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1 The Face トップインタビュー2013年10月20日号

 
首都高速道路株式会社 代表取締役社長 <br />菅原秀夫さん
道路は、広い視野で、長い目で考えなければならない。

首都高速道路株式会社 代表取締役社長 
菅原秀夫さん

 都庁では主に主税畑を歩いてきた。巧妙な脱税を暴く税務調査官、通称マルサの仕事にも携わり、局長時代には過去最高の税徴収率を記録。どんな仕事でも与えられたことに生き甲斐を感じ、難題があるとかえって燃えるタイプと自己分析する。石原前知事からは“都庁のイチロー”と称されるとともに、その風貌から「侍」とも言われた、首都高速道路株式会社社長、菅原秀夫さんにお話をうかがった。

(インタビュー/津久井 美智江)

首都高は重要なインフラ。オリンピック成功に向けて邁進。

—2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まりました。前回の2016年東京オリンピック招致活動では、都市基盤整備を担当されていらっしゃいましたが、今回の勝因はどこにあったと思われますか。

菅原 前回は残念ながら一回戦で敗退しましたが、その後のいろんな取り組みや努力が実を結んだんだと思います。ロンドンオリンピック・パラリンピックでの史上最多のメダル獲得という日本選手団の活躍、そして銀座のパレードによって国民の支持率も上がりましたし、今回は東京都だけでなく、政財界が一丸となってオールジャパンで取り組んだことも大きかった。特に、安倍総理が、責任を持って国がやると言ってくれたことが、成功につながったという気がします。

—そもそも首都高速道路(以下、首都高)は、1964年の東京オリンピックに向けて建設が始まったんですよね。

菅原 東京オリンピック前の高度成長期に非常に車が増え、都心の道路が飽和状態になった。それで高速道路をつくろうということになったんですが、オリンピックの招致が追い風になりました。59年に首都高速道路公団をつくり、急ピッチで建設を進めて、オリンピックの2年前の62年12月20日に京橋から芝浦までの4・5㎞が開通した。

—去年の12月20日でちょうど50年。もう半世紀も経つのですね。

菅原 これは前回も基本的に同じなんでしょうけれど、首都高は立候補ファイルでも重要なインフラとして位置づけられています。今年の9月9日には「2020東京オリンピック・パラリンピック首都高推進本部」を設置しましたが、これからは日常の維持点検および補修と併せて、ネットワークの整備をさらに力を入れてやっていかなければならないと思っています。

今年8月30日に実施した防災訓練(社内での災害対策本部設置訓練)の様子

今年8月30日に実施した防災訓練(社内での災害対策本部設置訓練)の様子

—具体的な計画はすでにできているのですか。

菅原 点検や補修はオリンピックに関係なく常に行っていますので、当面の安全性は大丈夫ですが、長いスパンで考えると限界があります。首都高としては、ランドスケープ・アーキテクトの涌井史郎先生を委員長に「首都高速道路構造物の大規模更新のあり方に関する調査研究委員会」を立ち上げて1年間検討していただき、今年1月15日、構造物を作り替える大規模更新や新たな損傷の発生を抑制する大規模修繕の必要性に関する提言をいただきました。

 64年の東京オリンピックで日本は大きく飛躍しました。2020年東京オリンピック・パラリンピックが、将来の日本にとって良い意味で転換点となることを期待していますし、首都高もその一助となるよう頑張ります。

 

構造改革により、職場の雰囲気が一変。主税局長時代には過去最高の徴収率を記録。

今年4月24日に実施した社長定例会見の様子

今年4月24日に実施した社長定例会見の様子

—都庁では主に主税畑を歩まれたそうですが、局長時代には98%という大都市としては驚異的な徴収率をおさめたそうですね。どんな工夫をされたのですか。

菅原 工夫というか、必要に迫られて……。税金は課税すれば入ると、みなさん思っているかもしれませんが、納めてもらえなければ収入にはならない、徴収が大事なんです。課税したものがどれくらい徴収できたかを徴収率というんですけど、1994年が90・7、95年が90・2。1割とれてないってことです。

—この90という数字は、高いんですか、低いんですか。

菅原 一概には言えませんけど、当時の日本全国47都道府県で、都は何番だったと思いますか。

—見当もつきません。

菅原 1番ビリか、ビリから2番目、首都東京がですよ。それで95年に構造改革に着手することにしました。その時に考えたのが4つの柱です。

 その1つが、仕事の進め方。それまでは徴収は一人の人間が一貫してやっていたんです。でも、それだと係長や課長は、その人がどこまで仕事が進んでいるか分かりませんよね。それで、ある程度時間が経ったら別の人に引き継ぐ、というように仕事が流れるようにした。そうなるとみっともない仕事はできませんからね、みんな頑張るでしょう。

