HOME » トップインタビュー一覧 » トップインタビュー Vol.22 東京都議会議長 田中良氏
インタビュー
2009年10月20日号
東京都議会議長 田中良氏

都民の代表として都政を考え、
毅然とした態度で石原都政に臨む

東京都議会議長

田中 良

 都議会民主党の顔として、毅然とした態度で石原都政に臨んできた田中良氏。今年7月12日に投開票が行われた議会選挙で民主党が圧勝。自民党以外の党からは44年ぶり、史上最年少で、東京都議会議長に就任した。
 治安や防災、福祉、雇用、環境問題などの重要課題が山積している東京。これらの課題の解決に向け、どう取り組んでいくのか―。議長としての決意をうかがった。

(インタビュー/津久井 美智江)

政治状況が大きく変わった今こそ、
新しい都政の可能性が追求できる

―自民党以外の党からは44年ぶり、最年少で首都東京の議長に就任されました。率直な気持ちをお聞かせください。

田中 最年少であることと、44年ぶりに野党から選ばれたということは、民主党への政権交代という政治状況を反映、投影した結果であろうと思っています。

 かつての細川政権誕生という政変は、コンクリートされた55年体制という政治体制から大きく変革していこうという節目であり、既存の政治の枠組みの中からはなかなかチャレンジすることができない都政に、私だけでなく若い人たちが挑戦するチャンスを与えました。

 その後、小選挙区制度が導入されて2大政党化という状況が生まれ、政党そのものが離合集散を繰り返してきましたが、その過程で連続して当選してきたのが結果として私だった。

 議長は一人しかいませんから、一人しかいない理由と役割が当然あります。その意味で議長としての自分の存在価値があるかと思います。

―就任されてから現在まで、国政でもずいぶんと動きがありましたが、どのような感想をお持ちですか?

田中 政治状況は、確実に大きく変わりました。その変化というものをどう捉えていくかが、常に問われていると思います。

 与党の方は「たまたま」こうなったという感覚が強いかもしれませんが、私は違うと思っています。安倍さんが参議院選挙で負けて退陣をした時点で、任期満了かそれに近い総選挙になるだろう、つまり都議選が先にくる可能性が高いと思い、この都議選に照準を当てて、党としても都連の役員としても取り組んできた。私としては、この状況をつくるために狙って目指して手を打ってきたということです。

 ですから、議長というよりも民主党の立場で話をしますと、議会上のやり取りで困ることがあるとしても、政治状況としては決して困ることではないと捉えています。ただし、自民党が「たまたま」こうなったのではないということを充分認識した上で、次の再生に向けて立ち上がる戦略を描いたとしたら、民主党にとっては手強いと思っています。

―執行機関と議会の関係はいかがでしょう。

名誉都民顕彰式に出席

名誉都民顕彰式に出席
写真撮影/議会局
※画像をクリックすると拡大表示されます

田中 是々非々ですね。今までは、執行機関の政治的利害と自公の政治的利害の折り合いだけつけば、勝手に行きますという政治だったわけでしょう。ところが民主党が第一党になって、それでは済まない状況が出てきた。

 執行機関であれ各党であれ、お互いの政治的利害があるわけですから、折り合いがつくかどうかは別にして、真摯に協議には応じていくというのは当然のことです。民主党の議員団長という立場で話すならば、我われの政策とか民主党政権の政策に協力し連携して、都民のためになること、国民のためになることだったら、大いに一緒にやりましょうということ。建設的な是々非々です。

―要するに、これまでどちらかというと希薄だったディベートの場というものが、もっと大事にされていくチャンスということですね。

田中 政治的利害というのもあるわけですが、政策論争としてのディベートは絶対に必要です。今はまさに、新しい都政の可能性が追求できる状況にあるんだろうと思います。

―実際、そういったディベートはうまくいきつつあるのですか?

田中 まだ始まったばかりですから、具体的に評価を下す時期ではありませんが、充分に可能性はありますし、お互いの首脳部同士の、まさに政治的な技量・力量・感覚、あるいは戦略というものが絡み合う話だと思っています。

 

都議会議長として
地方分権の理念を進めていく

一人しかいない議長の役割を認識

一人しかいない議長の役割を認識
※画像をクリックすると拡大表示されます

―議長に就任されて、特にこれには全力で取り組んでいこうという課題は?

