2008年1月21日号
TOKYO ★ 世界一
金門光波

 東京にある、世界トップクラスの技術・技能―。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。新撰組の近藤勇、土方歳三の墓がある板橋区板橋。そこに居を構える金門光波は、大手メーカーがさじを投げ、世界でも数社しかない金属蒸気レーザー装置の開発に成功。以来、さまざまな分野の発展に寄与しているが、そこに至るまでの苦悩と喜びをご紹介したい。

代表取締役社長の濱田氏

代表取締役社長の濱田氏

 金門光波の前身である金門電気が設立されたのは1967年。日本で初めてガスメーターと水道メーターを開発し、空調設備事業やダイカスト事業などを展開してきた金門製作所が、照明部門を子会社としたのが始まりである。

 元々持ち合わせていたランプの放電管技術を応用して金門電気は、製作所時代から進めていたレーザー装置の研究をさらに推進。当時の国内では珍しかった金属蒸気レーザー装置「He-Cd(ヘリウム・カドミウム)レーザー装置」の開発に挑んだ。

 He-Cdレーザー装置の特徴を簡単に言うと、従来の赤や緑ではなく青い光が出せること。これにより処理速度が上がるのだが、「レーザーは蛍光灯と一緒で、消耗品なのです。でも長時間、無事故でないと使いものになりませんので、まずは安定性を高めること。そしていかに小さくて高出力のものにするかの2つに苦労しました」と、代表取締役社長・濱田武氏は当時を振り返る。

 金属であるカドミウムを熱してガスにする際の温度、気化するスピード、チューブ(ガスの噴射口)の内径の大きさ、管内にガスを一定に送り込むための制御技術。開発者たちは、日夜さまざまな組み合わせを試しながら研究に没頭した。


忘れられない大手メーカーからの賞賛

 それが実を結んだのが1971年。開発開始から4年の月日が経っていた。「諦めが早い会社なのですが(笑)、これだけは珍しく粘りました」。

 その間、大手メーカーも同様の装置開発に努めていたが、金属蒸気の制御が困難なこともあり断念。今でも、He-Cdレーザー装置を生産している会社は、世界でも数社しかない。

 それほどの偉業を成し遂げたことで金門光波は、多くの注目を集めた。「私がまだ課長の時代、とある展示会が東京であり出展しました。大手メーカーの技術部長がいらしたときの第一声が『金門さん、よくおやりになりましたね』でした」。


ナノテクの発展を支える青い光

He-Cdレーザー装置  ●株式会社金門光波 ●板橋区板橋  ●2006年設立 ●従業員数42名

He-Cdレーザー装置 ●株式会社金門光波 ●板橋区板橋 ●2006年設立 ●従業員数42名

 He-Cdレーザー装置はその後、多方面で活躍。レーザープリンターやCDのマスタリング装置、半導体製造装置の光源などに採用されたことを受け、量産体制に入った。

 また、大学や研究所で次世代製品の研究に使用されているほか、最近ではがん細胞を検出するファイバースコープや3次元モデリングシステムにも組み込まれている。

 「たとえば通信が光に変わってきているように、最近よく耳にするナノテクは光関係が多いのです。そのさまざまな分野に応用されていて、国立の大学や研究所のほとんどで使われています」。

 特殊な装置からバイオメディアまで─。今や金門光波のHe-Cdレーザー装置は、国内で90%のシェアを有し、海外シェアもアメリカ、ドイツ、中国、インドを主として60%を誇っている。


広大な田んぼに必要なあぜ道

工場では極限まで精度を高めるために、細やかな検査がされている

工場では極限まで精度を高めるために、細やかな検査がされている

 あらゆる分野で技術が進歩している昨今、金門光波も新たな製品開発に余念がない。

 1991年にUV領域のレーザーを発するUVHe-Cdレーザー装置を、2005年には半導体レーザー装置をそれぞれ開発。そして今現在では、半導体レーザー装置の応用製品の生産・販売に尽力している。

 話を聞く中で濱田氏は、「私たちの商売は田んぼのあぜ道」と口にした。

 田んぼは広大で、あぜ道は細い。それでも田んぼには、あぜ道が必要だ。

 He-Cdレーザー装置を一般に目にする機会は少ない。だがそれは技術革新を、ひいては私たちの生活そのものを陰で支えている、なくてはならない存在なのである。

 濱田氏は言う。「お客様のニーズをとらえて、いかにいいものを作るかが大事だと考えています。それと好奇心と想像力。『こうしたらどうなる』という気持ちが物作りには大切です」。

 その思いを持って金門光波は、これからもその道を確かな足取りで歩み続ける。



沿革

1967年

金門電気株式会社 設立

1969年

川越工場 設立

1971年

He-Cdレーザー生産・販売開始

1986年

エジンバラ・インスツルメンツ社と販売提携

1990年

He-Cdレーザー総生産本数20,000本達成

1991年

100mW UVHe-Cdレーザーの開発に成功

1992年

海外販売開始

1994年

He-Cdレーザー総生産本数25,000本達成

1996年

エジンバラ・インスツルメンツ社と個体レーザー分野において技術提携

1999年

He-Cdレーザー総生産本数30,000本達成

2003年

YAGレーザー装置の生産・販売開始

2005年

半導体レーザー装置の生産・販売開始

2006年

株式会社金門光波 設立

2007年

He-Cdレーザー総生産本数40,000本達成

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