2008年9月20日号
民族絶滅の危機をもはらむ
「鳥インフルエンザ」の脅威2
新型ウィルスに対する日本の対策

 前号では、ごく近い将来に起きることが予測される新型インフルエンザのパンデミック(大流行)についてあらましをご紹介したが、今号ではその日を期してどんな対策が採られているのかを明らかにしたい。

(取材/平田 邦彦)


新型ウィルスの進化は不明

 H5N1型鳥インフルエンザの進化した、新型ウィルスがどんな脅威をもたらすかは、実は誰も分かっていない。インフルエンザ・ウィルスの持つ特性から類推して、恐らくはこんな姿となって、パンデミック(大流行)を引き起こすだろうとの推測に基づいて、準備をしているのに過ぎない。

 もう一度おさらいをすると、現在H5N1型鳥インフルエンザは、すでに人に感染した事例が出始めているが、それが直ちにパンデミックを引き起こすには至っていない。

 言い換えればパンデミックを起こすだけの進化がまだされていない状況と理解できる。

 今後H5N1型がそのまま進化するかどうかも分からない。もしかしたら、およそ百年の歳月を掛けて、H1N1型ウィルス(スペイン風邪ウィルス)がH5に変化したように、Hが7になったり、8になる可能性も否定できない。その時にその進化したウィルスがどんな暴れ方をするかは全く分からないのだ。

 だから、辛うじていま出来て、効果が期待できそうな手当てを進めるしかないことをまず理解しておきたい。


対応の遅れが目立つ日本


 WHO(世界保健機構)は図のようなフェーズを示し、現在はフェーズ3にあるとしている。

 しかしいずれ4、5を経て6の段階になることは確実だ。そしてそのフェーズ6の段階で、世界でどれだけのり患患者が発生し、どれだけの規模で死者が出るかは予測出来ない。多くの研究機関が、それぞれの立場で数値を出してきているが、こればかりは発生してみないと分からないのだ。

 ただし、それが過去のパンデミックの事例からみて、尋常ではない大災害となることだけは明らかである。しかも、実際に発生しないと、有効なパンデミック・ワクチンは作れない。その深刻さゆえにこの問題が論じられ、研究されているのだ。

 国立感染症研究所を中心に、様々な対応策が検討され、準備もされている。さし当たって効果が期待されるのはタミフルで、これは一般的にインフルエンザ・ウィルスの活性を弱める効果が知られている。生産量の75%を買っているとされていたわが国だが、現在はごく限られた量しか入手することが出来ない(有色人種に対する差別との見解もある)ので、とても国民すべてに行き渡るものではない。

 第一、新型ウィルスに確実に効くかどうかも明らかではない。

 実際に人に感染したH5N1型ウィルスから作られたプレ・パンデミック・ワクチンを、およそ3千万人分備蓄し、既に投与も開始されている。しかし、わが国の人口は約1億3千万人だから、1億人は死んでも仕方ないと考えていると言われても仕方ない。

 まして新型インフルエンザに実効があるかどうかは起きてみないと分からない。

 スイス、イギリスは既にプレ・ワクチンの備蓄を終えたとしているし、一切発表を差し控えているアメリカも既に終えたとする情報もある。

 プレ・ワクチンが絶対的な存在ではないものの、かなりの効果が期待出来るのであれば、せめて全ての国民と、観光客に行き渡るだけの備蓄を真剣に考えて欲しいものだ。

 いかにもわが国の対応の遅れが目立つが、そんな国の状況下では、我々市民はせめて知識のレベルを上げる、「智恵のワクチン」で対応するしか無いとも言えるのだ。

 そしていよいよパンデミックが起きたときに、すぐにそのウィルスに効くワクチンを作れるかと言えば、事態はそんなに簡単ではない。

 まず、ワクチン製造には、1錠当たり鶏の有精卵が2個必要とされるが、もともと鳥インフルエンザがスタートのウィルスだから、鶏そのものが死滅している、乃至は殺処分されている可能性がある。それだけの数の有精卵が確保出来る保証はないのだ。


パンデミックの周期は2ヵ月

 ちょっと想像してみていただきたい。仮に発熱して、新型インフルエンザが疑われ、病院に行こうとしても、新型ウィルスに抵抗力を持つ人間は一人も居ないから、救急車、タクシー、電車、バスの運転手もり患しているはずで、とても運転どころではない。

 あわてて食料を買出しに出掛けても、そんな人が集まる場所は閉鎖になるから、たちまち食糧不足に陥る。

 職場も、学校もすべて閉鎖となって、街には人影も無い。そんな死の町が現出することを想定しての準備が、今こそ必要なのだ。

 スペイン風邪が、海軍の軍人によって運ばれた史実をみれば、頼みの自衛隊員だって、り患患者となって役に立たないであろうことは想像がつく。

 パンデミックは、津波のように、繰り返し襲ってくる。一回の周期はおよそ2ヵ月間と考えられているから、その期間をじっとやり過ごすことが当面出来る手段と言える。

 しかもこのパンデミックの回数も予測は不可能で、ワクチン製造に必要とされる6ヵ月間に何回来るかも予測は出来ない。

 やがて来るパンデミックとは、どんなものかがお分かりいただけただろうか。

 * * *

 次回に家庭で出来る備えを掘り下げてご紹介したい。

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