第2回 東京牛乳―搾乳ロボットで快適に暮らす牛たち
取材協力/江戸東京・伝統野菜研究会代表 大竹道茂
大竹道茂の江戸東京野菜通信 http://edoyasai.sblo.jp/
「東京牛乳」は多摩地域の酪農家から集乳した生乳だけで作るTOKYOブランド。その生産者の一人、清水陸央さんは、瑞穂町で135頭の牛を飼育している。
清水さんの牧場で最も画期的なのは、東京では1軒だけというコンピュータ管理のロボット式搾乳システムだ。
24時間、自動的に搾乳してくれるこのシステムは、牛の首につけたICチップで1頭1頭の牛を管理。牛たちはおっぱいが張ってくると自分で搾乳ロボットのところに行き、餌を食べながら搾乳してもらうという。
「導入したのは5年ほど前。このシステムのすごいところは、どの牛が何度来て、どのくらいの乳を出したか管理してくれること。餌につられて何度も入ってきても搾乳しません」と清水さん。機械の前で見ていると、確かに牛たちが順序よく並んで搾乳してもらうのを待っている。
「牛たちが機械に慣れるまでは1月以上かかりましたが、順調に搾乳できるようになると作業時間が大幅に短縮され、今では家内、息子、従業員とで交代で休みが取れます」
1日に搾る生乳の量は1頭当たり約33㎏。1日およそ1900㎏を出荷している。牛たちは搾乳してもらいたいときに機械のある場所に移動するため、牧場内は基本的に放し飼い。また、暑さに弱い牛たちのために、夏場は牛舎の上部から扇風機で水を霧状にして噴出している。そのためストレスが少なく、清水さんが危惧する牛たちの乳房の病気も減ったという。
都内で牧場を経営する者にとって特に気を遣うのは臭い。清水さんの牧場周辺も住宅が多いため、餌の配合を変えたり、糞尿でできた堆肥を自分の畑に撒き、飼料用のとうもろこしを作るなどしている。
「周辺から苦情が出ないよう、牛舎建て替え替の際には事前に住民の方々に承認をもらいました。それでも搾乳時や集乳車の機械の音がうるさいと言われることもあります。ある酪農家は発情時の牛にはさるぐつわをしているそうです」
消費者に良質な牛乳を届けるためには、牛だけでなく、周辺にも細心の注意を払わなければならない都下の酪農家の苦労がある。
本記事でご紹介した「東京牛乳」を使った料理「東京牛乳とトマトの味噌スープ」のレシピはこちらをご覧ください。