空間情報ソリューションおよびサービスの提供

株式会社インフォマティクス

  • 取材:種藤 潤
GyroEye Holo

左:「GyroEye Holo」を通して見る、現実の世界に施工図面を投影した様子 右:「GyroEye Holo」を装着したときの人物イメージ(写真提供:インフォマティクス)

 日本にある世界トップクラスの技術・技能。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。
 約6年前、この紙面で株式会社インフォマティクスの「空間情報ソリューション」を紹介した。同社ではこのサービスを提供する一方で、最新のクラウド環境やモバイル端末機器を活用し、VR、AR、MR技術などとも連携した同社独自のアプリケーションを開発。新時代の空間情報イノベーション企業へと変貌を遂げていた。

 ここ数年、右上の写真のように、ゴーグル(正確にはスマートグラスと言われる)をつけている人の姿を見る機会が増えた。その人は、ゴーグルをつけることによって、仮想空間にいるような擬似体験や、現実の世界のなかにCGなどのデジタル映像が現れるような擬似体験ができる。それらを可能にしたのが、VR(仮想現実)技術とAR(拡張現実)技術で、ARに関しては、スマートフォンなどのデジタル端末を通して、現実の空間とキャラクターの映像が融合して人気を博したゲームの効果もあり、大人にも子どもにも身近なものになっている。

 技術革新が格段に進んだVR、AR、そしてARがさらに発展したMR(複合現実)技術。MRは実際の実業の世界でも応用され、特に建設・設備・測量分野においては、飛躍的に活用の場が広がっている。その技術にいち早く着目し、業界を牽引しているのが、株式会社インフォマティクスだ。

今年7月に就任した、齊藤大地代表取締役社長

スマートデバイスでどこでも意匠構造確認

 同社が提供するのは、AR技術やVR技術により、建築3Dデータを、スマートフォンなどのスマートデバイスを通して現実の図面に重畳させたり、仮想現実空間のなかでリアルに確認できるシステム「GyroEye(ジャイロアイ)」だ。

 これにより、分かりづらい図面や、建築物などの意匠デザインや構造などを現実の映像の中で同時に確認することが可能になる。また、クライアントの安心感を生むだけでなく、建築施工などを行う企業側の営業や業務の見える化の支援にもつながり、さらにプレゼン、打ち合わせの効率化、シミュレーション、施設管理に幅広く応用できる。その評価は業界内でも極めて高く、2015年には「中小企業優秀技術・新製品賞 ソフトウエア部門」を受賞した。

GyroEye Holo

「GyroEye Holo」を通して見る、現実の世界に施工図面を投影した様子

現場の情報確認だけでなく情報共有、教育にも活用

 そして今もっとも業界で注目されている商品が、「GyroEye」を応用した、「GyroEye Holo(ジャイロアイ ホロ)」である。これは、マイクロソフト社が開発したMR(複合現実)技術に対応した端末「HoloLens(ホロレンズ)」と「GyroEye」を連携させたもので、2D図面や3Dデータを、「HoloLens」を通して実寸で実際の施工現場に投影でき、映像として現れるだけでなく、レンズ越しに見える空間のなかに、朱書きや矢印オブジェクトを配置、共有することもできるという。さらには、現場での「HoloLens」の映像を、遠隔地のPCでもリアルタイムで共有でき、現場に指示を出すことも可能だ。

 このようなハイブリッドな空間情報ソリューションにより、建築現場での施工時の墨出しから出来確認、干渉確認、完成後の維持管理など、様々な業務における生産性向上を図るとともに各種情報を統合的に管理することが可能になり、現場での人材教育にも活用できるという。その結果、2017年からの販売開始以来、すでに約50社がこのシステムを利用している。

写真のように、「GyroEye Holo」のゴーグル越しであれば、天井裏を開けなくても内部の図面や設備情報を確認できる(提供:インフォマティクス)

ITが苦手な人でも利用しやすいサービスを

 創業38年。今年7月に就任した齊藤大地代表取締役社長は、インフォマティクスの生え抜きであり、40歳の若さで会社を率いる。彼は、インフォマティクスの歴史は3つの期間に区分けられるという。

 第1期は「建築・土木CAD」のライセンス販売と設計図面作成支援を中心とした活動期。第2期は、空間情報に特化したソフトウエア会社として、GIS(地理情報システム)を応用した「PC版空間情報システム」のライセンス販売とアプリケーションの開発期。そして第3期は、「空間情報システム」のクラウド、モバイル環境での活用に加え、「GyroEye」を中核としたxR(VR、AR、MRの総称)技術を駆使した空間情報ソリューションの開発販売の発展期である。

 「現在も第1期、第2期の事業を継続しており、その機能及び性能の改善にも努めています。特にGISは自治体、警察、消防など公共分野のお客様が多いので、さらに社会インフラに関わる取引先様を増やしたいと思っています。そして今後は、xR製品の性能向上、機能拡大とともに、GIS技術との融合も図っていく予定です。最近は、ITが苦手な人でも空間情報サービスを利用しやすくなってきましたので、使いやすさにもこだわりたいですね」

 最後に、2020年東京大会を間近に控えていることに触れると、施設の維持管理に「GyroEye Holo」をぜひ活用してほしい、と齊藤社長は語った。

 「大会前は建物や道路などを作ることに注目が集まりがちですが、施設は維持管理が重要です。そこで『GyroEye Holo』を活用し、2020年東京大会のレガシー(遺産)になれば嬉しいです」

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