 2つ目は、進行管理の強化。仕事のノルマに対して、どれくらい達成したかをチェックする。

—民間企業では当たり前だと思うんですが……。

菅原 役所では珍しかったんですよ。で、3つ目は、人事。一生懸命やった人が報われる仕組みにしました。

 4つ目は、組合。組合は大事ですが、仕事のやり方は東京都側がやると、役割分担をきっちりさせました。

 この4つの柱に取り組んだら、徴収率がバンバン上がっていったんです。

—そんなに急に上がるものなんですか。

菅原 つくづく思ったんですが、主税局の職員もこのままではいけない、なんとかしなきゃいけないと思っていたんだと思います。職場の雰囲気もガラリと変わりました。

—税務調査官(マルサ)のようなこともされていたとか。

菅原 六本木や赤坂の飲食店に出向いて、お客さんの入りの状況とかテーブルの塞がり状況を見て、トイレとかでメモしておく。そして、納税額が低すぎないかチェックするんです。

 身分を隠して行くんですが、たいていばれそうになるんですね。安い背広に、安い時計、安い靴ですから(笑)。

 そんな時は1曲歌うからと、生のピアノ伴奏で「君といつまでも」を熱唱です。二人一組で行くんですが、同僚に「菅原君、今日は仕事!」って(笑)。

—それで、うまくいったんですか。

菅原 もう大成功! バッチリ追徴、応じてくれない場合は告発です(笑)。

 

標識や規制も大事だが、交通安全には、思いやりや譲り合いが大事。

—首都高では07年から「東京スマートドライバー」というプロジェクトを始めましたね。

今年4月24日に実施した首都高速道路(株)社長定例会見の様子

今年4月24日に実施した社長定例会見の様子

菅原 これは、ドライバー間のコミュニケーションの力で首都高の事故を減らそうという市民主体の交通安全プロジェクトなんです。

—車はマシンですが、扱っているのは人間です。ドライバー同士のコミュニケーションが大事だというのは本当にそうだと思いますし、「悪い運転を取り締まるよりも、良い運転をほめよう」という活動なんて、すごくユニークで、さすが東京、と思いました。

菅原 首都高を巡回するホメるパトカー「ホメパト」ですね。

—「ホメパト」って言うんですか。ほかにもピンクのチェッカーフラッグのステッカーとか。

菅原 僕も自分の車につけて走っていますよ(笑)。

 首都高では1日30件くらい事故があるんですが、半分は追突とか接触で、場所は合流部が多いんです。首都高の場合、短時間でつくりましたから、道路の上や川の上ということが多く、すごくカーブも多い。NEXCOの高速道路は、出口はだいたい左側にあるのですが、首都高の場合は、左にも右にも出口があり、非常に運転しづらいこともあって、事故が多いんです。

 ですから、交通安全には、標識や規制も大事でしょうけれど、やはりドライバーの思いやりや譲り合いが大事なんですね。

—ハードも大事ですが、ソフトの面でもいろいろできることがあるんですね。

菅原 現在、首都高は平成26年度に全線開通する中央環状線の整備と併せて、中央環状線の機能強化事業として、5号線板橋・熊野町JCT、6号線の堀切・小菅JCTおよび7号線小松川JCTの改良・新設の工事を進めています。中央環状線は首都圏3環状(外環道、圏央道)の1 つとして着実に進めていかなければならない事業なんです。

—東日本大震災の時、比較的早い時期に支援物資を運ぶことができたのは高速道路があったからですよね。今年の1月、東京に大雪が降って3号渋谷線が通行止めになり、大変な騒ぎになりましたが、首都高も高速道路も、日本の動脈なんだと、改めて感じました。

菅原 一時、道路は不要とは言わないまでも、無駄な投資のように思われる時代がありました。しかし、道路政策で気をつけなければならないのは、途中で判断してはだめだということです。道路は、ネットワークが整備されないうちは、あまり効果がないように思われるかもしれませんが、でき上がるとものすごい効果を発揮する。

 外環道が、過去30年間凍結になったんですけれど、石原(慎太郎)さんが知事でお見えになって、やっと着手できることになったんですが、もし凍結されていなければ、とうに外環道はできている。そうすると道路状況もずいぶんと変わっているはずなんですよね。

 道路は、広い視野で、長い目で考えなければならないとつくづく思います。

—ところで、日本自動車ターミナル社長、そして首都高社長と車に関わることが多いですが、車はお好きですか。

菅原 好きですね。車は、自分の好きな時に好きなところへ行けるでしょう。日光が好きだから、カミさんと一緒によく行くんですよ。ストレスがたまった時なんかに行くといいですね。緑はいっぱいあるし、温泉はあるし。明日からまた頑張ろうって気持ちになるんですよ。

 

首都高速道路株式会社 代表取締役社長 <br />菅原秀夫さん

撮影/木村 佳代子

<プロフィール>
すがわら ひでお
1947年生まれ。東京都出身。72年、中央大学法学部卒業。66年、東京都入庁。2001年、主税局徴収部長、03年、主税局総務部長、05年、主税局長、07年、副知事、10年、日本自動車ターミナル株式会社代表取締役社長などを経て、12年、首都高速道路株式会社代表取締役社長

 

  
 

 

 

タグ:バリトン歌手 上江隼人 二期会 オペラ

 

 

 

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