第6回 早稲田に生きていた日本の香味野菜
早稲田ミョウガ
取材協力/江戸東京・伝統野菜研究会代表 大竹道茂
大竹道茂の江戸東京野菜通信 http://edoyasai.sblo.jp/
爽やかで独特の風味、酢の物や薬味としてはもちろん、天ぷらや漬物などにも料理されるミョウガ。
江戸時代、弊社のある早稲田周辺はミョウガの産地として知られていたが、明治15年に現在の早稲田大学が創立されると、その界隈は宅地化が進み、水田とともにミョウガ畑もなくなってしまった。
しかし、「早稲田ミョウガ」は今も早稲田に生きているのではないかと、江戸東京・伝統野菜研究会代表の大竹道茂さんが呼びかけ「早稲田ミョウガ捜索隊」を結成。早稲田周辺を捜索すると、想像以上に多くのミョウガ生息地が見つかったという。
ミョウガは地下茎で増える。そこで早稲田に生息していたミョウガの地下茎を譲り受け、今年の春、練馬区石神井で長年ミョウガ農家を営んでいた井之口喜實夫(いのぐちきみお)さんに託したのである。
井之口さんは農家の3代目。現在はキャベツ農家だが、昭和25年から平成10年まで10アールほどの畑でミョウガを栽培し、市場にも出荷していた。しかし、根茎腐敗病などの病気に弱いことや水耕栽培のミョウガに押されるなどして栽培量も減少。市場に出荷することは中断していた。そんな時に持ち上がった、早稲田ミョウガ復活の話。
賛同した井之口さんも、早稲田周辺でミョウガ捜索に加わった。
井之口さんの畑を訪れると開口一番「今年は9月の異常な暑さでダメージを受けたね」と残念そう。比較的、暑さや寒さにも強いとされているミョウガだが、今年の猛暑で葉が赤く変色してしまったという。乾燥を嫌い、日陰を好むミョウガ。「朝日が強く当たる場所に植えたからね。来年は場所を移します」とも。
それでも早稲田から移植したミョウガは、今秋15株にまで増えた。有機肥料を使うなど、元気なミョウガが育つよう井之口さんが丹精込めた結果だ。
「今はとにかく早稲田ミョウガの株を増やしたい。来年は50株に増やすことが目標です」と早稲田ミョウガ復活に意欲的だ。
取材の日は9月25日、ミョウガは夏の食べ物だと思っていたが「春に植え替えをすると、9月下旬から10月の中旬ごろに収穫時期を迎える」のだそう。収穫したミョウガを前に「水耕栽培は見た目はいいけど、露地物は香りが違うでしょう」と井之口さん。ツヤツヤで大振りのミョウガから漂う香りに、旬の野菜の良さを改めて実感した。
本記事でご紹介した「早稲田みょうが」を使った料理「早稲田みょうがの混ぜご飯」の作り方はこちらをご覧ください。