2008年3月20日号
〜My Life Work〜
仕事に命を賭けて Vol.1
音楽を通して、国民との懸け橋に

航空自衛隊航空中央音楽隊
2等空曹 打楽器担当 楽器係

堀尾 伸二

 危険を顧みず自分に与えられた仕事をやり遂げることを明文化されている職種には、自衛官、警察官、消防士などがある。しかし、仕事内容や日々の研鑽・努力などを知っている人は少ないのではないだろうか。命を賭けて国民を守っている人たちにスポットをあて、仕事への情熱を探るシリーズ。

 第1回目は、航空自衛隊で音楽隊に所属している堀尾伸二2曹。音楽を通して、彼は何を伝えたいのか……。

(取材/中本敦子)


隊員の士気を鼓舞し、地域交流を図る

 航空自衛隊には大きく分けて3つの任務がある。空からの侵略を防ぎ国民と国土の安全・独立を保つ「防空」、大規模災害時に人員・物資の輸送などを行う「大規模災害等各種事態対応」、国際社会の平和と安定のために取り組む「安全保障環境の構築」。これらを遂行するために、現在約4万5千人の隊員が、50以上の職域で活躍している。

 その中の一つ、航空中央音楽隊は、音楽を通して隊員の士気を高め、国家儀式や祭典、また定期演奏会でも演奏活動を行っている。

 堀尾2曹は、ティンパニー、マリンバなどの打楽器を担当。日々練習に励む傍ら、教育にも関心を持ち、後輩たちの指導にも心血を注いでいる。

 「自衛隊が海外派遣や災害時の救助活動などを通じ、社会貢献をしていることは認知されてきましたが、自衛隊のことをよく知らない方もまだまだ多いと思います。音楽を通して子どもたちと触れ合っていくことで、我々の真実の姿を見てもらえるのではないかと思っています」

子どもたちへの指導でしっかりと手ごたえを

 堀尾2曹は、15年前から足立区内の中学校の吹奏楽部に指導に行っている。

 「休日や夏休み、勤務後などに出かけ、指導しています。この2年は、全国コンクールに出場しました。身近に接している子どもたちががんばっている姿を見ると、うれしさと同時にやりがいも感じます」

 堀尾2曹が教えた生徒が音大に進み、大学卒業後に自衛隊音楽隊を志望。この4月に海上自衛隊に入隊し、音楽隊に所属が決まった。

 「中1から見ていた彼女が同じ仕事に就き、非常に感慨深いです」

 堀尾2曹は、都立ろう学校に打楽器を教えにも行っている。耳が聞こえないのに、なぜ、音楽を?と思うが、打楽器は振動を通して音がわかるのだという。

 「実際にドラムを叩かせてあげると、皆喜ぶのですよ。先生方も驚いていました。普段おとなしい子が積極的に演奏するなど、楽器に触れることによって、普段見られない姿が見られたと言うのです。

 ただ自分で練習しているだけでは、自己満足に終わってしまいます。子どもたちに教えるためには勉強しなくてはならないし、たくさんの事を学ばせてもらっています」

研鑽する気持ちを持ち続けていきたい

演奏会に向けての練習光景

演奏会に向けての練習光景。世界的ユーフォニアム奏者、外囿祥一郎3尉は同隊所属。練習中も隊員への指導をしていた

 通常は朝8時半から夕方5時半まで、隊員はそれぞれの練習室で、自分の楽器の腕を磨く。演奏会などが近くなると、合同練習も入る。式典や演奏会は、年間約100回に上る。また、音楽演奏の他にも自衛官として必要な知識・技能を習得するため、厳しい訓練を階級や技能レベルに応じて、受けなければならない。

 「好きな音楽を職業にできるのは、ありがたいことです。音楽を通して国民の皆さんと自衛隊の懸け橋になるのが自分たちの役割だと思っています。そのためにも、演奏家として腕をあげ、常に研鑽を続け、自衛隊員として、社会人として、自分にできることを通じて社会に貢献していきたいと思っています」

 最近は優秀な女性音楽隊員も増え、ますます活気づいている。

 これからの音楽隊の可能性を広げていってくれることだろう。

[プロフィール参照]

<プロフィール>

福岡県出身。武蔵野音楽大学音楽学部器楽学科打楽器専攻を経て、航空中央音楽隊へ。足立区立第11中学校吹奏学部において打楽器を指導。同校は全日本吹奏楽コンクール2年連続全国大会出場を果たす。都立ろう学校においても講師を勤める。日本吹奏楽指導者協会東京神奈川部会理事。

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