HOME » NEWS TOKYO バックナンバー » 【対談】道路清掃の維持管理から災害対応まで
特集
2012年11月20日号

 

 首都東京の重要な都市基盤である道路は、円滑な自動車交通により首都圏の生活・経済を支え、災害時の緊急車両の通行や避難道路、さらに延焼遮断帯として人々の生命・財産を守る機能など、その果たす役割は極めて大きい。都市の景観や風格を維持するためにも、日常の維持管理や道路清掃等が非常に重要だが、その業務を着実に実行し、高い評価を受けているのが「一般社団法人 東京道路清掃協会」だ。同協会は会員各社に対して路面清掃の技術・安全研修を実施し、業務のレベルアップを図っているほか、近年は、路面清掃車の「親子試乗体験ツアー」、東京マラソン前日の道路清掃など、PR活動、ボランティア活動にも積極的に取り組んでいる。震災発生時の緊急対応をはじめ、災害対策でも大きな役割が期待されている同協会の業務内容、東京都との連携など今後の課題について、村尾公一・東京都技監と蛭田信宏・東京道路清掃協会会長に話し合ってもらった。


蛭田会長 本日はご多忙のところ、お時間をいただきありがとうございます。また、日頃から当協会にご理解、ご指導いただき、厚くお礼申し上げます。

村尾都技監 こちらこそ、協会の方々には、日頃から道路清掃・美化の事業はもちろん、東京マラソンでのボランティアや親子試乗体験ツアーなどで道路事業をPRしていただくなど、ご協力にたいへん感謝しております。

蛭田会長 せっかくの機会ですので、改めて協会の生い立ちについて、若干お話させていただきたいと思います。
 当協会は、昭和39年、東京オリンピックを契機に道路清掃の重要性が高まったことで、新規事業者が相次いで誕生する中、適切な業務遂行を目指すとともに、よりよい発展を図るため、業界有志が自主的に集まって発足した団体からスタートいたしました。
 その後、昭和41年に、東京都関係業者の「東京道路美装協会」と建設省関係の「日本道路清美協会」のふたつの団体が設立され、活動を開始しました。
 昭和49年には、道路整備の進展と事業の拡大、会員の増加もあり、組織強化と事業内容の充実、さらなる発展を期して、「東京道路清掃協会」に名称を変更しました。昭和51年には、当協会の事業の取り組みである「公益に寄与している」ということが高く評価され、東京都知事から民法第34条に規定された社団法人として許可を受け、「社団法人 東京道路清掃協会」が発足しました。
 なお、本年4月からは、国の法人改革関連3法案の施行に伴い、「一般社団法人 東京道路清掃協会」となり、活動を開始、現在に至っています。
 現在、協会の会員数は26社。総従業員数2千人余、車輛保有台数は400台、そのうち、ロードスイーパーは80台を所有しております。

村尾都技監 前回の東京オリンピックの頃から活動を始められ、道路清掃についてご協力いただいてきたことに改めて感謝したいと思います。協会の業務内容と設立した意義をもう少しご紹介いただけますか。

蛭田会長 当協会は、道路及びその付帯施設について、「道路は広く美しく安全に」をモットーに、一般の美化意識の向上と、それら環境整備に関する技術の向上と改善等を図ることによって、 公共に奉仕することを目的に設立した団体です。
 具体的な主な事業内容としては、①道路美化意識啓発普及事業の実施と普及宣伝紙の発行等、②道路の環境整備、交通公害防除運動に関する協力、③道路等の清掃維持管理に関する技術向上、安全確保の調査研究及び講演会、講習会開催と道路環境改善に関する情報・資料の収集等、⑤災害時における関係行政機関に対する協力―を行っています。
 また、夏には東京都、東京都道路整備保全公社と連携して、親子体験ツアー及び運転技術講習会を実施しているほか、秋には、安全研修会、冬には東京マラソンボランティア活動等を行っています。
 昭和39年に自主団体を設立して以来、昭和51年には社団法人化し、一貫して都道、区道の道路清掃事業を通じて、東京都のご指導のもと歩んできており、平成16年からは、建設局の所管のもとで、当協会員が受託事業を実施して今日に至っております。
 こうした長い事業受託の歴史の中、東京都をはじめ、都民、利用者の皆様から一定のご評価をいただいてきたと思っております。
 お陰様で、一昨年、昨年と「CCI東京」(魅力ある建設事業推進協議会)の技能者顕彰で受賞者を出しており、本年もエントリーしております。これは都技監のアイディアで業界の後押しをしていただいている制度ですが、従業員、オペレーターに明るい陽が射したと、本当にうれしく思っています。

