2008年10月20日号
新しい水道事業のあり方を目指す多摩水道
経営改善計画は着実に進行

 多摩地区の都営水道は、25市町に事務委託して運営されていたが、業務の一層の効率化に向けて、市町への事務委託の解消を柱とする『多摩地区水道経営改善基本計画』(平成15年6月策定。計画期間平成24年度まで)が進行中である。計画期間の半ばを過ぎて、既に23市町との間で事務委託解消の基本協定を締結するなど、多摩地区水道事業のあり方が大きく変革している。今回は、その多摩地区水道経営改善の現況をお伝えする。


 既に23市町との事務委託解消の協定締結

多摩市の山王下庁舎。多摩サービスステーション、給水管理事務所などがある。

多摩市の山王下庁舎。多摩サービスステーション、給水管理事務所などがある。

 『多摩地区水道経営改善基本計画』が目指すところは、水道事業の広域化のメリットを一層発揮させることである。

 市町に委託されている水道の業務を都が一元的に行うことで、お客さまサービスや給水安定性の向上を図るとともに、都に移行される業務の執行については、監理団体を大幅に活用するなどにより、事業運営の効率化を推進させている。

 多摩25市町の給水人口は約380万人弱であるため、平成24年度の計画最終年度には、横浜市に匹敵する規模の水道事業の広域化が実現されることになる。

【計画の進捗状況】

 今年4月に八王子市、立川市、町田市といった大規模な市が移行しており、現在、25市町のうち20市町の解消が進んでいる。さらに8月には来年度事務委託解消となる青梅市、調布市、国立市との基本協定が締結され、未締結市町は残り2市となった。

 実際の業務の移行については、徴収系業務で8割(給水件数ベース)、給水装置系業務で6割(同)、施設管理系業務で1割(配水小管管理延長ベース)が都の管理となっており、全体で約5割の業務移行が進んでいる。 

 今年度は将来の完全な統合に向けて、執行体制の骨格を形づくる計画の山場の年である。まず新組織として、2つの給水管理事務所、1つの給水事務所を立ち上げた。

 今後はさらに一つの給水事務所を加え、最終的に多摩地区を4エリアに分けて業務を管理していく。また、サービスステーションを4箇所増やすなど、業務も大幅に拡大していく。


 監理団体を活用した新しい執行体制

【監理団体の活用】

 これまで25市町において、1100人の職員が行ってきた業務が都に移ることになる。そのために、都が出資している東京都監理団体を大幅に活用する新しい業務執行体制を構築している。具体的には、お客さまセンターや12箇所のサービスステーションの徴収系業務を(株)PUCに、サービスステーションの給水装置系業務と、集中管理室等の運営や配水管等の管理といった施設管理系業務を東京水道サービス(株)に委託している。

 監理団体への委託に当たっては、浄水所等の運転管理や管路の維持管理など、施設固有のノウハウがあり、その引継ぎが大きな課題となっている。そのため事務委託解消前に市町から監理団体に業務を委託してもらうといった工夫も行っている。今後、監理団体の体制が強化され、監理団体の業務執行が安定していけば、局側の指導を軽減でき、より高いレベルの業務を任せることも期待できる。

【一元化のメリット】

 この一元化は、市町域にとらわれない広域的で効率的な施設管理を行えることがメリットとして挙げられる。多摩地区の200箇所を超える浄水所等の施設に、遠隔監視制御設備を導入して、段階的に施設の無人化、集中化を進め、給水管理事務所等に併設される4つの管理室で集中管理する体制を整えている。なお、設備等の点検業務は、この4拠点のほか、さらにサブ拠点を4箇所設けて、維持管理の効率性と事故時の迅速な対応を両立させている。配水小管の維持管理業務も、4拠点を中心に効率的な管理を行う。

【広域化のメリット】

 管路は市町ごとに整備されてきたため、事務委託解消の進捗に応じて、再構築を図ることになる。給水エリアは、市町域にとらわれなくて済むため、高低差を活用した配水システムが今後構築できる。また、既存浄水所の統廃合など、効率的な施設整備について具体的に検討を進めていく。

 全体的に多摩地区は、送配水系統の供給源が東村山浄水場や小作浄水場など北部に偏っている特徴がある。送水系で何らかの事故が発生すれば、南部で断水につながりかねない。そのため、広域的な相互のバックアップ体制を整えようと、現在、南西部を中心に多摩丘陵幹線を整備している。また、給水所整備・配水管網の整備など、広域的な施設整備を進めていく。

【経営改善効果】

 無人化設備の導入など、初期投資が当然かかるが、その分人員配置が必要な施設がなくなるため、トータルでみると十分効果はある。計画では、全ての事務委託解消を予定する24年度に、14年度対比で40億円のコスト削減を見込んでいる。

 サービス面でも、徴収システムの再構築や多摩お客さまセンターやサービスステーションの開設のため費用がかかっているが、業務の集約効果があることから、最終的には、お客さまサービスの向上を図りながら、効率的な窓口業務を行うことができるようになる。

【今後の課題】

 長年にわたる事務委託の中で、市町特有の業務執行方法や、都水準と差異があるなどのケースもあり、その対応が課題となっている。業務を受託する(株)PUC、東京水道サービス(株)と早めに体制のすり合わせをしていかなければならない。

 また、今後の業務執行のあり方を考える上では、局から監理団体へ業務を振り分ける際、そのまま出すのではなく、監理団体からも業務改善提案が反映できるようなやり方も考えていく必要がある。

 24年度までの完全解消をにらみ、経営改善の効果をはっきりと示そうと、コストパフォーマンスを再検討している。

【多摩における事業経営モデル構築の挑戦】

 多摩水道で取り組む事業手法の見直しは、区部に先行するものであり、その成果は今後、東京水道全体の経営改善につながっていく。また事業の効率化の観点から、他地域に拡大できる要素も含んでいる。今後さらにしっかりとした事業経営モデルの構築を目指していく。

アイティーコーディネート
東京トヨペット
INAX
プロバンス
光学技術で世界に貢献するKIMMON BRAND
ビデオセキュリティ
アジア教育支援の会
アルゴ
株式会社キズナジャパン
伊豆ガラス工芸美術館
株式会社 E.I.エンジニアリング
日野自動車
ナカ工業株式会社
株式会社ウィザード