2008年12月20日号
〜My Life Work〜
仕事に命を賭けて Vol.10
血統がよく優秀な犬が集められ、規則正しく生活
警視庁多摩鑑識センター
刑事部鑑識課警察犬係・巡査部長
米村信也さん

 文字通り、仕事に自分の命を賭けることもある人たちがいる。一般の人にはなかなか知られることのない彼らの仕事内容や日々の研鑽・努力にスポットを当て、仕事への情熱を探るシリーズ。

 今回は、多摩市関戸の多摩鑑識センター内警察犬第2訓練所に勤務する、警視庁刑事部鑑識課警察犬係の米村信也・巡査部長。警察犬とともに現場に出動して犯人の足跡追及や遺留品の臭気選別などを行い、警察犬の飼育・訓練もする、警察犬のエキスパートの活躍をご紹介したい。

(取材/袴田 宜伸)



 警察犬の歴史は古く、日本では1912年にイギリスから警察犬2頭を購入し、犯罪捜査などに使役したのがはじまり。

 現在のように鑑識課の警察官が警察犬の飼育・訓練をする、直轄犬制度が採用されたのは1956年からで、旧警視庁警察学校の敷地内に犬舎が設けられ、そこから出動するようになった。

 1966年に板橋区四葉に移転し、警察犬第1訓練所として現在の同区新河岸に移ったのは1971年のこと。さらに1974年には、世田谷区喜多見に警察犬第2訓練所が新設され、1977年に現在の多摩鑑識センター内に移転した。警察犬第1訓練所が都内東部を担当するのに対し、主に都内西部を受け持っている。

 現在、警察犬の頭数は第1と第2を合わせて35頭(内、警察犬第2訓練所に19頭)。

 犬の種類はシェパードやラブラドール・リトリーバーなどで、血統がよく優秀な犬ばかりが集められ、訓練、食事、排便の時間が規則正しく決められた中で毎日生活している。


 難しいことをやらせずに
簡単なことを教える

銃器捜索の訓練

銃器捜索の訓練中。鼻を地面から上げずに捜索し、発見すると伏せをする。訓練しているのはクラーク号(10歳・オス)。ちなみに警察犬として活躍するピークは5〜7歳で、10歳くらいで引退する

 米村巡査部長は子どものころから犬が好きで、警察犬のドラマを見て憧れたこともあり、警察官の道を志した時から警察犬係への配属を希望。念願は警察学校を卒業した約6年後に叶ったが、最初は苦労の連続だった。

 「警察犬は愛犬と違い、育てる中では厳しさも必要なのですが、最初は家で飼っているように接したので、自分の思い通りには動いてくれませんでした。それで悔しい思いもしましたけど、先輩の訓練の仕方を見て自分がいいと思った方法を取り入れていき、自分なりのノウハウを確立していきました」

 しかしながら犬は生き物。当然、マニュアル通りにはいかない。

 「明るい犬や臆病な犬など、犬の性格はさまざまで、接し方も変わります。難しいのは臆病な犬。叱ると動かなくなりますから、犬が一番喜ぶボールを与えたりおだてたりして、自信をつけさせながら育てていきます」

 一人前の警察犬になるには、約1年半を要する。訓練の内容は段階的に「親和・しつけ」に始まり、伏せや待てなどの「服従訓練

 その後、所持品から臭いを嗅ぎとって犯人の足取りをたどり、凶器などを発見する「足跡追及訓練」、臭いを嗅ぎ分ける「臭気選別訓練」などが行われる。 「大事なのは服従訓練。これがきっちり行われていないと、その後の臭気選別などの訓練が身につきません。また、一気に難しいことをやらせずに簡単なことをコツコツと教えるように心がけていて、そして訓練のレベルを下げてでも、必ず成功させて終わらせる。それによって犬が『明日またやりたい』と思うのです」

 犬の能力を落とさせないために訓練は、毎日行われる

 米村巡査部長は続けて言う。

 「最初は10の内、犬は3しか動きません。それを無理に動かそうとせず、まずは自分が動くことが大切。それによって訓練が進むと逆転していき、最後は人間が3で犬が7動くようになります」


 犬の能力は未知数
もっと能力を活かしたい

臭気選別の訓練

臭気選別の訓練。奥に置かれた5つの布の中から臭いを嗅ぎ分けて、該当する臭いがついた布だけを持って来る。訓練しているのは、立川市のコンビニ強盗事件で活躍したクンツ号(6歳・オス)

 こうした訓練を経た後、検定に合格すると晴れて警察犬となる。

 警察犬には足跡追及や臭気選別を行う一般犬のほか、特殊犬と言われる警戒作業をする襲撃犬や薬物捜査に加わる薬物捜索犬などがおり、要請に応じて現場に出動。その数は昨年、800件を越えた。

 これまで米村巡査部長は8頭を担当し、今年の5月に発生した立川市でのコンビニ強盗をスピード解決に導いたほか、数々の事件解決に貢献。担当した警察犬は、警視総監賞や刑事部長賞を受賞してきている。

 「担当している犬に何かを残してあげたいと思っています。ですから訓練が成功した時も嬉しいですが、担当する犬が手柄を立てた時は自分のことのように嬉しく思います」

現場に出動して銃器捜索を行っている最中

現場に出動して銃器捜索を行っている最中

 最後に今後の目標を聞いた。

 「最近、拳銃や弾を捜す銃器捜索犬が警察犬に加わりましたが、犬の能力は未知数。ほかにも犬の能力を活かした捜査ができるのではないかと思っていて、それをうまく引き出せるように努力していきたいです」

 嗅覚だけを見ても人間の数千倍から数万倍と言われるように、犬が持っている能力の高さは計りしれない。

 それだけに今後、どんな活躍を見せてくれるかも未知数だ。期待せずにはいられない。


[プロフィール参照]

<プロフィール>

1956年、熊本県生まれ。高校卒業後、警視庁に入庁し、地域係として南千住警察署に配属。以後、鑑識係などを勤め、警察犬係にはこれまでに通算で15年勤務。現在の警察犬第2訓練所には、2004年に配属される

アイティーコーディネート
東京トヨペット
INAX
プロバンス
光学技術で世界に貢献するKIMMON BRAND
ビデオセキュリティ
アジア教育支援の会
アルゴ
株式会社キズナジャパン
伊豆ガラス工芸美術館
株式会社 E.I.エンジニアリング
日野自動車
ナカ工業株式会社
株式会社ウィザード