フランス料理には地域の名称や人物名などが、そのまま付けられるものがとても多いとか。一般的に知られているもの、あるいはまだまだ知られていないフランス料理についての由来・歴史などを、ARGO総料理長の山下シェフが紹介します。
第9回 人工的に作り出された脂肪肝 “フォアグラ”
今回は、世界三大珍味として有名な「フォアグラ(Foie Gras)」についてお話します。
「フォアグラ」という言葉を聞いたことはあっても、「フォアグラって何?」と聞かれると、正確に答えられる人は少いのではないでしょうか。
フォアグラとは、ガチョウやカモなどに必要以上にエサを与えることにより、人工的に作り出した脂肪肝です。もともとガチョウやカモの祖先は渡り鳥で、エサ無しで長距離飛行に耐えるエネルギーを貯蓄しておく必要があったため、肝臓に脂肪を貯め込む性質があるのです。
はじめてこの脂肪肝を食べた人は、あまりにも美味しくて、これを人工的に作り出せないか考えたのでしょう。その歴史は古く、古代ローマ人が干しイチジクをガチョウに与えて飼育し、その肝臓を食べたのが始まりと言われていますが、現在はイチジクに代わって、栄養価の高いトウモロコシが使用されています。
では、どのようにトウモロコシをガチョウやカモに与えるのかというと、消化を良くするために柔らかくなるまで蒸したトウモロコシを漏斗で強制的に胃まで詰め込む、強制給餌(ガヴァージュ)を1日に3回繰り返します。これを1カ月続けると歩けなくなるほど肝臓が肥大し、フォアグラとなります。
皆さんがレストランでよく見たり食べたりするフォアグラのテリーヌは、血管や表面の薄皮を取り除いたフォアグラを塩・胡椒・ワインなどでマリネし、テリーヌ型に押し込み、低温のオーブンで焼いた後、冷やしたものです。
<山下敦司プロフィール>
フレンチレストラン「アルゴ」(千代田区麹町)総料理長。
服部栄養専門学校卒業後、銀座「フランス料理清月堂」、大阪欧風菓子「ケンテル」を経て、1995年渡仏。
エクス・アン・プロヴァンス「ル・クロー・ドゥ・ラ・ヴィオレット」(ミシュラン二ツ星)、パリ「ル・ディヴェレック」(二ツ星)、アヌシー「オー ベルジュ・ド・レリダン」(三ツ星)、ロアンヌ「トロワグロ」(三ツ星)、パリ「ピエール・ガニェール」(三ツ星)と数々の名店で部門シェフを務め、クラシックから最先端のフレンチまで幅広く研鑽を積む。
2000年に帰国後は、ガニェール氏の推薦により「ル・コルドン・ブルー・パリ」にて6年半、料理講座教授。
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