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暮らし・文化
2011年6月20日号

らくがきスポーツカフェ(11)

私の好きな「おすもう」はスポーツ競技になったのか

スポーツ・プロデューサー、NPO法人スポーツ見物協会 堀田 壽一

 混乱が続いた「相撲」だが、名古屋場所からスポーツ競技「相撲」として再開されるようだ。私は相撲が好きだ。でも、スポーツとしてではなく「おすもう」として好きなのだ。

 小学校四、五年生の頃だったと思う。名古屋場所がまだ本場所ではなく、準場所だった時代。場所は名古屋市金山体育館だったか? 支度部屋は、周りを竹矢来で囲った外のテントだった。中の様子が知りたくて知りたくて、ガキ大将が竹を揺さぶり子供一人が入れる穴を作った。数人が潜り込み、私もこわごわ付いて入った。

 館内に入って足がすくんだ。そこには、今まで見たこともない別世界が広がっていたからだ。だが、見つかるのも早かった。私たちの首筋を押さえつけた男が赤鬼に見えた。捕まったのはドジな二人。数人の大男に囲まれ「どこから入った!」と脅された。チビリそうに震え上がり「竹を……」と小声がやっと出た。「そんなに『おすもう』が見たいのか」と赤鬼は優しい男に変った。「ヨシ、どこでも見ていいぞ」とオデコに朱印を押され場所へ出された。

 度胸は全くなかったので通路に立っていた。ライトを浴びた土俵と「おすもうさん」がキレイで華やかだった。千代の山だったか、ヨイショのかけ声の上がる土俵入りは、さながら竜宮城。私はおすもうに憑かれ、名寄岩は大好きな関取になった。

 あの頃、子供のスポーツは三角ベースやドッジボール。夢はプロ野球選手で、非力でも努力すれば実現すると信じていた。

 だが、おすもうは別だ。体重別階級などないので、天性の体がなければ1対1の力技で負け、褌かつぎ人生を送ることになる。徹底したヒエラルキーがある。だから、7勝7敗の力士が千秋楽に土俵で見せる目には、対戦力士の褌も緩む不思議な力が宿る。おすもうはスポーツではないのだ。今もその思いは変わらない。

 八百長スキャンダルから発生した、粛正にも似た大量処分と技量審査場所はヨシとしよう。でも空席へ昇格とか負け越し昇格はいけない。ガチンコ勝負を続け番付を上げるのが、おすもうさんだ。「運も実力のうち」と親方は言う。関取の道も運の巡り合わせか。そしておすもうは、スポーツ競技種目の相撲に変るのだろうか。

 

 


<筆者紹介>

堀田 壽一(ほった じゅいち)

愛知大学経済学部卒業。NHK入局。報道カメラマンを経て、NHKスペシャル「アフリカに架ける橋」「飢餓地帯を行く」「呉清源」など幅広いジャンルでカメラマンとして活躍。スポーツも各種目を取材、スポーツ報道センターチーフプロデュサーとしてサタデースポーツ、サンデースポーツ副編集長を務める。オリンピックはリレハンメル、アトランタ、シドニー、サッカーは1998年のフランス大会を現地取材。特にJリーグは1983年から取材を続けている。1997年、NHK退職後、関連会社でスポーツ番組制作に参加。2007年からフリーランス・スポーツプロデューサー。日本トップリーグ連携機構マネージメント強化プロジェクトアドバイザー、NPO法人スポーツ見物協会会員。

 

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