

第3回 「伝統野菜を残す」強い使命感で作られる
馬込半白きゅうり
取材協力/江戸東京・伝統野菜研究会代表 大竹道茂
大竹道茂の江戸東京野菜通信 http://edoyasai.sblo.jp/

「孫におじいちゃんの作った野菜が一番おいしいと言われるのがうれしい」と中村さん
国分寺で「中村農園」を経営する中村安幸さんは、この地で9代続く農家。およそ1ヘクタールの農地に東京うど、トウモロコシ、トマト、キュウリ、ジャガイモ、ブロッコリーなど、さまざまな野菜を栽培している。
東京うどと同じく江戸東京・伝統野菜の「馬込半白きゅうり」の栽培を始めたのは5、6年前。馬込半白きゅうりを復活させようと発起した同市内の農家・小坂良夫さんの呼びかけで「国分寺地区」の生産者5名で直売所のほか築地市場へも共同出荷している。
土には落ち葉と自家製の米ぬか、近隣の小学校の給食の残さいを元にした堆肥を配合。馬込半白の場合、定植時に1度農薬を使うだけで、あとは一切使用しないため、病気、害虫には人一倍注力する。
もともと漬物用として作出されていた馬込半白は、今も中村さんらが漬物メーカーの「銀座若菜」から出荷を依頼され、“馬込半次郎”という名で販売されている。

娘婿の克之さんも収穫を手伝う
「孫たちは野菜の花を見て、何の野菜か理解し、旬の時期もちゃんと覚えているんですよ。偉そうなことを言っても、人間まずは“食”ですよね」と中村さん。「自分の手で作った野菜を子どもたちに食べさせたい」と娘婿の克之さんも3年ほど前にサラリーマンから一転、就農した。安幸さんの後継者としてイチゴの高設栽培やホームページ、ツイッターなど、新しい取り組みも始めている。
病気に弱く、品質も揃いにくい馬込半白きゅうり。それでも作り続ける理由を尋ねると「今まで作られてきた伝統野菜を次の代に残していくのが私たちの使命。ただそれだけです」とやさしい眼差しの中にも強い意志がうかがえた。
生産者にこの“思い”が続く限り、江戸東京・伝統野菜が絶えることはないと感じつつ、そのために消費者側に求められるのは何かということを改めて考えさせられた。
国分寺中村農園 URL : www.naks-farm.com

「半白」の名の通り皮の半分以上が白い。旬は6月中旬から7月下旬と短い
本記事でご紹介した「馬込半白きゅうり」を使った料理「馬込半白きゅうりと厚揚げのあんかけ」のレシピはこちらをご覧ください。