日々の管理の大切さを再認識

―下水道局長に就任しての抱負は。

計画調整部長当時は事業の舵取りの意識が強かったですが、今は下水道事業全体の管理者としての重責を感じ気持ちが引き締まります。

経験や知識等が異なる職員構成となっている状況等を踏まえ、「フラットな立場で議論し、意思決定は組織的に行う」ことを心掛けます。また、技術開発や技術力向上の取組を弛まず行い、下水道局の強みである「チームワーク」と「技術力」にさらに磨きをかけます。そのためには、職員一人ひとりがやりがいをもって楽しく下水道事業を進めていけるよう、職員の意欲を引き出したいですね。

令和7年度は「経営計画2021」の最終年度です。総仕上げとして計画に掲げている目標の達成を図るとともに、新たな課題にも積極的に取り組むことを目指します。

キーワードは「レジリエンス(強靭性)」と「サステナビリティ(持続可能性)」です。技術開発と効率的な事業運営がカギですね。

―埼玉県八潮市の下水道管破損による道路陥没は大きな衝撃でした。国土交通省の「下水道管路の全国特別重点調査」の調査の状況は。

対象となる管径2m以上かつ平成6年度以前に設置された下水道管路約527㎞のうち、優先的に調査を実施する約18㎞はおおむね調査を完了しました。それ以外の箇所は今年度中に完了させる予定です。調査に並行して補修等も順次進めています。

9月上旬、埼玉県は陥没事故の原因究明委員会の中間とりまとめ(案)を公表しました。その結果も参考に都も必要な対応を考えますが、現時点で3つの教訓があげられます。

第一は、下水道施設が適切に機能するよう、日々の管理が極めて重要なことを再認識しました。引き続き、日頃の巡視や下水道管の内部を目視やテレビカメラ等により状態を把握していきます。

第二は、状態に応じた対応を速やかに行うことの重要性を再認識したことです。都では、巡視、点検、調査により判明した損傷等の状態について、補修等を適切に実施することに加えて、施設の再構築を計画的に進めており、これらの取組を今後も着実に進めます。

第三に、下水道についてもっと都民に説明していくことの重要性を再認識しました。「都民に伝わる下水道」「都民や民間事業者等と共に進める下水道」をこれまで以上に意識したいですね。

管路の複線化で災害等に備え

―枝線と幹線の再構築も進んでいます。

下水道局では、区部を整備年代により、第一期、第二期、第三期の三つのエリアに分けて、枝線の再構築を継続的かつ計画的に進めています。

整備年代の古い都心4処理区の第一期再構築エリアで約8割の整備が完了しています。令和7年度からは、区部西部の第二期エリアに対象を拡大し、試行工事に着手しています。

幹線の再構築は、調査に基づき対策が必要な幹線などの再構築を優先して進めるほか、再構築が困難なほど水位が高い場合は、水位を下げるための代替幹線を先行して整備した後に、既存幹線の再構築を進めることにしています。

災害や事故時を想定した「管路の複線化」ですが、下水道局では他の自治体に先駆けて再構築事業の中で代替幹線の整備を進めています。既に区部の1幹線で整備が完了し、現在、区部では3幹線で整備が進んでいます。本年度は、新たに区部の町屋幹線と多摩地域の流域下水道の乞田幹線の計2幹線の整備に着手します。

今後も現場の状況等に応じ、代替幹線の整備など、リダンダンシーの確保に向けた取組を積極的に推進します。

―豪雨対策に取り組んでいます。進捗状況は。

近年、集中豪雨の激甚化などにより、全国各地で浸水被害が多発しています。東京都では、令和5年12月に「東京都豪雨対策基本方針」を改定し、激甚化・頻発化する豪雨に対応するため、目標降雨を引き上げるなど浸水対策を推進しています。

区部では早期に浸水被害を軽減するため、浸水の危険性が高い地区など67地区を重点化しており、令和7年度は38地区で、引き続き幹線や貯留施設等の整備及び検討を進めます。

また、目標を超える降雨や複合災害等による水害が万が一発生することを考慮し、高潮、津波、外水はん濫、内水はん濫に対し、防水扉や止水板などによる耐水化を強化します。
ソフト面の取組としては、毎年6月を「浸水対策強化月間」と定めています。都民の皆様に浸水への備えのため、区市などと連携し土のうや止水板の準備のお願いや、半地下家屋にお住まいの方々への戸別訪問などを行っています。併せて、ポンプ所等での施設見学会などを実施し、下水道局の浸水対策事業への理解を深めていただいています。さらに降雨情報を「東京アメッシュ」としてリアルタイムで発信しています。

―局長の趣味をご紹介ください。

色々ありますが、読書も一つです。山本七平さんの「空気の研究」は興味深かったです。一昨年、小池知事が紹介していたので読みました。重要な会議などで「空気=雰囲気」が物事を決定してしまうことを紹介しています。衝撃的でしたね。