田中 今、さかんに地方分権が叫ばれていますが、地方自治の向上とか地方議会の向上とかは、最優先で取り組んで行かなければならない課題だろうと思っています。議長として申し上げれば、党派の違い、政策の違い、考え方の違いはあったとしても、地方分権という理念を進めていくということです。

―これから地方分権をどうやって法制化するかという議論が出てくると思いますが、最強の自治体である東京の議長として、何かお考えがありますか。

田中 まず、我われ地方議会とか地方議員の位置づけは、国会や国会議員の家来や選挙時の人足ではないということをきちっと認識する必要があると思っています。

 その上で、地方の声を国政に反映させるためにはどういう制度がいいのかを考えると、議論になっていますが、そもそも日本にはせっかく二院制があるのですから、参議院を積極的な地方分権の代表機関として活性化し、機能させるべく研究してはどうかと思います。例えば、都議会選挙でもあり参議院選挙でもある、知事選挙でもあり参議院選挙でもあるというような選挙制度を作れば、憲法違反にならないで地方の代表が同時に国政に参画できることになりますよね。

 隣の韓国では、首相をやった方が市長になったりしていますし、ソウルの市長は、常に閣議に列席しています。民主化したのは日本より遥かに後のことであるにもかかわらず、首都の首長の発言権は国政上も重みを持って位置づけられているんです。

―国の仕組みとか制度上の問題もあるでしょうけれど、都議会議長としての役割はどこにあるとお思いですか?

田中 こういう時代、状況のなかで、たまたま僕が議長という任を引き受けたわけですから、多少の議論があっても波紋があっても、できる限り前向きにやって、一石を投じていきたいと思っています。

 議長会でもいろんなことをやろうとしているのですが、議長会の背景には地方の代表対民主党という構図があるんですね。

―民主党の議長は何人いるのですか?

田中 東京と岩手と三重の3人しかいません。各県の議長にとっては衆院選で自民党が負けたから気分は悪いかもしれないけど、逆に政権が変わったということは、今まで積み上げてきた、みんなが共有している問題を進めるいいチャンスだと思うんです。ですから、超党派で議員の地位向上とか地方議会の活性化とかを目指して、連携していこうと言っているのです

 

残り1年半の石原都政
フィナーレを飾らせてあげたい

―大名旅行だという批判を浴びた議員の海外視察についてはどうお考えですか。

田中 海外視察のやり方は、いろいろ検討の必要があると思いますが、やはり議員が海外に出かけて見聞を広めることは必要です。せっかく選挙で選ばれて、議席を持つ議員として託されていることの重みを考えれば、そういう視察の機会を積極的に活用して、大いに都政に活かすべきだと思います。

 ただ、各会派ごとに行っているやり方は、私個人の意見としては、再考したほうがいいと思う。共産党も反対していて、いつも参加しませんが、視察自体は否定しないと彼らも言っています。

 東京都議会という冠を付けて行く限りは、本当だったら共産党も含めて超党派で行って、いろいろ視察をしてくるのが望ましいでしょうね。

 かつて行われていた海外都市問題調査団の視察は、円高で予算的にかなりゆとりがあったために、金の使い方が問題になってネガティブな方向に議論が向かったことがありますが、それは実際の視察の必要性とは違う次元の話ですから、切り離して考えなければならないと思います。

―議長就任挨拶で、新銀行や築地などさまざまな問題に言及されましたが、ああいった形の挨拶は今までなかったと記憶しています。

田中 用意されていた原稿があったのですが、新銀行や築地については自分の発言として加えました。その部分をあまり強調すると議長の就任挨拶でなくなってしまいますが、かといってみんなが課題だと思っているのに、ほかの課題を列記しておいて新銀行や築地に触れないのは逆に不自然でしょう。

―決着はつきそうですか?

田中 どういう決着か分からないけれども、決着をつけなくてはいけないという気持ちで臨んでいます。先ほど話したように、今までのように民主党の言うことは全然聞かないという態度で頑なに進むのであれば、これは最後は採決をして決めるしかない。でも、お互いに信頼し合い、話合いをしていけば、新しい可能性や選択肢は出てくると思うし、ぜひそうあってほしいと思う。

 石原知事の任期は後1年半しかありません。政治的にというか常識的には、新銀行はトップダウンで始めて失敗したのですから、辞める前にきちんと決着をつけるべきだと思います。

 私は、民主党の幹事長時代に思ったことはかなりストレートに言ってきました。だからこそ、残り1年半の石原都政のフィナーレを飾らせてあげたいと、個人的には思っているんですよ。

 


東京都議会議長 田中良氏プロフィール

撮影/加藤 ゆみ子

<プロフィール>

たなか りょう
昭和35(1960)年11月4日、杉並区生まれ。明治大学政治経済学部卒業(在学中は雄弁部に所属)。(株)テレビ東京社員を経て、衆議院選挙に出馬するも惜敗。平成3(1991)年、杉並区議会議員選挙で最年少トップ当選。平成5年東京都議会議員選挙でトップ当選、現在5期目。都議会民主党政策調査会長、都議会民主党幹事長、東京都監査委員を経て、平成18年11月、民主党東京都連会長代行に就任。平成21年8月、都議会民主党団長、東京都議会議長に就任。

 

 

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