会計監理局長 堤雅史 氏

  • 聞き手:平田 邦彦

東京都の各局が行っている事業を局長自らが紹介する「局長に聞く」。今回は会計管理局長の堤雅史氏。5兆円もの公金を預かるとともに会計事務を担う重要な局だ。キャッシュレス化や都が始めた新公会計制度の現状について伺った。

会計事務の専門家集団

会計監理局長 堤雅史 氏

キャッシュレス決済を導入

—局長就任から6カ月が経過しましたが、改めて抱負を。

 会計管理局の使命として「適正な会計事務の確保」は欠かせません。適正な収支命令手続と出納手続という二重のチェック体制を構築し、誤りのない会計手続のもと大切な公金を日々収支しています。

 また、国や他の自治体に先駆けて、銀行評価などを駆使し、リスク管理を徹底した公金管理や、複式簿記発生主義会計を導入した新公会計制度の運営、キャッシュレス対応や会計事務のデジタル化などにも精力的に取り組んでいます。

 我々は、都政運営を支える最も基礎的な業務である会計事務を確実に遂行する専門家であり、なおかつ新しい会計制度に先駆的に取り組む挑戦者でもあります。職員は、日々の研鑽と高いモチベーションを活かし、こうした取組を実行しています。

 私は局長として、職員一人ひとりがプロの会計職員として力を発揮することで、局全体が大いなる意思をもった組織として躍動できるよう、先頭に立って日々取り組んでいます。

—業務のデジタル化の推進の状況は。

 現在、契約・支出関連事務のデジタル化を進めています。

 この取組は、起案から支払まで関連する業務プロセスを一連でデジタル化することにより、書類提出のオンライン化等によるQOSの向上とデータの利活用等による事務の圧縮・効率化を目指すものです。

 実現に向けた課題としては、クラウドサービスや請求書等のデジタル化など、国や民間企業の制度・技術動向に合わせた対応、さらに各手続で別々に構築されているシステムの改修や新規システム機能の構築等によるデータ連携などがあります。

 課題については局横断的な検討を行うとともに、当局が所管する支出事務について、デジタルを前提としたBPRと新たな業務フローの構築、必要なシステムの検討等を進めており、令和8年度の運用開始を目指しています。

—キャッシュレス化の現状ですが、様々な支払い形態が進み利便性が向上しました。

 「『未来の東京』戦略」や「シン・トセイ 都政の構造改革QOSアップグレード戦略」では、5つのレスの1つとしてキャッシュレスを推進しています。

 都は、支出においては、現金亡失などの業務リスク軽減や効率化の観点からキャッシュレス化に取り組んでいます。以前は、文房具の購入等、少額支払いは現金が中心でしたが、現在は法人向けブランドデビットカードによる支払いが可能となっています。

 収入については、都民サービスの向上や業務効率化の観点から、電子マネーやクレジットカードなど、都民の皆様に様々な決済手段をご利用いただけるよう取り組んでおり、多数の方がレジャー等の目的で訪れる78の都民利用施設全てでキャッシュレス決済が導入される予定です。

コロナ協力金の早期支給を実現

—新公会計制度の現状はいかがですか。

 都は、行政のコストやストックの情報を明らかにし、事業運営への活用や説明責任の向上を図るため、全国に先駆け、平成18年に企業会計の視点を取り入れた新たな公会計制度を導入し、全国の自治体に向け制度普及に努めてきました。

 平成27年には、総務省が全国の自治体に「統一的な基準」による財務 書類の作成を要請するに至り、大半の自治体がこうした地方公会計制度を整備しています。

 都は、導入の状況も踏まえ、有志の自治体との連携により、指標を用いた財務諸表の比較・分析など、活用推進の取組を行っています。

 昨年11月には、こうした取組事例や自治体間連携などの情報を、全国の自治体職員に向けて動画で発信しました。

 庁内でも、分析の視点や手法に活かせる他自治体の事例などを共有するとともに、財務会計システムを改修し各局が取り組みやすい環境を整えるなど、活用の推進を図っています。

 今後も新公会計制度の先駆者として、活用のすそ野を一層広げ、その成果を事業運営・政策形成に着実に活かせるよう取り組んでいきます。

—その他、局がPRしたい事業や取組をご紹介ください。

 当局は5兆円を超える都の公金をお預かりしています。この公金は、基本方針である「東京都公金管理ポリシー」に基づき、毎年「公金管理計画」を立て、安全性を最重要視し、流動性を十分確保し、効率的な保管・運用を行っています。

 現在、経済金融環境は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響も含め、不透明な状況が続いていますが、その動向をしっかり注視し、専門家の意見も参考としながら、一層適切な管理に万全を期していきます。

 また、都では昨年4月から都内の飲食店等の事業者を対象にコロナ感染拡大防止協力金等を支給していますが、多数の事業者への迅速な支払いは重要な課題です。

 このため当局では、業務経験者による集中的な支払書類の審査、関係部署や指定金融機関との連携による支払方法の改善に取り組み、事業所管局から支払書類を受領し事業者の口座に入金するまでの日数短縮を実現しました。

 今後も積極的な取組により、感染拡大防止に向けた庁内各局の様々な事務事業を会計面から支援します。

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