新拠点を設置、事業連携も強化
廃食用油回収能力は県内屈指に
神奈川県茅ヶ崎市。株式会社リンクスの廃食用油回収を行う「湘南オイルサービス」の地元でもあるこの地に、新たな拠点を作るということで、案内してもらった。
幹線通り沿いにある敷地はコンクリートで敷き詰められ、オイルの入れ替え等のために使用する回収缶がずらりと並び、一方にはオイルを保管・輸送するためのタンクが積み上げられていた。
リンクスの片渕洋平社長は、廃食用油の利用価値、社会的意義を考えれば、改めて先行投資を続けることが必要な事業であると語る。
片渕社長は、2016年に前出の湘南オイルサービス事業を継承。その豊富な人脈を生かし、飲食店や企業、自治体との契約に加え、一般社団法人日本唐揚げ協会などの外部団体との連携を増やしながら、回収ネットワークを拡大してきた。
また、廃食用油を原料としたハンドソープの利用価値を追求し、廃食用油を回収した施設でハンドソープを使用することで、回収→再利用という持続可能な資源循環を形にした(本紙177号参照)。さらに、2024年からは大手製油会社などを中心に形成される国内最先端プロジェクト『Fry to Fly Project』にも参画し、SAFへの廃食用油活用にも一部貢献してきた(本紙197号参照)。
「このプロジェクトをきっかけに、油脂の資源循環に取り組む団体である日本油脂資源循環事業協同組合にも加盟し、バイオ燃料の開発を担う国内の製造メーカーにも協力してきました。こうした連携の甲斐もあり、今年度は某コンビニチェーン約300店舗、保育園・介護施設など約300施設との提携が決定し、現在では神奈川県内では1、2を争う回収力を持つことができました」

神奈川県茅ヶ崎市内に新設した回収保管拠点
SAFの認知度および需要は拡大
今後は廃食用油の獲得競争が激化
こうした事業拡大の背景には、SAF自体の認知向上も影響していると、岩﨑康弘専務取締役は付け加える。
「『Fry to Fly Project』の加盟企業も増加し、このプロジェクト以外でもSAF(航空燃料)に対する認知度はかなり高まったと感じます」
その反面、今後はますます廃食用油の獲得競争が激しくなると予測され、危機感は増している。
「国内の人口減少は間違いなく、そうなると廃食用油の全体量が劇的に増加することはありません。そうした限られた環境下で廃食用油回収のボトムアップを軸としたサスティナブルな社会構築は必須で、柔軟なアイデアをもってこれまでリサイクルされなかった廃食用油をどれだけ活用できるか、それが鍵になってくると考えます」

加盟した「日本油脂資源循環事業協同組合」の回収缶。「脱炭素促進!お取引した廃食用油はSAFの原料になっています」と記されている
都も一部自治体もプロジェクトに参加
SAF活用が持続可能性のアピールに
2026年を迎え、リンクスは地元神奈川県内に加え、東京都内での回収にも力を入れていきたいという。すでに都内企業や民間団体とは徐々に実績を増やしているものの、特に自治体と連携を強化していきたいと、片渕社長は意気込む。
「すでに世田谷区などでは、庁舎に専用の回収ボックスなどを設置し、区民の方々から出た廃食用油を回収できるように連携しています(本紙197号参照)。他の自治体も興味を持ってくれると嬉しいのですが…現状はなかなか厳しいです」
試しに、都内での廃食用油回収事業者の公募数を調べてみたところ、公開していたのは3自治体だった。とはいえ、どの区も学校給食等の廃食用油は出るわけで、随意契約で進めている可能性は高い。廃食用油は国内ではバイオ燃料以外、多くは飼料、肥料、堆肥、石鹸、インクの塗料などに再利用されているのが現状。昨今の持続可能な社会を求める価値観は多様であるが、あえてバイオ燃料に向けた自治体の動きが増えてほしいと、岩﨑専務はいう。
「従来の廃食用油=廃棄物という概念が根強いのだと思いますが、我々は廃食用油=有価物だと考えています。従来のルールではクリアできない課題もあるのだと思いますが、その考えに賛同いただける自治体がいたら、我々はできる限りの協力をお約束いたします」
ちなみに東京都および幾つかの都内自治体は、前出の『Fry to Fly Project』に参加している。その姿勢を形にするためにもSAF活用の公募等が増えることを片渕社長は願う。
「最初からすべての廃食用油をバイオ燃料にしなくてもいいと思います。数%を使用するなどルールを明確にすることで、今まで以上に持続可能性に対する姿勢を都民にアピールすることが可能です。是非前向きに検討していただきたいですね」
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SAF(Sustainable Aviation Fuel=持続可能な航空燃料)
持続可能性の評価基準を満たす、再生可能または廃棄物を原料とするジェット燃料のこと。従来の航空燃料から置き換えることで、CO2排出を実質ゼロにできるとされ、世界の航空会社の大半が2030年までに全体の10%をSAFに置き換えることを目標としている

連携するレボインターナショナル社の新工場(愛知県)に視察に行った様子(提供:リンクス)
