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暮らし・文化
2012年10月20日号

らくがきスポーツカフェ(27)

勝って当然、負ければ解任
監督はつらいよ

スポーツ・プロデューサー、NPO法人スポーツ見物協会 堀田 壽一

 サッカー日本一を争う「天皇杯全日本サッカー選手権大会」の3回戦が終わったが、J―1チームが負けている。Jリーグ残り5節、早々と監督との契約を延長したチームもあれば、更新を諦めたチームもある。

 1年前の11月、皇居で行われた園遊会での、なでしこジャパン佐々木則夫監督と澤穂希選手の映像に偶然出会った。佐々木監督は天皇陛下から「おめでとう。良い成績で良かったですね」とお声をかけられ、こう答えている。

 「ロンドンオリンピックでも、チャンピオンの力を国民の皆様にお伝えできればと思っています」と。

 その佐々木則夫監督の今後が注目されている。目的達成の実力が高く評価されているからだろう。オリンピックの引き分け指示を公言し、フェアプレーでないという物議を醸したが、私はトーナメントで引き分けにできる実力があっての駆け引きは、戦略のひとつ、フェアな戦いだと思う。監督は勝ち進む過程を熟考し、全責任を負ってチームを指揮している。「なでしこジャパンは、ロンドンオリンピックで絶対に勝たなければならない」と、佐々木監督は自身を追い込んでいたのだ。

 Jリーグが始まって間もない頃だった。当時人気絶頂だった三浦知良、ラモス、北澤豪などヴェルディの主力メンバーが出場すると聞いて、Jリーグ担当の私はアジアクラブ選手権を中継すると決めた。中継当日、私はメンバー表を見て大会運営本部に「約束が違う!!」と怒鳴りこんだ。だが担当者は「監督が決めました。変えられません」の一点張り。三浦選手らはベンチ入りさえしていなかったのだ。

 騙されたのではない、私に知恵が無かったのだ。長いJリーグのシーズンのほか、日本代表戦、リーグ戦、カップ戦などを戦う主力選手の戦力を温存させる監督の決断だった。チームのためとわかるだけに、サポーターにも不満はなかった。

 ホームゲームでも勝てないチームの監督記者会見の雰囲気は沈痛だ。「どうしても今日は勝ちたかった」と、顔を赤くして語る監督の会見では記者の質問も出ない。「今日は勝つ!」と信じて観戦に来た多くのサポーターも、失点を覚悟に捨て身で攻め上がる術もなく、嘆きの吐息が漏れるシーンの連続に、「勝つ気があるのか」と落胆するばかり。監督への怒号も飛びかう。

 園遊会で天皇陛下が「ずいぶん練習されたんでしょうね」とお声をかけられると「はい、監督のもとたくさん練習しました」と、澤選手は自信をもって答えている。

 選手の力を引き出すのも監督の仕事だ。

 

 


<筆者紹介>

堀田 壽一(ほった じゅいち)

愛知大学経済学部卒業。NHK入局。報道カメラマンを経て、NHKスペシャル「アフリカに架ける橋」「飢餓地帯を行く」「呉清源」など幅広いジャンルでカメラマンとして活躍。スポーツも各種目を取材、スポーツ報道センターチーフプロデュサーとしてサタデースポーツ、サンデースポーツ副編集長を務める。オリンピックはリレハンメル、アトランタ、シドニー、サッカーは1998年のフランス大会を現地取材。特にJリーグは1983年から取材を続けている。1997年、NHK退職後、関連会社でスポーツ番組制作に参加。2007年からフリーランス・スポーツプロデューサー。日本トップリーグ連携機構マネージメント強化プロジェクトアドバイザー、NPO法人スポーツ見物協会会員。

 

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