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第18回 年間6頭ほどしか出回らない幻の牛「見島牛」2013年09月20日号

 
山下敦司シェフのフランス料理美食のススメ

 

年間6頭ほどしか出回らない幻の牛「見島牛」

 今回は「見島牛」(みしまうし)という牛についてお話しします。

 和牛というと、多くの人が松阪牛、神戸ビーフ、近江牛、米沢牛、前沢牛などを思い浮かべるでしょう。これらの牛たちは、食肉用に交配されて作られた牛で、スーパーや百貨店に行けば高価とはいえ簡単に手に入り、食べることができます。しかし、日本には食べたくてもめったに食べることのできない、幻の牛が存在します。それが「見島牛」です。

 山口県萩市の北方45㎞の日本海に、小さな離島「見島」があります。そこに生息している見島牛は、何世紀にもわたって純粋な和牛の血と姿を守り続け、昭和3年に国の天然記念物に指定されました。

和牛本来の「自然な」霜降りを持つ三島牛

 明治維新によりヨーロッパの食文化が入ってくると、もともと身体の小さかった和牛と、大型の海外牛の交配が進められるようになりました。それにより牛は大型化し、食用に適した牛が作られる反面、日本古来の純粋な和牛は姿を消していったのです。

 しかし、見島は離島であったため、ここに生息していた牛は海外牛との交配を免れました。一時は30頭前後まで減少しましたが、見島牛保存会の努力で、現在は約80頭が保存されています。「見島牛」は生産率が低く、年間10頭ほどしか生まれません。そのうち約半数の雌牛を天然記念物に指定、保護します。残りの雄牛は去勢されて食肉用となり、年間6頭だけが市場に出回っています。松阪牛の出頭数が年間約400頭と言われていますから、どれくらいプレミア牛なのかがわかると思います。

 ではなぜ、天然記念物を食べていいのか? 見島牛は産地指定の天然記念物なので、島外に搬出されると指定から外れ食用にすることができるのです。

 当店、アルゴでも扱っていますので、貴重な見島牛をぜひ食べに来てください。

 


<山下敦司プロフィール>

フレンチレストラン「アルゴ」(千代田区麹町)総料理長。
服部栄養専門学校卒業後、銀座「フランス料理清月堂」、大阪欧風菓子「ケンテル」を経て、1995年渡仏。
エクス・アン・プロヴァンス「ル・クロー・ドゥ・ラ・ヴィオレット」(ミシュラン二ツ星)、パリ「ル・ディヴェレック」(二ツ星)、アヌシー「オー ベルジュ・ド・レリダン」(三ツ星)、ロアンヌ「トロワグロ」(三ツ星)、パリ「ピエール・ガニェール」(三ツ星)と数々の名店で部門シェフを務め、クラシックから最先端のフレンチまで幅広く研鑽を積む。
2000年に帰国後は、ガニェール氏の推薦により「ル・コルドン・ブルー・パリ」にて6年半、料理講座教授。

 

 

 

 

タグ:仏蘭西料理 スパイス

 

 

 

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