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1 The Face トップインタビュー2015年07月20日号

 
株式会社イーアンドエフ 代表取締役 谷本俊雄さんさん
“飛ぶ”ドライバーで、ゴルフ人口の減少を食い止める!

株式会社イーアンドエフ 代表取締役
 谷本 俊雄さん

 人に誘われ、いやいや始めたゴルフだった。しかし、10年後、20年後の事業を考えた時に行き着いたのはゴルフ関係の仕事。軌道に乗っていた書籍販売の会社を売却し、月1ゴルファーから、クラブ開発者へと転身した。基礎研究から実に9年の歳月をかけて完成させた“飛ぶ”ドライバーは口コミで人気が広まり、今や「本当に飛んで曲がらない」と競技ゴルファーから一般アベレージゴルファーまで大人気。そのリョーマゴルフ開発者である株式会社イーアンドエフ代表取締役、谷本俊雄さんにお話をうかがった。

(インタビュー/津久井 美智江)

「買いたい」、「売ってほしい」と言われるものを創る。

—なぜゴルフクラブの開発をしようと思われたのですか。

谷本 大学時代から書籍販売の仕事に関わり、卒業と同時に株式会社を設立しました。書籍販売の事業はうまくいっていましたが、一生続ける仕事ではなく、ある程度のところで見切りをつけようと思っていました。

 その頃、趣味でやっていたゴルフですが、年配者とラウンドする機会が多く、皆さん口々に、年と共に飛距離が落ちたと言うんです。飛距離が伸びるドライバーがあれば値段はいくらでも良いと。加齢とともに飛距離が落ちて、ゴルフがだんだんつまらなくなることでゴルフをやめてしまうんですよね。とても残念だったし、自分に何かできないかと思っていたんです。

 そこで最終的に行き着いたのが、「飛ぶ」「買いたい」と思ってもらえるゴルフクラブを創るということでした。あと10ヤード飛んだら10万円出しても良いということですから、ニーズはあると感じました。

—ゴルフクラブを創ると言っても、どうやって創るのですか。

2014年3月、ビートたけしさんがイメージキャラクターに就任

2014年3月、ビートたけしさんがイメージキャラクターに就任

谷本 元々、クラブ創りは全くの素人でした。

 そこでまずは、市場のクラブを片っ端から買いあさり、ヘッドを解体して板厚や金属組成を分析しました。でも、結局どれも構造や素材に大きな違いは無く、外観形状が異なる程度なんですよね。にもかかわらず、さまざまな効果が謳われている。

 特許や技術文献も読みあさり、主要な国内メーカーの開発手法についても調べました。すると、多くはタイヤメーカーであり、技術者もゴムに関する専門家。同じ天然ゴム1㎏でもゴルフボールはタイヤの何倍もの価格で売れるんです。きっとゴルフボールを提供することが主で、PRも兼ねてゴルフクラブも作っているのでは?素人ながらそんな感じがしました。

 私はモノ創りについても興味本位からそこそこの知識はありましたし、一応理系出身で金属のことも少しはわかっていましたので、金属分野から攻めたら入り込む隙があるんじゃないかと思ったのです。

—自分は金属のことが分かると。

谷本 あまり大学の授業には出ていなかったので、私の知識は基本的なことだけです。であれば、専門家に教わろう!と考えました。

 当時インターネットが普及し始めたことも幸いしましたが、何より、書籍販売の仕事で培った、いろんなところにいきなり話を聞きに行く「飛び込み」が得意だったので、大学の先生や素材メーカー、はたまた大手ゴルフメーカーにまで相談に行きました(笑)。

 リョーマのクラブは特殊な構造であるが故、今でも設計開発は私一人ですが、社外で協力していただけるゴルフ好きの博士が10人以上います。力学ならこの人、溶接ならこの人、熱処理のことはこの人と、皆さんその分野では日本のトップの方ばかりです。更に、クラブの実打テストではプロからアマチュアゴルファーまで多くの方にテスターとしてご協力いただいています。

 

飛び”を決定するのは、ヘッドとボールが衝突する僅か1万分の5秒。

—飛びのために、どのようなことを研究されたのですか。

谷本 シャフトも徹底的に研究しましたが、飛ぶシャフトというものはなく各々のゴルファーにとってタイミングが取り易く、芯に当てやすいシャフトが最も飛ぶシャフトになります。ですから、ヘッド構造に重点を置いて研究開発を進めました。

 一般的なクラブは真芯ヒット時の性能に注視していますが、ツアープロでも1ラウンドでの真芯ヒットは数発です。ましてや、私たち一般アマチュアであればその確率は極端に低くなります。そこで、芯を外しても飛んで曲がらないことを前提としたヘッド構造を徹底的に研究しました。

基礎研究を続けた技術開発センター

基礎研究を続けた技術開発センター

 “飛び”を決定するのは、ヘッドとボールが衝突する僅か1万分の5秒なんですね。1秒間に100万コマの撮影が可能な超高速カメラを何台も使って、このインパクトの現象をいろんな方面から検証しました。その結果、インパクトでボールのスピン量を減らすことができれば、ボールはより前方に飛行し、さらに転がりが伸びて飛距離がアップすることが分かりました。要するにこれを意図的に発生させるヘッドを目指せば良いのです。

 ところが、研究を続ける中でいろいろな問題が出てきました。例えば、飛ぶには飛ぶけど2、3発打ったらすぐ壊れちゃうとか。それでは商品にならないので、今までにないもっと強度の高い素材を開発するしかないと、一旦、クラブの開発をストップして素材開発をやり始めたんです。

