2008年7月20日号
[プロフィール参照]

三田村秀雄先生

みたむら ひでお

1974年慶應義塾大学医学部卒。1981〜4年、米国留学。1992年慶應義塾大学講師、1995年同助教授、1999年心臓病先進治療学教授を経て、2004年より東京都済生会中央病院副院長。慶應義塾大学客員教授。医学博士。専門は臨床心臓病学。

続 医療NOW

(1)心臓に惚れる

 目には見えなくても、人が生きていくために大活躍してくれている心臓。「医療Now」新連載は、東京都済生会中央病院副院長の三田村先生より、愛する心臓がうまく活躍するために、皆様へ向けたメッセージです。

美しく健気な臓器

 人間は歳を重ねるとだんだん静的なものに関心を持つそうですが、未熟な私はいまだに動いているものを見ると、それだけで心がときめきます。私が心臓に魅せられたのも、そんな感覚からかもしれません。

 ギュッ、ギュッ、とリズミカルに収縮と拡張を繰り返す心臓。その単純で、美しく、健気な姿を一度でも目にすれば、誰だって虜になるに違いありません。と思っていますが……。

 心臓は胸の、左側というよりは、ほぼ真ん中にある、握りこぶし大の筋肉です。この筋肉のかたまりが持ち主の意図とは無関係に、規則的に縮んだり拡がったりし続けています。止まれ、といってもそう簡単には止まりません。効率的な自家発電機能を備えており、充電を一度もしなくても、24時間、365日、何十年とひたすら収縮を繰り返して、血液を全身に送り出しています。

 タフなだけではありません。静脈とよばれる血管の中や、心臓の出口には弁があるため、血液は心臓が収縮したときだけ、前方の動脈という血管に向かって、一方向に進みます。弁が開けば前に進みますが、逆に進もうとすると弁は閉じてしまいます。実に巧妙にできています。

 心臓から動脈の中に押し出された血液は、そのままスーッと末梢に向かって流れるのではなく、一回一回の心臓収縮に応じて、拍動の塊として、ちょうど波が押し寄せるような形で、リズミカルに流れていきます。

 比較的皮膚に近いところにある動脈、たとえば手や足の付け根とか、こめかみあたりにある血管だと、ピコン、ピコンと拍動の塊が波打つ様子が目で見えたり、触れたりすることができます。これを皮膚が痙攣している、とはよばずに、脈を打っている、と専門家は表現します。このピコンという拍動は血液が血管の壁を押し拡げた結果ですが、そこには内側から外側への圧力が働いています。この圧力こそが血圧とよばれるものです。

心臓を愛おしもう

 このピコンという拍動は血液が血管の壁を押し拡げた結果ですが、そこには内側から外側への圧力が働いています。この圧力こそが血圧とよばれるものです。

 血管が柔らかく、弾力があるほど血圧は低めになります。血液の塊が入ってきて血管が拡がったときの血圧が水銀柱で120ミリ未満で、それが流れ去ってしぼんだときの血圧が80ミリ未満なら理想的です。

 反対に血管が硬くなれば血圧は高くなります。血圧が高い方が血の巡りがいい、と主張する人もいますが、とんでもない間違いです。そんな高い血圧がずっと続くと、それに反応して血管の壁がますます厚くなってきます。

 心臓は一生懸命働いているのに、血管の抵抗が高くて心臓に負荷がかかると、心臓もそれに打ち勝つために筋肉がモリモリと厚くなってきます。動脈硬化や心臓肥大が進み、やがて心臓発作や脳卒中を起こします。

 血圧の管理をお勧めするのは、肩こりや頭痛を減らすだけが目的ではありません。それによって大事な心臓や血管に楽をさせてあげたいからです。塩分を控えて、必要なら血圧を下げる薬を服用するのも、将来、重い病に倒れることのないようにするためです。

 もっとハートを込めて、心臓を可愛がってやってください。

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