「夢のみち」親子試乗体験ツアーの様子

「夢のみち」親子試乗体験ツアーの様子

 また、東京マラソンボランティアとして、マラソンがスタートして以来、6年間連続で、前日にマラソンコースの清掃のお手伝いを実施しております。これに対しても、東京都から高い評価をいただき、本年3月には感謝状をいただきました。
 さらに、今年で3回目となりましたが、8月には、三輪スイーパーの親子試乗体験ツアーを東京都、東京都道路整備保全公社と共催で開催し、親子の参加者からご好評をいただいております。
 また、例年11月には、東京都のご協力をいただき、安全研修会を開催しております。
 こうして協会が大きな事業に取り組むことができるのも、日頃からの道路清掃事業を通じた道路美化や道路環境の向上への東京都のご支援、ご指導の賜物であると深く感謝を申し上げる次第です。

村尾都技監 昨年3月11日の東日本大震災以降、各界において防災への意識、取り組みが大きな課題となっています。協会のほうでもいろいろ考えておられると思いますが、その辺りをご紹介いただけますか。

東京マラソン前日清掃(日比谷通りにて)

蛭田会長 協会の事業としては、東京都からの委託を受けて、日頃から深夜に道路清掃事業を行っていますが、その際、都道の路面や沿道の工作物について異常がないか、常にチェックしています。
 協会としては、今後も社会貢献活動を積極的に行っていきたいと思っております。防災への取り組みについても、東京都との連携のもと、何かご協力できないかと考えています。

村尾都技監 とくに深夜に清掃していただいているということで、我々がなかなか気づかない点などに、協会の会員の皆さんが気づいていると思いますし、そういう情報を有効活用できれば、我々の日頃の業務はもとより、防災面でも非常に力強い支援がいただけると考えております。
 協会の方々と我々の道路保全・補修事業が連携できるか、また、災害時の対応についても、どのような形で協力できるか検討していきたいと思っています。

蛭田会長 本日の段階ではまだ、ひとつの想定ですが、平常時には、先行車や散水車などの走行に伴って、路面の異常、街路灯の倒壊、標識柱の倒壊、ガードレールの破損など、道路交通に支障があると判断できる状況を発見したら、東京都(深夜は東京都道路整備保全公社)の都道管理連絡室に直ちに連絡するといったことが考えられます。
 例えば、道路陥没など危険な状況を発見した場合には、直ちに東京都に連絡するとともに、穴の手前にコーンを設置するなどの緊急対応が可能になります。また、ガードパイプが車道に飛び出していれば、手前にコーンを置くなど、これも緊急措置ができると思います。
 さらに、道路付属物や道路施設の情報がデジタル化されていれば、地点を含めて、東京都に同時に知らせることが可能となります。今後、東京都と事務的に詳細を詰めてまいりたいと思っていますので、よろしくお願いします。

村尾都技監 私どもでも、例えば道路のガードパイプや街路灯にICタグや二次元バーコードをつけたり、GPSを活用したりして、どこの場所か位置確認ができる仕組みづくりをやっていこうと思っていますので、協会とも情報を共有化していきたいですね。
 都道は24時間、365日使われていますので、今お話しされたようなことができれば、いっそう安全が確保でき、非常にありがたい提案だと思います。

道路清掃の実際
※クリックすると拡大されます

蛭田会長 災害発生時についても、いくつか想定が考えられると思います。例えば作業中に震度5強以上の地震が発生した場合、沿道建設物や工作物が破損・倒壊している可能性があります。
 この場合、協会会員事業者は、まず、道路左側に作業車を寄せて停車、そして、作業員相互の安否確認を行い、とくに負傷者がいなければ、東京都の建設事務所や会社と連絡をとり、道路点検など道路の被害状況の把握を行うといったことが考えられます。
 また、点検中でも簡単な落下物や樹木などはすぐに除去することができますし、一定の安全確認の後にスイーパーをかけて、路面をきれいにすることも可能ではないかと考えています。
 路面が土砂等で汚れている場合は、散水車で水を撒き、一定程度きれいにすることもできますし、少し時開が経過し、落ち着いてきた段階では、沿道で生活用水が必要な場合、散水車を活用して生活水を供給することも考えられます。これは平成16年の新潟県中越地震のときに、私どもが支援に行った経験があります。

