2008年7月20日号
ECO-GENE GX-3

ECO-GENE GX-3 ●株式会社SP-3 ●東久留米市柳窪 ●2004年設立

TOKYO★世界一 (7)

ECO-GENE (エコ ジェネ) GX-3

SP-3

 東京にある、世界トップクラスの技術・技能―。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。武蔵野台地のほぼ中央に位置し、「湧水のまち」としても知られる東久留米市柳窪のSP-3は、スクラップされる乗用車のガソリンエンジンを再利用。低燃費、低騒音、低振動、低公害でいて世界一小型な自家用発電機の開発に成功した。その苦難の道のりをご紹介したい。

(取材/袴田宜伸)


 5月の中国・四川大地震や6月の岩手・宮城内陸地震など、世界で災害が頻発している昨今、有事で必要なのがライフライン―水、食料、そして電気―の確保である。現代社会で電気は必要不可欠だが、バックアップは万全と言い難く、また、開発途上国では充分な供給がなされていない。

 一方で今ある自家用発電機は、ディーゼルエンジンを使用。そのため大型で騒音や振動が大きく、排気ガスの問題も懸念される。ガソリンエンジン仕様の発電機としては、屋台で使われるオートバイのエンジンを使ったものがあるが、低出力なため用途は狭い。

 そこでSP-3の代表取締役社長・古市侃氏は「中型の自家用発電機を低価格で供給すること」を第一目標とし、大手カーリサイクル会社の啓愛社とともに2004年、乗用車のガソリンエンジンを使用した自家用発電機の開発に挑んだ。

完成すれば世界初の代物全てがゼロスタート

 基礎理論は確立されているが、それはディーゼルエンジン用。世界初の代物を作り出すだけに試行錯誤が続いた。

 「回転数とのマッチングなど全てがゼロからのスタートでしたから、試作して実験して、いいデータが出たら採用する。その繰り返しでした」

 最も苦労したのは、回転速度を自律的に調節するガバナー。完成までに1年の歳月がかかったが、開発依頼に対してガバナーのトップメーカーである、東邦製作所の快諾が得られたことが大きかったと、古市氏は感謝する。

 「開発主旨にご理解頂き、採算を度外視して『やりましょう』と。ほかにも名だたるメーカー各社にご賛同頂きました。本当にありがたいです」

 安全性・耐久性を高めながらメンテナンスのしやすさも追求。エンジンと発電機を直結させるものが主流な中、「修理しやすいように」並列にし、ベルト駆動を採用した。

 そして開発開始から1年半後の2005年秋、3000ccのガソリンエンジンを搭載した自家用発電機「GX-3」が誕生した。

より小型化・軽量化したGX―7

より小型化・軽量化したGX―7であれば、このように手押しで車載できる

小型で軽量ながら20戸をまかなえる高出力

 GX-3の特徴は、ディーゼルエンジンのものと比べて振動や音が小さいことが一つ。また、安定性が高く、高精密機器の運転も可能だ。

 製造元の啓愛社ではエンジンのスクラップも行っており、GX-3は、その中から充分に使えるエンジンを再利用。資源を有効活用し、エンジン自体にコストがかからないため、低価格を実現している。

 「日本のエンジンは高性能・低燃費で故障も少なく、日本車は世界中で走っていますから部品調達も容易。それに各社の環境問題への取り組みも先進しているので、低公害です。GX-3はそれだけのものを使っていますから、性能面・品質面で世界トップクラスだと自負しています」

 GX-3の出力は、約25KW。日本の家庭20戸ほどの電力に相当するが、これほどの高出力の発電機としては世界一小型で軽量なため、持ち運びやすくスペースも取らない。これもまたGX-3の特徴だ。

代表取締役社長の古市氏

代表取締役社長の古市氏

公共避難施設から海外まで広がる活躍の場

 1号機の完成から1年半後、1800ccのガソリンエンジンを使用したGX-3を開発。そして間もなく、軽自動車のガソリンエンジンを搭載したGX-7がお目見えする。

 今現在の導入先はカーリサイクル業界やガソリンスタンドなどが主で、食料品などの定温倉庫やコンビニへの導入も視野に入れている。また、「災害が起きないことが一番」と前置きして古市氏は言う。

 「老人介護ホームや病院、公共避難施設の学校などで、非常用電源として災害時などに活躍できればと思います」

 中国、ベトナム、スリランカ、パキスタンなど、海外からの引き合いも多いGX-3。電気が生活の基礎にあることからすれば、その活躍の場はますます広がることだろう。大いに期待したい。

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