「未来の東京」に向け都市基盤を着実に整備

  • 記事:大竹 良治

 森記念財団都市戦略研究所が昨年11月に発表した2019年の「世界の都市総合力ランキング」で、東京はロンドン、ニューヨークに次いで、4年連続で世界第3位となった。安定して高い評価を得ていると言えるが、「世界一の都市」を目標に掲げる東京にとって、さらに上を目指すには、ハード・ソフト両面でのさらなる取組みが求められる。東京都は現在、「セーフ シティ」「ダイバーシティ」「スマート シティ」の3つのシティを柱に各施策を推進しており、昨年暮れには東京2020大会後を見据えた長期計画「『未来の東京』戦略ビジョン」が策定されたところ。そこで、同ビジョンから都市インフラに関連の深い、2030年に向けた4つの戦略の概要についてまとめた。

安全・安心なまちづくり戦略

 いつ発生してもおかしくない首都直下地震対策では、発災時の緊急輸送ルートの確保や木造密集地域の解消に向け、重点的・重層的に不燃化・耐震化を推進する。木造密集地域の不燃化は、重点整備地域について、不燃領域率を2025年度までに70%に向上させる計画だ。

 さらに、「東京都耐震改修促進計画」を改定し、改修に対する補助要件の緩和・補助の拡充などにより、特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震化の取組みを推進する。

 近年、激甚化している台風・豪雨災害への対応では、河川の護岸や調節池、下水道の貯留施設の整備をいっそう推進するとして、2025年度までに調節池貯留量を256万m³から360万m³に拡大、さらに、2030年度までに、新たな調節池を事業化する。

 また、「豪雨対策アクションプラン(仮称)」を策定し、河川整備、下水道整備のさらなる推進、貯留浸透など流域対策の「見える化」を進める。

 小池知事が公約に掲げている無電柱化は地震や風水害による電柱倒壊を防ぐとともに、災害時の円滑な輸送の確保につながる。その推進に当たっては、重点整備エリアを環状7号線内側まで拡大、区市町村道を含めた面的な展開や島しょ部での取組み推進など、施策を新たなステージに高め、先端技術の活用やコスト縮減に向けた事業者との連携による技術開発にも取組む。

 このほか、ICTなど先端技術を活用した犯罪の未然防止や、5Gネットワークの活用による交通信号の高度化、自動運転の普及を見据えた交通環境整備など、交通事故から都民を守る取組みも進める。

都市の機能をさらに高める戦略

 東京の活動を支える幹線道路や公共交通ネットワーク、空港・港湾・物流機能のさらなる強化、安全な道路空間の確保などに取組む。

 2030年度に向けた政策目標では、主要な骨格幹線道路の整備率を、区部放射で71%から76%に、区部環状で74%から83%に、多摩南北で76%から92%に、多摩東西で69%から79%に向上させるとしている。

 骨格幹線道路のうち、三環状道路については、その完成に向け、現在未整備となっている区間の事業化を推進する。外環道は関越道〜東名高速間の早期開通を、圏央道は早期全線開通及び4車線化に向けた取組みを進める。

三環状道路の整備を推進

 踏切事故や交通渋滞、地域の分断の原因となっている踏切解消では、道路と鉄道の連続立体交差化事業を進め、2018年度までに除却した395箇所を2030年度には累計455箇所にまで拡大する計画だ。

 道路交通の円滑化では、高速道路会社間の境目に位置する本線料金所の撤去や、混雑状況に応じた料金施策の導入に向けて、ETCのさらなる普及促進を国に求めていく。

 交通渋滞の解消では、都市計画道路の整備による道路ネットワークの形成等により、2030年度時点で、平均旅行速度が10㎞/h以下の渋滞延長を約3割削減する。

 自転車通行空間の整備では、2018年度の延長236㎞から、2030年度に約400㎞まで拡大する。

 このほか、鉄道利用者の安全確保に向け、ホームドアの整備を地下鉄で2025年度に100%達成を、JRと私鉄駅で2030年度に約6割にまで引き上げるとともに、案内サインの統一も進める。

水と緑溢れる東京戦略

 気候変動の影響抑制やゆとりと潤いのある生活を実現する観点から、都市における水と緑の重要性はますます高まっているとして、公園や緑地などさまざまな緑を増やし、水辺を豊かにする取組みを進める。

 緑創出の取組みでは、貴重な緑を守り、あらゆる場所に新たな緑を創出することで、快適な都市空間を創出するとともに、持続可能で魅力ある都市づくりを推進する。

 農地の保全では、「農のある風景」を将来に引き継ぐため、「農の風景育成地区」の指定をさらに促進し、2019年4月時点で3箇所の指定を、2030年度には10箇所にまで増やす。

 都民が日常的に水辺に親しみ、水辺とともにある生活を楽しめるよう、地域の個性を生かしたまちと一体となった水辺づくりを推進する。具体的な取組みでは、隅田川テラスの開放を、2018年度末時点の32・9㎞から、2030年度には両岸47・5㎞、すべてに拡大する。

 アオコの発生による水質悪化が問題となっている外濠の水質改善では、長期的には外濠に通水されていた玉川上水の水を元の多摩川から引き、本来の姿によみがえらせる可能性を展望しつつ、当面は外濠に導水するための水源・水量を確保するとともに、暗渠区間の改良等を検討する。

 さらに安定給水の源となる水源林の保全管理やシカ被害対策を推進するとともに、荒廃した民有林の購入、地元自治体等との連携など、民有林再生に向けた取組みを推進することで、水源かん養機能等の森林が持つ機能を高め、河川流量、小河内貯水池の保全を図る。

ゼロエミッション東京戦略

 気候変動による影響が深刻となり、世界全体が危機的な状況にある中、東京都は2050年までに、世界のCO2排出量実質ゼロに貢献する「ゼロエミッション東京」を実現すると宣言しているところ。

 その実現に向け、住宅・事業所のゼロエミッション化を強力に推進するため、省エネ・再エネ設備を備えた住宅・事業所の導入促進、エネルギーの地産地消、水素エネルギーの利活用を進める。

 さらに自動車のZEV(ゼロエミッションビークル)化、充電設備や水素ステーションなどの環境整備の推進、自動車メーカーとの連携による技術開発等で、「ZEVが行き交うまち」の実現を目指す。ZEV社会の到来に向けた機運醸成では、官民連携で多面的な取組みを展開する。

 サステイナブルな循環社会への転換では、ライフスタイルの変革による廃プラスチックや食品ロスの発生抑制、区市町村と連携した分別回収・リサイクルの徹底などに取組む。

 廃プラスチックの焼却量の削減に向けては、ワンウェイプラスチックの使用削減と容器包装プラスチック等のリサイクル拡大を通じて、家庭と大規模オフィスビルからの排出を削減する。これにより2017年度で70万トンあった焼却量を2030年度時点で4割減の40万トンにまで削減する計画だ。

 食品ロスについては、2000年度の76万トンから2030年度時点で38万トンと半減を目指す。

 このほか、革新的な技術・ビジネスモデルによるプラスチックの水平リサイクル(同種の製品へのリサイクル)や未利用バイオマスの活用など、高度な循環利用を支援・促進する。また、再生プラスチックや海洋分解性プラスチックの利用など、環境配慮設計を促進していく。

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