2008年10月20日号
油脂カット

●有限会社ことぶき ●茨城県筑西市●1984年設立 ●従業員数3名

TOKYO★世界一 (10)

油脂カット

ことぶき

 世界トップクラスの技術・技能―。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。今回ご紹介するのは、前回(9月20日号)の話の中で少し触れた、グリーストラップの悪臭などを改善するノルヘキ(油脂)カット菌自動注入装置。環境保全を第一に考えて次々に製品開発をしてきている、ことぶきが今月1日に、満を持して世に送り出した新製品の全貌に迫る。

(取材/袴田 宜伸)


 レストランやホテル、給食センターなどの業務用厨房から出る排水は、直接公共の下水に流せない。浄化槽に阻集器を設置し、そこで一旦汚水を浄化して排出することが条例で義務づけられている。

 その阻集器がグリーストラップ。文字通り「廃食油(グリース)をせき止める(トラップ)もの」なので、器内には廃食油や汚泥がたまる。そのため、少し放置しておくだけで悪臭やゴキブリなどの害虫が発生したり、配水管がつまったりするのだ。

 この厄介な廃食油や汚泥の処理は、清掃業者にバキューム吸引してもらうのが一般的だが、その費用は安くない。そのため、グリーストラップを設置していながら廃食油が垂れ流しの状態になっていたり、あるいは設置費用が重荷となって、設置すらされていないことも珍しくない。

 最近では、下水管に流れた廃食油がそこで「オイルボール」という名の固形物になり、河川を流れて東京湾岸に漂着。悪臭を放ち、水質を悪化させるなど、新たな問題も浮上してきている。

酵素やオゾンを捨てて バイオに方向転換

 廃食油を分解し、悪臭を消す手段として従来は、酵素やオゾンが使われてきた。ことぶきでも「13年前に酵素仕様の製品を扱う話があった」と代表取締役社長の和田義雄氏。だがその時は、「夏場に臭いを抑えられなかった」ことでやむなく撤退する。

 「その後、オゾン仕様の製品開発を始め、高性能なものを作ることができました。でも『安くていいものを提供する』という理念に反し、高額になってしまったので販売を断念したのです」

 諦められない和田氏は、酵素やオゾンでの実現を捨てて方向転換。バイオに目を向け、独自の技術で数種の微生物を培養。試行錯誤の末、ノルヘキカット菌を生み出した。

上が油脂カット設置前のグリーストラップ内で、下が設置後。設置によって油脂や汚泥などが90%以上取り除かれ、明らかにきれいになっているのがわかる


13年後にやっと果たされたリベンジ

 ノルヘキカット菌の特徴は、動植物油脂や汚泥、有機物を分解すること。つまりグリーストラップの浄化に最適で、これを自動的にグリーストラップに注入する装置が「油脂カット(KTB-SK100V)」なのだ。

 開発に際しては「低価格で省スペースなものにすること」「防水仕様にすること」「ノルヘキカット菌を攪拌するためのポンプが稼働時に倒れないようにすること」に苦労。

 「さまざまな部品を取り寄せて4カ月間、寝る間を惜しんで開発に没頭しました」

 その結果、13年前の撤退以来、内に秘めてきた「リベンジしたい」との思いが、果たされたのだった。

のれんで飯は食えない 1年に1品を開発したい

代表取締役社長の和田氏

 タイマーをセットして1日に1回1時間動かすだけで、配水管のつまりをなくして悪臭を除去し、排水の汚濁防止にも貢献する、油脂カット。今月1日に発売されたばかりながら、その性能の高さが早くも目に止まり、大手ホテルやレストランチェーンからの引き合いが相次いでいる。

 ことぶきでは、油脂カットのほか前回紹介した除菌・消臭用オゾン発生装置など、これまで環境を保全するための製品を次々に開発。今も既に次に目を向け、高濃度の「オゾン水」の開発を進行中だ。

 衰えることを知らない開発意欲。一体何が、その活力になっているのだろうか。

 「元々、体を動かしていることが好きで、目標がないのが嫌な気質なのです。それと今は、のれんでは飯を食えない時代。いかにいいものを作ったとしても、それにあぐらをかいてはいられませんから」

 和田氏は「1年に1品は作っていきたい」と続けた。

 今後はどんな製品で我々を驚かせてくれるのだろうか。さらなる活躍を期待し、新たな製品が産声を上げるその時を楽しみに待ちたい。

アイティーコーディネート
東京トヨペット
INAX
プロバンス
光学技術で世界に貢献するKIMMON BRAND
ビデオセキュリティ
アジア教育支援の会
アルゴ
株式会社キズナジャパン
伊豆ガラス工芸美術館
株式会社 E.I.エンジニアリング
日野自動車
ナカ工業株式会社
株式会社ウィザード