—どんな素材なんですか。

谷本 航空機や自動車などいろんなものに使える、チタンを超える特殊なチタン素材です。カーボンナノチューブを利用して、チタンを改良できないかという私のアイデアを長野県工業技術センターが一緒に研究してくれることになりました。2年間かけて金属サンプルができましたが、さらに量産技術を確立するには莫大な資金が必要でした。

 そこで、経産省のナショナルプロジェクトの補助金を申請して二年目には何とか受かり、億単位の補助金が出ました。何千万円もする装置を何台か買って、その新素材の量産化研究を実施しました。足かけ5年間に及ぶ素材開発を実施し、物質特許にもなりましたが、この素材はまだゴルフクラブには使えていないんです。

 現状の生産装置は実験用の小型機なので、従来の素材の10倍ぐらいのコストになってしまいます。ですから他の大口用途が見いだせない限り、コストダウンにならないんです。レース用のエンジンパーツとか、ステンレスに代わる航空機用材料として、その用途開発は大手企業さんに委ねています。

 未だに実用化の目途は立っていないことは大きな失敗かもしれませんが、いずれは必ずという気持ちは秘め続けています。

 

「その志のままに生きよ」という龍馬の言葉が背中を押してくれた。

—最初の商品ができるまで、どれくらいかかったのですか。

谷本 今の会社を設立したのが2000年で、最初のドライバーを発売したのが2009年ですから、丸9年です。どんな人でも必ず“飛ぶ”と実感できるものでなければ商品化しないと決めていましたし、実際に飛べば買ってもらえると確信していました。

オーナーズCUPを開催

オーナーズCUPを開催

—本当に誰が使っても飛ぶものなんですか。

谷本 もちろんです。特にあまり上手ではない方ほど飛びの違いがわかりますね(笑)。

 当初、「飛ばなければ全額返金します」というコピーで売り出したのですが、それくらい自信がありました。一般的なクラブより概ね15~20ヤードは違います。

 実際に打って飛びの違いを実感してもらうのが早いと思い、年間800回くらいは試打会を行っています。試打会では、お客様ご自身のエースクラブと打ち比べてガチンコ勝負をしていただきますが、リョーマの勝率は9割以上。最も飛ぶクラブは使い慣れた自分のクラブですから、そんなガチンコ勝負を挑むメーカーは他にないでしょう。

 2年前にフルモデルチェンジした「マキシマ」を発売しましたが、これは従来品よりもスイートエリアを1・5倍に広げ、さらにミスショット時の曲がりは他社クラブの2分の1以下に押さえるなど、更なるパフォーマンスの向上を図りました。

 実はその前年、発売前のこのドライバーを試す目的もあって、生まれて初めてクラブ選手権(ザ・カントリークラブ・ジャパン)に出場したんです。そうしたら、何と月2ゴルファーながら、クラブチャンピオンになっちゃいまして、新ドライバーの発売を決めました。

—それはすごいですね

谷本 改めてこのドライバーはすごいと、自信を深めました。ただ、どこのメーカーも“飛んで曲がらない”と言っているんですよね。実は消費者がいちばん聞きたくない広告のセリフなんです。じゃあ、誰が飛ぶと言えばいちばん信憑性があるかと考えて、たまたまBSの番組でご縁をいただいたビートたけしさんにイメージキャラクターをお願いしたんです。以来、メーカーの信用度が上がってきた感じですね。

 まだまだ9年間の研究開発の蓄積がありますから、“飛びのメカニズム”のアイデアはたくさんあります。今後も期待してください。

—最後に、ゴルフの魅力ってなんでしょう。

谷本 リョーマユーザーには政財界の方々も多いんです。普通だったら絶対にお会いすることができない方たちとゴルフを通してご縁ができ、最近ではラウンドをご一緒しています。ゴルフならそんな雲の上の方々と一緒に一日を過ごせる。

 私は、そういう方々がどの様にして成功したのか、とても興味があるのでストレートにお聞きするのですが、要は誰だって努力はしているということです。あとは運ですが、運だけではもちろんだめで、多くの失敗を経験したこと、失敗を事前に予見して未然に防ぐことが重要で、決めたことは成功するまで諦めないこと。そうみなさん共通しておっしゃいますね。こういう話を直に聞けるのは本当に有り難いことで、何ものにも代え難い財産になっています。

 それもこれも、子どもの頃から尊敬してやまない坂本龍馬のお陰です。「おのおの、その志のままに生きよ」(司馬遼太郎『竜馬がゆく』より)という龍馬の言葉が背中を押してくれているような気がします。

 

株式会社イーアンドエフ 代表取締役 谷本俊雄さんさん

撮影/木村 佳代子

<プロフィール>
たにもと としお
1964年、高知県生まれ。リョーマゴルフの代表、兼開発責任者。子供の頃から坂本龍馬を尊敬し、2000年、一念発起して「リョーマゴルフ」を設立。既成概念を覆す構造のゴルフヘッドやナノテク新素材を開発。長年にわたり、他に無い高機能ゴルフクラブの研究開発に精魂を傾けている。人生初競技でクラブチャンピオンになる(ザ・カントリークラブ・ジャパン)。ベストスコアは71。

 

  
 

 

 

タグ:株式会社イーアンドエフ 谷本俊雄 リョーマゴルフ ゴルフドライバー マキシマ 

 

 

 

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