2008年2月20日号
[プロフィール参照]

医療NOW

(1)最近話題の脂肪肝・脂肪性肝障害

東京慈恵会医科大学総合健診・予防医学センター センター長

銭谷幹男さん

 「このままでは病気になりますよ」と検診でひっかかって青くなってはいませんか? 今回からシリーズで、最近話題の疾患について慈恵医大の銭谷先生にアドバイスをしていただきます。第一回目は、現在急増している「脂肪肝」です。


 肝臓を構成する肝細胞に脂肪がたまった状態を脂肪肝といいます。

 肝臓は体の栄養の工場ですから、栄養素の一つである脂肪は肝細胞に存在しますが、それが、異常に多くたまった状態です。しかし、肝臓の細胞に脂肪がたまったことは外から見てもわかりません。腹部超音波検査や腹部X線CTで肝臓を映し出すと、通常の肝臓とは違って、脂肪が多くなっていると、写り方が変わるので、肝臓に脂肪がたまったことがわかります。

 検診や病院でこうした検査をお受けになり、脂肪肝と診断された方も少なくないと思います。栄養摂取が過多で、肥満が問題となっているわが国では40歳以上の男性では約3割がこの脂肪肝になっていると考えられています。

 しかし、これらの方法で、見つかる脂肪肝は、超音波やX線で通常の肝組織と、脂肪がたまった組織が判別できる量になってはじめて診断されるので、全肝細胞の30%以上が脂肪をため込んだ状態でないとわからないのです。30%以下の軽度脂肪化は診断できないので、健診で脂肪肝がないと診断されても脂肪がたまっている、例えば20%以上の肝細胞には脂肪が蓄積している可能性があるのです。


脂肪肝の原因は?

 栄養過多に加えて、アルコール摂取も脂肪肝の大きな原因の一つです。わが国のアルコール性肝障害の多くはアルコール性脂肪肝を呈していることが明らかになっているからです。

 さて、肝臓に脂肪がたまる、つまり肝細胞に脂肪がたまると何が悪いのでしょうか?

 以前は高度の脂肪化、すなわち殆どの肝細胞に脂肪が蓄積しているような、高度脂肪肝にならない限りは、肝臓の機能には大きな影響はないと考えられていました。最近になって、脂肪肝の約2〜3割のひとは、脂肪がたまったことにより、ウイルス肝炎などと同様に、肝炎を起こしてくることが解ってきました。

 つまり、過食やアルコールで肥満が生じ、脂肪肝となるという、生活習慣が進行性を示す、肝の炎症状態を引き起こしてしまうことがあるということです。炎症が続けば、肝細胞は破壊され、その修復として肝の線維化が起こり、ウイルス肝炎と同様に肝硬変へと進行します。お酒を飲まない肥満した方にもこうした炎症は起こり、最近では非アルコール性脂肪性肝炎として注目されています。


脂肪肝はなぜ怖い?

 こうした病態に陥る割合はそれほど高率ではないのですが、問題はどうして一部のひとだけが進展してしまうかの原因がわかっていないことです。つまり、脂肪肝のあるひとは少なからず、病態が進展する可能性を秘めていることになります。特に血液検査で、肝臓の数値、ALT、AST(GPT、GOT)やγ―GTPなどの異常も指摘されている場合は脂肪肝に加えて脂肪性肝障害、さらには脂肪性肝炎を起こしている場合があり、注意が必要なのです。

 脂肪肝は多くの場合、肥満を基に発症しています。最近良く目にする、腹囲が大きいことを目安にしているメタボリックシンドロームの肝臓での病態が、脂肪肝であると考えていただければ理解しやすいと思います。

 脂肪肝の治療・予防は体重コントロール、過食、カロリー過剰摂取の抑制、およびエネルギー消費を増す運動ということになります。しかし、メタボリックシンドロームが社会問題になることからもわかるように、この簡単なことが実は難しいのです。個人の体質、食事の嗜好を含めた生活習慣や、運動量を総合的に分析した上での対策と本人の努力が必要だからです。

 来年度から始まる特定検診制度では、まだ病気とはいえないが、危険因子を有しているひとに対する保健指導がなされます。これら制度を利用して、進行する脂肪性肝炎からの回避を目指すことが重要です。

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