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特集
2012年2月20日号
News Focus

東京下水道 東日本大震災教訓に高度防災都市づくり

施設の耐震化を推進

 東日本大震災では被災地の下水道施設は地震と津波により甚大な被害を受けた。震源地から500キロメートル以上離れた東京においても液状化による下水道管の損傷や土砂のつまり、水再生センターの設備の破損等の被害があった。都内の被害については、いずれも早期に復旧することができたため、下水道の使用に支障を生じることはなかったが、下水道局では、今後の事業展開として震災時においても下水道が十分に機能を発揮できるよう、東日本大震災を教訓に下水道管の液状化対策や下水道施設の耐震化などの対策を加速させて高度防災都市づくりを進めていく方針だ。

 

マンホールのつなぎ目対策
計画前倒しで25年度完了へ

 耐震化の取り組みの一例として、マンホールと下水道管のつなぎ目の耐震化がある。これは、避難所などの施設から排水を受け入れる下水道管とマンホールのつなぎ目を改良して柔構造化することで、耐震性を強化するものである。当初は平成27年度末までに対象となる2500箇所を完了させる予定であったが、計画を2年前倒しして、平成25年度末までに完了させることを目指していく。

 また、マンホールの浮上抑制対策については、液状化の危険性の高い地域にある緊急輸送道路など500キロメートル全てを昨年度までに完了させた。今年度からは、避難所などへのアクセス道路に対象を拡大して、対策を実施している。

 さらに、これらの取り組みについては、発災時に多くの帰宅困難者が滞留するターミナル駅周辺などへの、対策エリアの拡大に向けた検討を行っている。

 

バックアップルートを確保
芝浦と森ヶ崎をネットワーク化

 耐震化の取り組みに加えて、水再生センター間で、汚水や汚泥、再生水などを相互に送ることができるネットワークを整備して、総合的なバックアップ機能を確保する。

 これまでも、多摩地域においては、多摩川を挟んで対面に位置する水再生センター間を結ぶ連絡管の整備を行い、施設整備や維持管理の効率化を図ってきた。

 区部においても、水再生センター間を結ぶ送泥管を整備して汚泥処理の効率化を図るとともに、信頼性を高めるため、送泥管のバックアップルートの確保を行ってきた。

 今後は、災害時においても下水道機能を確実に維持するとともに、水再生センターの再構築時の一時的な処理能力不足に対応するため、まずは、首都機能が集積している地区の排水を受ける芝浦水再生センターと、規模の大きい森ヶ崎水再生センター間のネットワーク化に向けた連絡管を整備することとし、今年度から設計に着手している。

 

津波・高潮対策を再検証
学識経験者で委員会を設置

 これまでも津波や高潮の備えとして水再生センターやポンプ所などで耐水性の確保に努めてきたが、東日本大震災の津波による被害を踏まえ、今後の防災対策のあり方を検討することを目的に、下水道・建設・港湾の各局職員と学識経験者で構成する「地震・津波に伴う水害対策技術検証委員会」を昨年6月に設置して、本年2月にとりまとめを行う予定だ。今後は、委員会の提言を参考に、施設の耐震性や耐水性の更なる強化を検討していく。

 

節電・電力確保の取り組み
NaS蓄電池を4万kwに倍増化

東京下水道 電力貯蔵設備

<電力貯蔵設備(NaS蓄電池設備)>

 下水を処理する過程では大量の電力を必要とする。節電・電力確保などの電力対策は、都内の電力の1%を消費する事業者である下水道局にとって、総力を挙げて取り組むべき課題だ。昨夏の電力不足への対応として、都は、国の電力使用制限令を上回る独自の削減目標を15%と定め、病院や上下水道施設など都のライフライン関連施設全体でピーク電力を4・2万キロワット削減する目標を揚げた。下水道局は、水再生センターなどにおいて送風機やポンプの運転台数をきめ細かに調整するなど、これまで培ってきた運転管理のノウハウを駆使して積極的に節電を行うとともに、NaS蓄電池を活用して夜間に蓄電した電力を昼間のピーク時に使用することで、約2・9万キロワットのピーク電力を削減し、受電電力の抑制に大きく貢献した。

 今後は、NaS蓄電池の保有設備能力を現在の2万キロワットから、4万キロワットに倍増させるとともに、非常時に下水道施設で使う電力を局内で少しでも賄うため、水再生センターなどに設置している非常用発電設備の容量の増強や太陽光発電の追加導入の検討など、電源の確保や多様化に向けた取り組みを着実に進めていく。

 

下水汚泥の焼却灰対策
安全第一にきめ細かい情報提供も

 東日本大震災に伴う福島の原発事故により、都内においても下水汚泥や汚泥焼却灰から放射性物質が検出された。

 放射性物質を含む汚泥焼却灰については、国の定めた基準を下回っていることから、区部では、専用の施設内で焼却灰にセメントと水を混ぜ飛散防止措置を施した上で、開閉式の蓋がついたトラックを用いて運搬し、全量を処分場に埋立処分している。

 多摩地域では、当初、処分場を持たないため焼却灰を袋に密閉して施設内に仮置き保管していた。焼却灰は毎日排出されることから、保管場所の確保が問題になっていたが、多摩地域の焼却灰についても、昨年10月から埋立処分を開始し、昨年12月からは施設内に仮置きしていた焼却灰の搬出を始めている。

 汚泥焼却灰、混練灰(汚泥焼却灰に水とセメントを混ぜたもの)及び汚泥焼却炉の排ガスに含まれる放射性物質については専門機関により測定するとともに、施設の敷地境界の空間放射線量を毎週測定している。

 これらの測定結果については、ホームページで公表している。汚泥焼却炉の排ガスからは放射性物質は検出されておらず、また、空間放射線量の測定結果は都内の他の地域と変わらない数値になっており、周辺環境への影響はないとしており、引き続き、きめ細かい情報提供に努めていく。

 下水汚泥の資源化については、放射性物質が検出されたために見合わせていたが、本格的な再開に向けて関係者との調整を進めていく。

 

新しい技術開発にも全力
エネルギー自立システムなど

 災害に強い高度防災都市づくりにあたっては、震災によって電力供給の途絶や液状化現象などが発生しても、下水道の機能を維持し、都民生活の安全を確保することが求められる。これらの課題に的確に対応していくためには、新技術の開発が不可欠である。

 例えば、汚泥の含水率を低下させて汚泥を燃焼しやすくし、外部からの補助燃料や電力が確保できなくても、汚泥の熱量だけで焼却炉の運転を可能とするエネルギー自立型の汚泥焼却システムの開発を検討する。

 また、下水道管内に土砂が流入することを防止する技術など、下水道施設の液状化対策を視野に入れた耐震化技術の開発にも鋭意取り組んでいく。

 

経営計画を着実に推進

 日本の下水道事業をリードする東京下水道の使命は、都民生活や都市活動に不可欠なライフラインである下水道の機能を、社会経済環境の変化に適切に対応させながら維持していくとともに、被災地の復旧支援や、更なる災害対策、電力対策など、今回の震災を踏まえた課題にも、迅速かつ的確に対応することだ。

 今後も「経営計画2010」の主要施策を着実に推進するとともに、高度防災都市づくりへ向けて、更なる防災能力の向上に取り組んでいくとしている。

 

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