関東エリア1都10県の災害運用を担当 各部隊のスペシャリストが集う
東部方面総監部防衛部防衛課は、管轄する関東エリア1都10県(神奈川、千葉、埼玉、茨城、栃木、群馬、新潟、長野、山梨、静岡)の活動全体の運用に関わる状況の把握、計画・命令の作成及び関係組織との調整等を行う、陸上自衛隊関東エリアにおける中心的存在と言える。そのなかには、今回取材した川副英樹3佐が所属する運用班のほか、部隊編成を担当する編成班、外部との調整を主とする部外協力班、航空関係を専門とした航空班などがあり、運用班は、災害対処等の計画作成・実行に係る中核的な役割を担う。 運用班には、陸上部隊の骨幹である普通科をはじめ、様々な職種の人材が集まり、それぞれの経験を活かして全体を運用するという。川副3佐は航空科のスペシャリストとして配属された。
今年8月20日に行われた、イオン株式会社との大規模災害時等の連携協定の締結式。右から3番目が川副3佐(文中写真すべて陸上自衛隊提供)
締結式前に行われた報道関係者向け説明会で、話をする川副3佐(奥テーブル右端)
川副3佐はイオンが行う防災訓練研修にも参加した
海溝型や首都直下型など大規模災害を想定して訓練を計画
川副3佐は、運用班のなかでも災害が担当だ。その主たる任務は、1都10県に関わる大規模災害を想定した防災対処の計画立案及び実施に向けた部内外組織との調整、全体のオペレーションである。 同エリアで想定される主な大規模災害は、現在「海溝型地震(例:東日本大震災)」「南海トラフ地震」「首都直下地震」「富士山火山」の4つであり、近年は「大規模水害(荒川災害)」が加わった。 こうした事態が実際に発生した場合を想定し、内閣府など各専門機関のデータを収集しシミュレーション。その上で東部方面隊内の関係部隊に加え、1都10県の関係自治体、警察、消防、さらには在日米軍などと連絡調整を行い、それぞれの活動指針を決め、実際に訓練を計画、実施するという。 その主要な演練(実戦を想定した訓練)・検証の役割を担うのが、陸海空自衛隊が参加する「自衛隊統合防災演習」だ。毎年行われ、今年5月の演習では、東日本大震災などが該当する「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震」の発生を想定、その影響が集中するであろう北部及び東北方面隊への増援について関係部隊への調整を行った。それを担当したのが川副3佐であった。 「この演習のために、5ヶ月前から準備を始めました。同じ自衛隊内でも演練・検証したい内容が異なり、それを整合させるのは簡単ではありません。無事に訓練を実施することができましたが、正直、計画通りにいかないことも多く、状況に応じて計画を修正し、問題点を明確にして、改善につなげるのも運用に係る担任部署の重要な役割だと実感しました」
昨年実施した「自衛隊統合防災演習」の様子