自動車、自転車、車椅子の洗車サービス及び製品販売等

株式会社洗車の王国

  • 取材:種藤 潤

 日本にある世界トップクラスの技術・技能—。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。

創業以来、自動車の洗車サービスに特化し、今や世界中にサービスのネットワークを広げる株式会社洗車の王国。現在では、蓄積した洗車技術や製品ノウハウを活かし、「自転車」の洗車事業をスタートした。ありそうでなかったサービスだが、東京をはじめとする都市部を中心に、新たな需要が生まれ始めている。

「SENSHA Bicycle 湘南」での洗車の様子。自転車の部品一つ一つを解体し、部位に合った洗剤と技術で丁寧に洗っていく(写真提供:SENSHA Bicycle)

「SENSHA Bicycle 湘南」での洗車の様子。自転車の部品一つ一つを解体し、部位に合った洗剤と技術で丁寧に洗っていく(写真提供:SENSHA Bicycle)

  社名の通り洗車の王国は「洗車」に関するサービスと商品を企画・開発・提供する会社だ。1997年に神奈川県で自動車の洗車、コーティング、カーフィルム施工事業を創業。試行錯誤を重ねながら顧客を増やし、2000年にはオリジナルの洗車用品の開発にも着手し、翌年には商品化に成功。以後、施工事業に加えオリジナルの洗車、コーティング、カーフィルム製品の販売事業を展開し、現在は世界35カ国約1200店舗のネットワークを構築している。

  自動車洗車関連事業に特化したオンリーワン企業として、世界中から支持を得ている理由はさまざまだ。製品である薬剤・道具自体が自動車パーツや汚れごとに異なる仕様、その製品をプロの目と感触によって組み合わせる技術力……詳細はウェブサイト等で確認して欲しいが、現在はその技術や製品力、ビジネス展開の経験を生かし、新事業の企画・開発も行っている。今号で取り上げるのは、その新事業の一つである自転車の洗車サービス「SENSHA Bicycle」である。

株式会社洗車の王国を立ち上げた相原浩代表取締役

株式会社洗車の王国を立ち上げた相原浩代表取締役

「こんなに綺麗になるとは思わなかった」

  東京都内、特に湾岸地域や高層マンション等が建つ新興住宅エリアでは、住民が自転車で移動する姿をよく見かける。その需要を見越して、自転車メーカー各社が電動付きやロードバイクなど、高性能自転車の販売に力を入れているのはご存知の通り。その一方で、自転車購入後のメンテナンスには、ユーザーがほとんど費用や手間をかけないのが現状だ。同社創業者であり、現在も代表取締役を務める相原浩さんは、その自転車に着目し、新たに事業化に踏み切った。

 

 「自動車ユーザーは、車検という定期的にメンテナンスをするシステムがあり、さらに洗車等に手間をかけますが、自転車はほとんどない。でも本来は自転車も人を乗せて走る乗り物で、定期的なメンテナンスは必要ですし、洗車すれば新車同然に生まれ変わります。事実、弊社のサービスを受けた自転車を見て、『こんなに綺麗になるとは思わなかった』とおっしゃるお客様は少なくありません」

自転車の洗車サービスは、基本1台1時間。チェーン汚れも驚くほどきれいになる(写真提供:SENSHA Bicycle)

自転車の洗車サービスは、基本1台1時間。チェーン汚れも驚くほどきれいになる(写真提供:SENSHA Bicycle)

地域の自転車店とも連携 洗車で故障の早期発見解決

 実は相原さん、実業団チームにも所属し、大会で優勝するほどの実力を持つ自転車愛好家である。そのためパーツごとに分解し洗車することは当然であったが、一般ユーザーは自転車を乗り換えるまでほとんど洗車しない。その状況にリスクがあること、そして洗車することでそのリスクを回避できることが伝えられれば、需要拡大の可能性があると判断した。

 「洗車技術や使用する洗剤は、自動車の洗車で培ってきたノウハウに加え、私自身の自転車ユーザーとしての経験も生かされています。どんな状態の自転車でも、ピカピカに仕上げる自信があります。さらに洗車をして汚れを定期的に取れば、故障箇所を早期発見することもできます。自転車の故障による事故を侮ってはいけません。自分だけでなく他人を傷つけるリスクもあります。各店舗では地域の自転車販売店とも連携していますので、故障が見つかったら提携店舗様を紹介しています」(相原さん)

本格的なロードバイク等の自転車はもちろん、いわゆる「ママチャリ」と呼ばれる日常自転車の洗車にも対応。写真は「SENSHA Bicycle 横浜」にて

本格的なロードバイク等の自転車はもちろん、いわゆる「ママチャリ」と呼ばれる日常自転車の洗車にも対応。 写真は「SENSHA Bicycle 横浜」にて

低コストで事業開始が可能 障害者でも開業できる

 現在「SENSHA Bicycle 」の店舗は、全てパートナーシップ(FC店)で、東京・芝のほか、神奈川・江ノ島、大阪、横浜の4箇所。今後は広島、神戸、厚木に展開する予定だ。

 各店舗は10坪ほどの広さで、1〜3台の自転車が同時に洗車できる体制を取っており、1台を一人のスタッフが約1時間で洗いきる。予約はオンラインのみで行い、店舗側はタブレット画面で予約を確認、時間になったらサービスを提供する仕組みになっている。

 この事業は、自転車ユーザーはもちろん、FC展開する店舗オーナーにとっても必要とされる事業だと、相原さんは自信を持つ。

 「昨今のコロナ禍で飲食デリバリーの自転車需要も増加し、今後も都市部を中心に、自転車ユーザーが増えると予想されます。そうした場所は土地代が高めですが、この事業は10坪の広さがあれば始められます。また、一般的なFC事業と違い、開業時の負担となる加盟料やフランチャイズ料などが一切かかりません。さらに、人件費も1店舗1、2名で済み、少ないコストで着実に売り上げを伸ばせます。そして、少ないながらも雇用も生み出せますし、洗車の技術自体がシンプルですから、障害者雇用も可能です。湘南店オーナー様は障害をもちながら実際にサービスを行っていますし、彼の発案で車椅子洗車という新たな事業も始まりました。こちらも着実に需要は拡大すると考えます」

 自転車ユーザー、洗車する事業者、そして故障修理の連携自転車ショップも喜ぶサービス。その結果で利益を上げるのがビジネスの基本だと、相原さんは当たり前のように語った。

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