2008年2月20日号
杉並区立 和田中学校の実践
土曜寺子屋、「よのなか」科
ユニークな教育方法が学力アップに!!

 公立中学が夜間に塾の授業を導入! ということで話題になった杉並区立和田中学校。さまざまなメディアで取りあげられ是非が問われているが、和田中の今までの取り組みについてはあまり報道されていない。5年前に民間出身の初の公立中学校長となった藤原和博氏が実践してきた和田中の歩みについて追ってみた。

 「2時間以上テレビをつけっぱなしで見せている世帯のお子さんの学力は保証しない」と、藤原校長は入学式で宣言する。そのほか、新入学生の保護者向けには、下にあるような「5つのお願い」が配られる。読んでみると、どれも当たり前のことなのだが、実際はその当たり前のことがなかなか実践されていないのが現状だろう。

スタートは自主的な学習のサポート

 和田中の実践の特徴的なものとして、「土曜寺子屋(ドテラ)」と「よのなか」科という授業がある。ドテラは公立学校の休日にあたる土曜日の午前中に、学生ボランティア等によって行われる学習活動。生徒たちの自主的な学習をサポートする目的で始まった。そこでは、授業でわからなかったところを教えてもらうことはもちろん、その日に勉強したいものを自由に持込み、自主的に勉強し、学生ボランティアがサポートにあたる。ドテラだけでは足りない部分は、夏休みに2〜3週間、「ドテラ・サマースペシャル」で補っている。

 とくに数学は「算数教室」という授業を設け、分数の計算に弱い子どもたちへの補習を行う。また、英語は「英語A(アドベンチャー)コース」という特別授業もあり、英検協会と提携して講師を雇い、有料で英検取得に向けての講習もある。

 当初の学生ボランティアは近くの大学に通う学生2人だけだったが、今では東京以外の大学からも続々と希望者が集まり、教職や教育関係の就職を希望する大学生以外にも、定年退職した人のボランティアも増えている。

 現・中2年生126名のうち、100名以上がこのドテラに参加し、その学年にはいわゆる落ちこぼれといわれる生徒はいないという。

 「よのなか」科は、単に教科書の内容を教えてもらう受動的な授業ではなく、学校で教えられる知識と実際の世の中との架け橋になる授業として年に数回、行われている。2003年に始まった第一回「ハンバーガー1個から世界が見える」では、生徒たちに経済の本質である〈価値の等価〉〈価値の差異〉〈付加価値〉を体感させている。その後も、「自分の将来住みたい家をデザインしてみる」「自転車放置問題を考える」「新聞を使ってメディアリテラシーを学ぶ」「少年法を考える」「差異と差別を考える」「自殺問題を考える」等々、大人でも簡単には答えが出せないような世の中の仕組みについて考えている。

地域のボランティアに支えられて成り立つ

 また、学ぶことだけではなく、ストレスを抜く時間と空間を「癒しの領域」とし、学校モードでない時間も大切にしている。そのために、年間100名を超える大学生ボランティア・図書室ボランティア・緑ボランティア・部活ボランティア・授業ボランティアの存在があり、それを卒業生や現役PTA、PTAのOB、地域住民、教員養成課程の学生等、さまざまな立場の大人で構成された「学校支援本部」がマネジメントしている。そこでは、子どもたちの現状、学校の現状に即してさまざまなプロジェクトを立ち上げているのだという。それも学校から「強制される」のではなく、地域の学校のために「貢献」する関係が成立している。実際、現在の公立学校では「PTAのなり手がいない」という声をよく聞くが、藤原校長は「うちはぼくの方針が一番先に聞けるから、そんな心配はまったくないですね」という。

 夜間の塾導入問題にしても、保護者や地域からの反対や不満の声がほとんどあがらないのはなぜだろうと思っていたが、このような実践あってこそだということがわかった。年度がかわる4月より、藤原校長にかわり、(株)トップアスリート社長の代田昭久氏が校長に就任するという。ますます和田中からは目が離せない。

(取材/粕谷亮美)

  
  

[保護者への5つのお願い]

和田中学校校長 藤原和博

1.和田中を選んでこられた以上、責任をもって参画していただきます

 学校へ預ければ自動的に息子や娘が育って出てくるわけではありません。本校の教育目標「自立と貢献」にあるように、保護者には学校に貢献する意識を持っていただきます。授業も十分に参観したうえで学校を評価してください。

  

2.生徒の生活習慣が規律を持ったものになるようご協力ください

 規則正しい起床・就寝の時間管理、遅刻をさせないこと、挨拶、宿題や提出物・忘れ物のチェック、服装と身だしなみ(靴のかかとを踏まない、ズボンからシャツを出さない、スカートを折り込んで短くしない、化粧しないなどは常識の範囲です)、さらに、朝食を必ず食べさせることなど、基本的な生活習慣に属することは家庭の責任で指導してください。

3.テレビをつけっぱなしで見せている家庭の子の学力は保証しません

 テレビは1日1時間強まで、番組を選んで見せてください。これで1年間のテレビの視聴時間が約400時間となり、英数国理社5教科の年間総授業時間数と並びます。2時間以上つけっぱなしで見せていると年間800時間以上となり、考える力に著しいダメージを与えます。テレビを1時間に押さえ、そのかわり自宅学習を1時間15分以上させれば、自宅での勉強が年間に400時間積み増され、確実に学習したことが定着するでしょう。読書も保護者が率先してするよう心掛けてください。大人が読書しなければ、子どもが読書するようにはなりません。

4.ケータイは持ってこさせない、自転車通学はさせない

 ケータイは学校への持ち込みを禁止しています。働いている保護者には不便かもしれませんが、持たせている場合には一度自宅に帰ってから使うようにしてください。学校で見つけた場合は保護者に来ていただかなければ返しません。自転車も事故が多いので禁じています。なぜ通学に使えないか、子どもには「あなたには大人として事故の責任がとれないからだ」とはっきり伝えてください。なお、バス通学は許しています。

5.子どもに仕事を与えること、続けさせること

 子どもには、家庭でさまざまな仕事を分担させてください。学校でも毎週水曜日の朝に掃除をする「水曜ボランティア」や職業体験での保育園・老人ホームでのケア、あるいは近くのホームへの合唱・合奏の慰問など多くのイベントがありますが、日常的な仕事の分担と地域でのボランティア活動は職業意識の自然な醸成に必須です。

 家族の一員として当然やるべき仕事や勉強の成果としての成績の上昇に対して、金品を動機づけの手段とすることは避けてください。「ありがとう」「よくがんばったね」という親子の言葉の交流こそが自己肯定感(だいじょうぶ、自分には居場所があるという確信)を育てます。また、いったん始めたことは、中学3年間で身に付けた資産となるよう、是非とも続けさせてください。苦しいこともあったが続けられたという自信と「集中力」は一生の財産になります。

〈平成18年度新入学保護者説明会資料より〉

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