常に高みを目指す教育を
—少子化が進んでいます。子育てがやりやすい教育のあり方というのはあるのでしょうか。
仕事も子育ても男女が共に行う生活パターンは以前に比べると随分定着してきたと思います。今の子供たちは小さいうちから女の子がリーダーシップを取り、クラスの中で存在感を示しているケースも多くありますからこれからも男女平等、家事・育児の同等な配分は着実に進むでしょう。
むしろ、これとは別に、生きる力といいますか、困難を乗り越えていく力が若い世代に欠けてきているように見受けられるのが気がかりです。大学を出ても非正規社員のままであったり、いつまでも職に就かない若者がいる、こうした現象がこれからも長く続けば、社会の活力は確実に失われていきます。いかに自立した社会人となるかをしっかり意識付けすることが重要です。
—人を育て、教育することは難しいですね。
おっしゃる通りです。一朝一夕で出来るものではありません。膨大な時間と労力がかかりますが継続して行うことが非常に重要です。
日本人は戦後の高度成長期と今を比べると、確実に気質が違っています。特に若い世代は、諸外国と比較しても目的意識や自己肯定感が低いと言われています。
日本は国際競争の中で自分たちの存在を維持、向上させていかなければならない宿命にありますが、海外に出て成功を収める、いわば「一旗あげる」という積極性を持つ若い人材が減ってきているということは、まさに亡国の危機だと思います。
—教員の質の向上という意味では、社会経験のある人材の登用も重要と思いますが。
都庁では人材の確保が大きな課題となっていて、中途採用を積極的に行っていますが、都教育委でも同様に社会経験のある人材を数多く採用しています。
今、民間企業では新卒者の3分の1が3年以内に辞めてしまうと言われていますが、こうした人たちの中で教員免許を持っている人材が教員採用試験をかなり受けに来ています。社会経験を積んでいる人材は教員集団の多様性を拡げ、子供の教育にも大きなプラス効果があると考えています。
教育には「これでいい」というものはないと思います。様々な時代の変化の中で教育に求められる要求も変化していますからね。また、親や子供たちがより良い教育を望むのも当然です。ですから、我々は、昨日よりも今日、今日よりも明日という形で常に教育の向上を目指す努力を続けていかなければなりません。