カスタマイズ性、種類の豊富さなどから
都内でも2023年度から導入開始
ギフティが提供する「giftee Box®」とは、全国で利用可能なコンビニ商品、カフェチケットなど豊富なラインナップの中から受け取った人が好きなギフトを選ぶことができ、進呈されたギフトポイント内で複数のギフトに交換できるデジタルギフトボックスだ。近年は自治体の出産・子育て事業での採用も広がっており、東京都内では、2023年度から導入がはじまり、約3年が経つ今年度では、「東京都出産・子育て応援事業」を活用した支援策に取り組む都内16自治体で採用されている。
各自治体は、ギフティが提供する約1,000種類以上のギフトの中から、出産・子育てに関するテーマに沿ったギフトを選び、独自にカスタマイズして対象世帯に贈呈することが可能だ。
これらギフトの提供に加え、同社は自治体が運用する給付に必要なシステム、効果測定、事務局運営まで自治体のニーズに合わせて一気通貫で提供している。
導入が広がる背景として、ギフティの箸本(はしもと)涼真さんと鹿野(かの)佑介さんは2つの要因を挙げる。
一つ目は、高いカスタマイズ性だ。自治体は約1,000種類以上ある豊富なギフトの中から事業目的に沿ったギフトを選び、自治体独自にパッケージ化して住民に提供できるため、その自治体ならではの地域特性にあった出産・子育て支援ができたり、さらには地域活性の施策に繋げることもできるという。これは、使途を絞れない現金給付にはないメリットでもあるという。
二つ目は、ギフトの幅広さだ。「giftee Box®」の豊富なラインナップの中には、子育て世帯に利便性の高い商品やサービスも数多くあり、特に近隣の店舗やオンラインストアで購入できるデジタルギフトは人気だ。おむつやミルクなど、メーカーやサイズなど日常的に購入している商品を自分で選び購入できる点が好評を得ている。一方で、交換数が少ないギフトが数多くあるのは、一人一人の細かなニーズに応えられるギフトを用意できた裏付けでもあり、それは在庫が不要でありかつラインナップが多いからこそできるデジタルギフトのメリットだと語る。
利用者の利便性向上に加え
職員の業務効率化・コスト削減も実現
今回取材した町田市は、2024年から「町田市ファーストバースデーサポート事業」で「giftee Box®」を活用している。
市は、町田市内で1歳を迎えた子供がいる家庭を対象に、事業に関してのお知らせと子育てに関するアンケート回答用の二次元コードを送付。回答すると、「町田市ファーストバースデーギフト」(町田市が選定した家事・育児・子育てに関する約750種のギフトがラインナップされた6万円分の「giftee Box®」)が贈呈され、ギフトポイント内で好きなギフトと交換することができる。保有ポイント内で複数のギフトを選ぶことも可能だ。
「giftee Box®」を採用する以前は、紙の商品券を簡易書留で送付していた。封入・送付業務は市職員が目視等で確認し作業をするため、業務負荷が大きく、紙の商品券の郵送代も負担だった。また、利用時にも商品券のためおつりが出ない点も課題だった。
町田市保健所保健予防課母子保健係の金野(こんの)洋介統括係長は、職員の業務効率化は着実に進んでいると語る。
「デジタル化により郵送代が削減できたのはもちろん、商品券の発送作業が不要になるなど、職員の負担はかなり減りました。その分、市民サービスの向上に時間をかけられるようになりました」
約2年をかけてサービス導入の窓口を担った菊池聖佳(せいか)さんは、利用者の利便性も確実に向上したと語る。
「アンケート回答後、即時自動でギフトを交付できる仕組みは、職員の業務効率化だけでなく、利用者の利便性を高めることにもつながったと感じます。選べるギフトの種類の豊富さ、カスタマイズできる点も、利用者にとってメリットにつながっていると思います」
現担当の堀切優吾さんは、菊池さんから業務を引き継いだ際も、ギフティならではの強みを感じたと語る。
「ギフティさまは多くの実績があり、出産・子育て事業への自治体導入のナレッジを蓄積されています。日々の運用も簡単なので、引き継ぎを受けた私も、円滑に運用できています。また、定期的に新たなギフトのご提案をしていただけるため、目的に沿った形で住民の方々に喜んでいただけるギフトが何か、考えることができています」
同課山形悠介母子保健担当課長は、町田市全体がすすめるまちづくりとの親和性も高かったと振り返る。
「町田市は出産・育児事業にとどまらず、あらゆる行政サービスのデジタル化を進め、来庁しなくてもサービスを受けられるインフラづくりを構築してきました。特に町田市の母親世代はデジタルツールとの親和性が高く、そのため9割以上という高いアンケート回答率につながっており、多くの方に「giftee Box®」をご利用いただけているのだと思います」

左から株式会社ギフティの鹿野佑介さん、町田市保健所保健予防課母子保健係の堀切優吾さん、山形悠介母子保健担当課長、金野洋介統括係長、菊池聖佳さん、株式会社ギフティの箸本涼真さん
子育て世代の悩みを解決するギフト
潜在ニーズのサポートにも繋げたい
「町田市ファーストバースデーギフト」のこれまでの具体的な利用率を振り返ると、1位は「子供服チェーン」(35.4%)で、「オンラインショッピング育児支援チケット」(18.2%)、「子育て支援専用スマホ決済サービスポイント」(13.0%)と続いた。ちなみに都内全体では、1位「オンラインショッピング育児支援チケット」(22.8%)、2位「子供服チェーン」(21.0%)と町田市とは逆転しており、3位は「子育て支援専用スマホ決済サービスポイント」(14.8%)、と似た順位と割合だが、町田市は1位の「子供服チェーン」利用率が格段に高いことがわかる。
菊池さんは、町田市らしい子育て世代の動向だと理解しつつ、より潜在的なニーズも促進していきたいと語る。
「この子供服チェーンは、町田市内に6店舗あるため店舗に行きやすいといった、町田市ならではの結果が出たと考えられます。また、ファミリーレストランや飲食チェーンなど、家族のコミュニケーションを促進できるようなギフトも選ばれており、子育て世代にはやはりこうしたサービスも必要なのだと実感しました。産後ケアや家事代行サービス、体験型のギフトなどは、まだ利用が少ないのですが、家事・育児支援となるサービスの活用がみられて良かったと感じます」
山形課長も、「町田市ファーストバースデーサポート事業」を「1歳のアニバーサリー」として、子供はもちろん、お母さんお父さん自身をケアするギフトとしても活用してほしいと語る。
「現金だとつい子育てにかかわらず必要なものにも使われがちですが、デジタルギフトなら、お母さんやお父さんが困っていること、悩んでいることを解決できるサービスをラインナップすることで、こちらから提示することができます。また我々もデータ化された動向を把握でき、これをデジタルギフトのメリットだと実感しています。そのデータを参考にして、出産・子育て事業にとどまらず、より充実した行政サービスを提供していきたいと思います」
ギフティの箸本さんも、利用データを活用し、自治体の子育て事業のさらなる充実に貢献したいという。
「おかげさまで東京都の多くの自治体に採用いただいており、導入いただく自治体が増えてきたからこそ、自治体ごとの傾向やニーズが見えてきています。今後も自治体におけるスムーズな運用をご支援させていただくとともに、このデータから見える情報を活かして、住民の皆様のより幅広いニーズにお応えできるよう、ギフトラインナップの更なる拡充を進めてまいります」
