2008年9月20日号
<江戸の技と知恵の歳時記>
第9回 江戸和竿
まるで芸術品のような江戸和竿

まるで芸術品のような江戸和竿(写真提供/財団法人 伝統的工芸品産業振興協会)

 渓流でのヤマメ、イワナ釣り、清流でのアユ釣り、海での磯釣り、船に乗って沖の魚を追うトローリングなど、いずれも自然と対峙するものだ。使用する釣り竿は、今ではほとんどがカーボンやグラスファイバーを素材にしたものだが、江戸時代の釣り文化の中で生まれ、現在まで継承されている釣り竿、江戸和竿はまさに芸術品。

 日本で趣味としての釣りが盛んになったのは江戸時代に入ってから。寛文年間頃から江戸を中心に釣りが盛んになり、いくつかの流派が生まれたほどだ。元禄時代には江戸本所竪川の置材木の上に潅風(かんぷう)を立て、吉原の傾城(けいせい)の髪を釣糸に金銀象眼の釣り竿で小魚を釣った大名もいたとか。その後も釣りの人気は上昇を続け、文化・文政から天保年間にかけて盛んになった。

 津軽黒石藩主の津軽采女正(うねめのしょう)が、享保8(1723)年に書いた釣魚秘伝「河羨録(かせんろく)」は、東京湾品川沖のキス釣場から神奈川側にいたる詳細な釣場や天候の見方、竿、針、おもりなどについて3巻にまとめたものだが、江戸和竿もこの享保年間の頃に誕生した。天明8(1788)年、下谷稲荷町に釣道具屋を開業した泰地屋東作(たいちやとうさく)が、現在に通じる江戸和竿の基礎を築いたと言われ、以降、東作の名は代々受け継がれている。

 江戸和竿は天然の竹を何本か継ぎ合わせて用いる継竿で、漆で仕上げる。使われる竹は、真竹、布袋竹、矢竹、淡竹(はちく)などで、継竿の部位によって用いる竹が異なる。また江戸和竿は、タナゴ竿、ハゼ竿、フナ竿、磯竿など、その種類も豊富なのが特徴である。これは、江戸前の美しい海や河川に恵まれた江戸っ子たちのポピュラーな趣味の一つであったからであろう。

 伝統を受け継ぐ職人たちによって、乾燥、切り分け、火入れ、継ぎ目の手入れ、塗りなどの工程を経て、竹そのものが持つ自然な美しさと強さ、しなやかさが生かされた、単なる釣り道具ではない“作品”に仕上がっている。江戸和竿は、1991年に国の伝統的工芸品に認定されている。

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