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NIPPON★世界一 The69th2014年08月20日号

 

●株式会社NTTファシリティーズ
●港区芝浦
●営業開始:1992年
●従業員:5000人(2014年3月31日現在、グループ全体)

『揺れモニ』 建物安全度判定 サポートシステム

 日本にある世界トップクラスの技術・技能―。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。建物の防災を考える上で、耐震・免震について取り上げられることは多いが、実は同じぐらい重要なのは、地震直後の建物の安全性の「見える化」だ。その安全度を判定するシステムは既にあるが、昨年10月、品質・コストともにこれまでにない革新的なシステムが登場した。

(取材/種藤 潤)

 


 2011年3月11日。東日本大震災により東京も大きく揺れた。その時、多くの人が「自分の家や建物は大丈夫?」と感じ、不安で建物から飛び出したという人も、少なからずいたのではないだろうか。

 建築物の設計・保守・維持管理を行う同社には、震災後から建物の安全性に関する問合せが殺到。都市建築設計部・構造エンジニアリング部門長の横田和伸さんは、当時を次のように振り返る。

 「『こんなに揺れて大丈夫か』『揺れた後の建物は安全か』と多くの問合せがあり、調査の対応に追われました。しかもその調査を一から行うのは、時間もコストも非常にかかりました。でも本来は、地震直後に建物の状態を把握し、建物内の人々に安全かどうか伝え、それに応じた対 応をするのが、建物を維持管理する者として当然であり、理想の防災の形。特に高層建物を所有する企業様は、地震直後の安全性確認の重要性を、改めて認識されていました」

 同社でも建築物の設計・メンテナンスを担う立場として、その重要性を改めて受け止め、地震直後に安全性を「見える化」するシステムの開発に着手。そしてあの日から2年半以上経った2013年10月、『揺れモニ』が誕生した。

 

地震発生1分後には建物の安全性が誰でもわかる

『揺れモニ』のプロジェクトを担う都市建築設計部・構造エンジニアリング部門長の横田和伸さん(右)と、グリーンITビルプロジェクト本部・プロジェクト推進担当課長の栗田聖也さん(左)

『揺れモニ』のプロジェクトを担う都市建築設計部・構造エンジニアリング部門長の横田和伸さん(右)と、グリーンITビルプロジェクト本部・プロジェクト推進担当課長の栗田聖也さん(左)

 同システムでは、建物の各階に独自に開発した高精度のセンサーを設置。地震が起こるなど建物が揺れた際、リアルタイムで揺れ具合を計測し、PC画面に表示する。建物の揺れの大きさを表示する他、各階の安全性を青・黄・赤の3段階で表示。さらに揺れがあった約1分後には、解析結果をコメントで表示することも可能で、建物内に緊急避難の要否などを含めた建物の状況をアナウンスすることもできるという。

 『揺れモニ』開発を担当したグリーンITビルプロジェクト本部・プロジェクト推進担当課長の栗田聖也さんは、このシステムの長所として「誰でも一目でわかること」を挙げる。

 「細かいデータではわからない安全性を、このシステムでは色分けやコメント表示で、誰が見ても建物の状態がわかるようにしました。表示される情報の種類や、コメントの内容などカスタマイズもできますので、建物ごとに最適な表示にすることも可能です」

 

独自の高精度センサで中層階の建物にも設置できる

『揺れモニ』の設置イメージ。

『揺れモニ』の設置イメージ。各階に機器を設置することで正確に測定。これまでの機器は高価 で3~7階に1台しか設置できず、精度には限界があった

 実は東日本大震災前から、地震後の建物の安全判断システムは存在した。ただ、建物の揺れを感知する地震計が高価であり、実際は3~7階おきに設置するしかなく、設置していない階は解析による予測値で判定。結果、解析誤差による精度の問題があり、さらに高さ60m以上の高層 ビルにしか適用できなかった。

 しかしNTTグループとして、多くのビル設計・地震観測・震災復旧を担った同社の実績・ノウハウを集結することで、高精度のセンサーの開発に成功。低コスト化も実現し、各階に設置することもでき、より正確なデータ集積が可能になった。

 「センサーの全階設置により、高層建物だけでなく中層の建物にも対応できるようになりました。さらにこれまでの製品は、垂直傾斜(建物の縦の傾き)しか計測できませんでしたが、『揺れモニ』は水平傾斜(横の傾き)、さらには固有周期をデータ化し、建物剛性も判定。3つの要 素により、より正確に建物の安全状態を確認することができるのです」(栗田さん)

 

24時間体制で保守管理
システム異常もすぐに察知

 その上、『揺れモニ』ではFOC(ファシリティーズオペレーションセンタ)でシステム稼働状況を24時間遠隔監視。仮にシステムに異常が発生しても、速やかに修理し稼働できる状態になっている。

 発売後、やはり東日本大震災で建物の安全判断の重要性を実感した、高層建築を所有する不動産会社を中心に注目されたと、栗田さんは語る。

 「新築はもちろん、既築の建物でも設置可能ですので、より多くの建物に取り入れていただきたいですね」

 企業が所有するオフィスビルや集合住宅だけでなく、横田さんは行政関連の建物にこそ『揺れモニ』を導入してほしい、と願う。

 「大地震直後は、街の防災の拠点は行政の建物になります。そこの安全性こそすぐに確認できなければなりません。特に東京は2020年にオリンピックが控えているので、世界的な防災の街を目指す上でも、『揺れモニ』を活用してほしいと思います」

 無論、都内のあらゆる中層階以上の建物の安全性が「見える化」すれば、防災都市として東京は着実に進歩できる。それを実現する選択肢として、『揺れモニ』が欠かすことのできない存在であることは、間違いない。

 

 

 

 

タグ:株式会社NTTファシリティーズ 揺れモニ FOC(ファシリティーズオペレーションセンタ)

 

 

 

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