
3階ひろば映像投影
重松象平氏による空間デザイン
リニューアルの目玉となるのが、3階江戸東京ひろばの大型映像投影である。約4000㎡の天井面と柱面に、収蔵資料等をダイナミックに投影することで、江戸から令和に至る東京の歴史・文化を、デジタル技術を駆使した現代の〝絵巻物〟のように見ることができる。これほど大規模な映像を天井面へ映すというのはなかなか例がなく、これまでの博物館にはない空間体験ができることは間違いない。
今回、この空間デザインを手がけたのは日本人建築家である重松象平氏がパートナーを務める世界的な建築事務所OMA(Office for Metropolitan Architecture)である。重松氏と言えば、東京都現代美術館での「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ展」や2025年大阪・関西万博のフランス館におけるルイ・ヴィトンのインスタレーションなど、世界的ファッションブランドとのコラボレーションも記憶に新しく、個々の展示品の魅力を最大限に引き出す空間デザインは、見るものに驚きと感動を与えてきた。今回、江戸博は、単なる博物館としてリニューアルするのではなく、重松氏の空間演出によって、これまでなじみが薄かった層へも、江戸博の魅力に触れていただけることが期待される。
重松氏が手がけたのはこれだけではない。JR両国駅西口から江戸博に向かう西側アプローチには、鳥居を連想させるL字型の24本の現代的な工作物が建てられ、展示会のバナーも掲げられるようになっているようだ。内側には現代から江戸時代へいざなう映像を投影し、江戸博に入場する前から没入感を高める。また、都営大江戸線からの来場者を出迎える東側アプローチには、博物館を訪れる人びとの驚きや好奇心を表現した、江戸博のロゴマークである「目」をあしらったモニュメントが建ち、遠い江戸時代からの視線が、現在、そして未来の東京までも見守っているようにも見える。

鳥居を連想させる西側アプローチ
展示内容・館内設備のリニューアル

東側アプローチ
レストランでは、公募企画で最優秀賞を受賞した幕の内弁当も提供
リニューアルオープンに向けた準備は、江戸博の中だけに留まらない。これまで、ショッピングモールで江戸博を体験できる「どこでもえどはく」や、大河ドラマと連携したトークショーなども実施してきた。その中でも、リニューアル後のレストランで提供される“幕の内弁当”のアイデアコンテストへは、実際にお弁当を作りその写真を撮影するというハードルの高い内容ながら、70を超える応募があった。
江戸時代が発祥と言われている幕の内弁当。伝統的な江戸野菜を使用するなど、どの応募作品も、創意工夫が凝らされていた。最終審査には、料理研究家のコウケンテツ氏が特別審査員として加わり、甲乙つけがたいハイレベルな戦いの中「えどはく タイムトラベル幕の内弁当:江戸~令和」が最優秀賞を獲得した。
今後、メニュー化を進めていく予定である。

服部時計店
特別展は「大江戸礼賛」展からスタート
博物館を訪れる楽しみのひとつが、その時期にしか見ることができない特別展ではないだろうか。リニューアルオープン後の江戸博では、2026年に4つの特別展を企画している。最初に開催されるのが、「大江戸礼賛」展(4月25日~5月24日)である。リニューアルにふさわしい、選りすぐりの江戸博収蔵品が並び、まさに江戸にどっぷり浸かれる内容となっている。東京都は、世界遺産登録も見据えて江戸の歴史・文化の魅力を発信する様々な取組を行っているが、江戸博はその拠点として重要な役割を担っていくことになるだろう。この機会に、江戸博をはじめとした両国エリアを散策しながら、江戸から続く歴史・文化をじっくり味わってみてはどうだろうか。

最終審査に進んだ5作品
(写真・図版提供=東京都)