2008年8月20日号
頑張れ!東京の農業 Vol.6
農業体験で食の重みを実感

 食糧自給率の低下や食の安全性の問題で、農業への関心が高まっている昨今、自分で農業を体験したいと思っている人も多いのではないだろうか。家庭菜園も手軽に楽しめるが、もう少し本格的に農業に触れてみたいという人にオススメの情報をまとめてみた。実際に野菜や米を育てる難しさを体験することで、“食”の重みを感じられるに違いない。

(取材/中本敦子)

練馬区の「緑と農の体験塾」

 練馬区には、農家より指導を受けながら本格的に体験農業ができるシステムがある。

 練馬区の農地面積は23区内で最も広く、野菜や花などを都民に供給してきたが、農地は年々減り続け、この5年間に約46haも減少した。一方で「都市生活の中で土に親しみ、収穫の喜びを味わいたい」という区民の希望は強く、同区では農園事業を展開してきた。

 農業体験農場は、農家自らが開設し、耕作の主導権を持って経営・管理するシステム。利用者は、入園料・野菜収穫物代金を支払い、園主(農家)の指導のもと、種まきや苗の植付けから収穫までを体験する。自由に好きなものが作れるわけではないが、市販のものに負けない野菜を年間20種類以上も収穫することができるのだ。

 練馬区は施設整備費・管理運営費の助成と利用者募集の援助を行っており、平成8年に第1号「緑と農の体験塾」が誕生して以来、その数を増やし、平成20年4月には13園目がオープン。来年度も1園増える見込みだ。

 農家による懇切な農業指導を行うのが最大の特徴。減農薬減化学肥料農法を主体とし、地域に受け継がれてきた品種と農法による栽培指導を農家が行う。苗や肥料、農具も農家が用意するので、利用者は失敗も少なく手軽に野菜作りが楽しめる。

 また、農場主催の収穫祭、料理教室、視察研修などに参加することで、利用者間の交流の輪が広がるのも魅力だ。事業が始まって以来、体験農業の希望者は増え、毎回抽選になるという。平成20年度は約2・5倍。区外在住でも応募可能で、1年間ごとに申し込む。来年度の申し込みは、平成21年1月の区報、もしくはホームページhttp://www.city.nerima.tokyo.jp/sangyo/noen/taiken.htmlにて。

 農業経営としても成り立っているのも重要なポイントだ。農家にとっては市場価格などに左右されない安定した収入が見込まれ、農作業の負担も軽減される。都市農業にしかできない機能と役割を最大限に発揮した先進的な農業経営類型・行政施策として、この事業は全国的な注目も集めている。

1泊2日の田舎体験

ブドウの粒抜き作業

ブドウの粒抜き作業

 NPO法人田舎時間では、1泊2日で農業体験ツアーを企画している。年に数回、山形県上山市と石川県穴水町の2カ所で開催。参加者は往復の交通費と宿泊費の実費を支払い、受け入れ農家の指導のもと、農作業を手伝うというもの。食事は農家の人たちがごちそうしてくれる。農作業を体験し、田舎の食事を味わい、農家の人たちとの会話もはずむ。それぞれに感じることが多いという。

 31歳の男性参加者は「軽い気持ちで申し込んだけれど、想像以上に得ることがたくさんあって、本当に参加して良かったと思います。作物を育てるにはすごく手間がかかるんだなとか、農家の方は毎日頭と体を使ってるんだなとか、やっぱり田舎の食は豊かだなとか。そんなことを実感した2日間でした」と感想を語る。

「普段何気なくやりすごしている、食べるという行為、そこに行きつくまでの必要なプロセスを、五感で感じとってください」とスタッフの思いも熱い。

 1泊2泊という手軽なツアーなので、気軽に参加しやすいのも魅力だ。詳細はhttp://www.inakajikan.com/index.htm

湯川村の田畑を安価で借りる

無農薬の田んぼの雑草取り

無農薬の田んぼの雑草取り

地元の人も都会の人も、ともに収穫を喜ぶ

地元の人も都会の人も、ともに収穫を喜ぶ

 福島県湯川村では、村をあげて農業体験者を募っている。

 湯川村と聞いてぴんと来る人は少ないかもしれないが、会津盆地の中心に位置するのどかな田園地帯だ。総面積の9割を水田が占め、最高級の米の産地としても知られている。

湯川村の米は最高級

湯川村の米は最高級

 会津産のコシヒカリは、(財)日本穀物検定協会が実施する食味検定で、新潟県魚沼産のコシヒカリと並ぶ最高のランクAだが、中でも湯川村の米はおいしいと評判だ。理由は豊かな土壌と、盆地特有の温度差。村全体が水はけが良く、米作りに最適の粘土質なのだ。

「湯川村は会津の中でも住みやすい地域です。国宝級の文化財もあり、文化の里としても魅力たっぷり。ぜひ我が村に来て、一緒に農業をやりませんか」と湯川村村長の大塚節雄さん。有機栽培の取り組みもスタートした。

 湯川村は高齢化が進み、休耕地や空家が増えている。その有効活用と都会の人の農業体験を結び付けようと、村と協働で公社を作り、活動を始めた。村の休耕地300坪を年間1万円で貸し出し、地元の農家が農業指導をしたり、農具を貸したり、苗の準備をしたりと、必要に応じて援助する。宿泊には村内の空家等を安く提供。

地元の中学生が田植えを体験

地元の中学生が田植えを体験

 都民に向けて農業体験を呼びかけると同時に、どこかの区との姉妹都市締結も希望しているという。

 農業を体験するには、種まきから収穫まで1年はかかるという。自由に滞在し、じっくりと腰を据えて日本の主食である米作りに取り組むのも面白いだろう。

アイティーコーディネート
東京トヨペット
INAX
プロバンス
光学技術で世界に貢献するKIMMON BRAND
ビデオセキュリティ
アジア教育支援の会
アルゴ
株式会社キズナジャパン
伊豆ガラス工芸美術館
株式会社 E.I.エンジニアリング
日野自動車
ナカ工業株式会社
株式会社ウィザード