エアコンの活用を呼びかけ
―環境局長就任に当たっての抱負をお願いします。
私は16年にわたり環境行政に携わり、多くの期間を管理職として組織運営に携わってきました。環境行政の特徴は、社会情勢や自然環境の変化に大きく影響を受けることです。私たちが向き合う課題は年々複雑化しており、これまでの経験や成功事例がそのまま通用しない場面も少なくありません。そのため、常に新しい情報を収集し、状況変化を的確に把握しながら、次の一手を考えることを大切にしています。近年では、クマの出没への対応や中東情勢の影響によるエネルギー価格の高騰など、従来とは異なる新たな課題も発生しています。こうした課題にも迅速かつ柔軟に対応しながら、持続可能な都市・東京の実現に向けて全力で取り組んでいきたいと思います。
―最近ではクマの出没も注目されています。
東京でもクマの出没は重要な課題です。出没後に対応するだけではなく、予防的な対策が必要です。特に多摩地域では、市街地への出没リスクも高まっており、都民の安全確保が最優先になっています。一方で、クマの捕獲に対応できる人材確保という課題があります。都内ではクマを駆除できる狩猟者が限られており、若い世代の担い手の育成が急務になっています。また、住宅地等で緊急対応が必要な場合には、猟友会だけで対応しきれないケースも想定され、警視庁など関係機関とも連携し体制を整えていく必要があります。クマ対策は、都民の安全を守る危機管理の一環として取り組んでいきたいと思います。
―今年も厳しい暑さが予想されています。
近年の猛暑は、もはや自然災害と言ってよいレベルになっています。都では4月初めから暑さ対策の呼びかけを始めました。暑さに体を慣らす「暑熱順化」や、エアコンの点検・準備を早めに行うことの重要性を繰り返し発信しています。また、作業現場で働く方々の熱中症対策として、ファン付きベストや水冷服の導入を支援する補助制度を実施しています。さらに、区市町村が指定した2000か所を超えるクーリングシェルターについて、「東京暑さマップ」で位置情報を公開し、皆様が利用しやすい環境づくりを進めています。
―家庭での暑さ対策で特に伝えたいことはありますか。
高齢者は暑さや寒さを感じる感覚が鈍くなりやすく、本人が気付かないうちに症状が進行してしまうことがあります。喉の渇きを感じていなくても、こまめな水分補給と適切なエアコンの利用を心掛けていただきたいと思います。省エネは重要ですが、まず優先すべきは命を守ることです。無理な節電は避け、ためらわずに冷房を利用してほしい。また、ご家族や近隣の方には、高齢者への声掛けや見守りをお願いしたい。熱中症は周囲の気付きによって防げるケースも少なくありません。日陰ルート検索アプリ等の新しい技術も活用しながら、一人ひとりが暑さから身を守る行動を取ることが重要です。
家庭のCO2削減にまい進
―脱炭素社会の実現に向けた取組についてお聞かせください。
脱炭素社会の実現は、環境局にとって最重要政策の一つです。東京都は「2050年CO2
排出量実質ゼロ」を掲げ、その実現に向けて様々な施策を進めています。運輸、産業、業務、家庭の4部門で進捗状況を見ると、運輸や産業では削減が進んでいる一方で、家庭は世帯数の増加や家電製品の普及などもあり、十分な削減に至っていません。このため、東京ゼロエミポイントによる高効率家電の普及促進や、ゼロエミ住宅の導入支援を進めています。また、既存住宅や賃貸住宅の断熱性能向上も重要な課題です。窓の断熱改修や二重窓の設置への支援に加え、集合住宅オーナーへの働き掛けも強化しています。さらに、太陽光発電設備と蓄電池の導入支援や、新築住宅への太陽光発電設備設置義務化など、先進的な施策にも取り組んでいます。脱炭素は我慢や負担ではなく、光熱費の削減や快適な住環境の実現、健康長寿にもつながります。
―都民へのメッセージをお願いします。
環境問題は遠い未来の話ではなく、私たち一人ひとりの日々の行動が、将来世代の暮らしや環境を左右します。省エネ、リサイクル、食品ロス削減など、日常の中でできる取組は数多くあります。一つひとつは小さな行動でも、多くの人が取り組めば大きな力になります。
また、使用済み食用油を回収して資源として活用する「東京油田」や、小型電子機器から有用な金属を回収する「東京鉱山」など、東京ならではの資源循環の取組も進めています。環境問題は行政だけでは解決できません。都民、事業者の皆様と力を合わせながら、環境に配慮する行動が当たり前になる社会を目指していきたいと思います。
―最後に、局長ご自身の趣味を教えてください。
親子で始めた空手を10年以上続けています。現在は師範代を務めており、休日は空手の時間が多くなっています。空手は心身の鍛錬になるだけでなく、仕事のリフレッシュやストレス解消にもなっています。環境行政も空手も、一歩一歩の積み重ねが大切。その姿勢を忘れず、着実に前へ進めていきたいと思います。