき役割は大きくなっています。
雨天時に合流式下水道から河川や海などへ放流される汚濁負荷量を削減するため、流れの少ない河川区間など14水域で、地元区や再開発事業者などとの連携を強化し、降雨初期の特に汚れた下水を貯留する施設の整備をスピードアップします。
また、水再生センターにおいて雨天時下水を効率的に処理する高速ろ過施設の整備も進めます。
富栄養化の一因であるちっ素及びりんを除去する「高度処理」
東京湾の赤潮発生日数の削減に向け、赤潮の発生要因の一つである下水処理水のちっ素及びりんをより多く除去できる高度処理と準高度処理の導入を進め、下水処理水の水質をより一層改善していきます。
高度処理は、これまでの処理法と比べて水質改善が図れる一方、電力使用量が3割増加するとともに、導入には施設の建設に多くの時間や費用を要します。そこで、既存施設の改造により早期に導入が可能で、電力使用量を増やさずに水質改善ができる準高度処理の導入を進めていきます。
さらに電力使用量が少なく、水質改善と省エネルギー化の両立を図れる新たな高度処理を開発し、施設の再構築などにあわせ、効率的に導入を目指します。
温室効果ガス削減を図る「地球温暖化対策」
下水道事業は下水の処理過程で多くのエネルギーを消費し、大量の温室効果ガスを排出しています。下水道局では、「アースプラン2010」に基づき、下水処理に伴い発生する温室効果ガスを、2020年度までに2000年度比で25%以上削減することを目標に取り組んできており、これまでに約20%を削減しました。
今後も浸水対策などの事業の推進により温室効果ガス排出量の増加が見込まれることから、省エネルギー型機器の導入や新たな汚泥焼却システムを開発・導入、水再生センターへのメガワット級の太陽光発電の導入など、取組をさらに一歩進め、よりエネルギー効率の高い下水道事業への進化を図っていきます。
経営方針 III
「最少の経費で最良のサービスを安定的に提供します」
公営企業の経営の原点である公共性と経済性を最大限に発揮し、不断の経営効率化に努めて経営基盤を強化するとともに、下水道サービスの質を向上することで、将来にわたりお客さまに最少の経費で最良のサービスを安定的に提供していきます。
東京下水道の応援団を獲得する広報活動
下水道を「見える化」する取組の一つとして、下水道施設における日本で最初の重要文化財である「旧三河島汚水処分場喞筒(ポンプ)場」を広報施設として整備し、平成25年4月に公開します。
また、普段目にすることが少ない実際の下水道管を展示するなどして下水道のしくみをわかりやすく伝える体験型広報施設「虹の下水道館」も平成25年4月にリニューアルオープンする予定です。
下水道事業を支える人材育成と技術継承
下水道局では、下水道事業を支える、下水道局、監理団体及び民間事業者の三者の人材の育成と技術の継承を、平成25年度に設置する「下水道技術実習センター」の活用などにより、積極的に推進・支援していきます。
下水道サービスの向上を目指して
いまや東京発の下水道技術は国内だけでなく海外でも採用されるに至っています。これまで培ってきた東京ならではの技術やノウハウの蓄積を活かし、下水道の整備や運営に課題を抱える国や地域の発展にも貢献していきます。
下水道局は、平成25年に発足51年目を迎えます。東京下水道の新たな半世紀のキックオフとなる「経営計画2013」のもと、職員一人ひとりが常にお客さまの視点に立って、人材や技術、資産のポテンシャルを最大限に発揮し、計画の達成に全力で取り組んでいきます。