村尾都技監 散水車にはそのような活用方法もあるのですね。

蛭田会長 一方、東京都との連絡手段としては、防災無線の活用などが課題となりますが、直接の情報連絡のため、先行車を使用することなども考えています。
 こうしたアイデアについては、今後、東京都のご指導のもと、実現の可能性の高いものから盛り込んでいきたいと考えておりますので、よろしくお願いします。
 また、会員が自宅や出先にいるときに災害が発生した場合ですが、各社の防災マニュアルに沿って行勤してもらうことになっています。
 例えば、自分自身や家族の安否確認をした後、会社、営業所や作業所に連絡を入れ、何時間後に会社または、近隣の基地に行けるか連絡します。その上で、各社が何人くらいの社員が作業に携われるか、あらかじめ決めておきます。そして他社であっても、応援に回れる人は臨機応変に 対応することになっています。
 その一方、協会だけでは対応が難しい課題もあります。
 まず、災害時には、スイーパーなどの通行は特別許可されたものとして、区部、多摩おにいては自由に走行できるようにしていただきたいということです。そのため、都や警察に事前許可を受けられるよう、相談していきたいと考えています。
 作業車の燃料の優先確保についても、ガソリンスタンドの給油券的な扱いを検討していく必要があります。
 それから、仮置き場を含めた土砂捨て場の確保を事前に指定しておくことも検討課題です。
 さらに作業経費については、災害発生時は協会各社が立替え、後に精算するという、災害復旧手続きの事前確認のような仕組みもつくっていただきたいですね。
 以上、東京都と東京道路清掃協会が連携して、都民の生命・財産を守り、都市活動を早期に復旧できるよう、相互が協力・連携して取り組んでいけるよう協議させていただければと考えています。

東京道路清掃協会では安全研修会を開催

安全研修会を開催

村尾都技監 災害時はいろんな想定外のことが起きますし、我々も直接動かせる部隊は限られていますので、ご提案のように、協会が中心となって災害時の取り組みを都と連携して決めていただければありがたいですね。
 とくに事前許可などは各会社単位で申請が出されても、警察や我々道路管理者がなかなか対応できない面もありますから、ぜひ協会にまとめていただきたいですね。
 今後、事務的にきちんと積み上げて、協定締結に向け、早急に協議していきたいと思っています。
 また、こういう機会を通じて協会の将来のあり方がどういう方向に向かっていくかという考えがありましたら、ぜひ、ご披露願います。

蛭田会長 先ほどは、地震を例にあげて、話をさせていただきましたが、昨今、富士山の噴火も心配されているところです。鹿児島の桜島噴火による降灰の路面清掃では、三輪スイーパーが大活躍しました。先日も当協会に何台あるか問い合わせが来たところですが、協会としては、そうした噴火災害時に、早期に復旧ができるよう出動態勢を整えていく予定です。

村尾都技監 降灰への対応となると、まさに協会の独壇場でしょう。都も地域防災計画で降灰対策は盛り込んでいるものの、これからは具体的な対策について議論していく必要があるでしょうね。

蛭田会長 通常の清掃事業時の安全点検の充実や沿道や、路面の正常・異常の点検回報の提供などについても、東京都のご指導をいただきながら、研究していきたいと考えています。
 そして、協会の事業活動についても、公益的な活動のいっそうの充実を図り、従来にも増して、東京都民の皆様に喜んでいただけるよう 協会の運営に尽力していく覚悟です。

村尾都技監 東京都の道路保全の職員も定期的に巡回はしていますが、協会会員のオペレーターの方々は、日々、実際に現場を見ていますから、道路の状況を一番よく分かっていると思います。
 お互いが車の両輪として協力・連携することで都民に提供するサービスレベルを上げることができると思いますので、引き続き、お力添えをよろしくお願いします。

 

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