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らくがきスポーツカフェ372013年08月20日号
蒸し暑かった空気が急に冷え始め肌寒くなり、しばらくすると雨が降り出した。いつもは記者席から動かないが、降り方がすごい勢いになり稲妻が走ったので「このままではずぶ濡れになる」と、あわてて屋根のある場所まで逃げた。ピッチでも審判が手をふって、選手に引き上げる様に指示していた。
「落雷の危険があるため、試合は中断します」などと場内アナウンスが流れた。災害取材の経験から、その時の雨は1時間に50㎜以上だと感じていた。こんな雨が一昼夜続けば災害が発生するだろう。
サッカーは雨が降っても試合を行う。年に一回ほどは雨で中止もあるが、台風などによる事前の中止決定が多い。
だが、近頃多発する「ゲリラ豪雨」は何だか予測が難しい。キックオフしてから豪雨になり、しかも1時間以上続くから厄介だ。
最近は、気象庁のレーダー・ナウキャスト(降水・雷・竜巻)をパソコンで見てから取材に出かけるようにしている。雨雲の予測が動画で見られるからだ。
その日、7月27日午後4時頃にレーダーに写っている雲はなかった。注意として雷雲が発生するとなっていたが、ビニールのポンチョを取材バッグから取り出し、味の素スタジアムに向かった。
1万8千人のサポーターは、屋根の下の濡れない席に移動していた。降っていた雨は、小さな傘ではずぶ濡れになるほど激しかった。同じ日の隅田川の花火大会は、花火を打ち上げてから30分後に降り始めた豪雨のため、中止となっていた。
放送局では「緊急事態」に備え、警報の種類別に告知文の原稿がスタジオに用意されている。アナウンサーが身一つでスタジオに駆け込んで、すぐに放送できる備えだ。
スタジアムも同じだろう。落ち着いた声で「落雷の危険がありますので、帰らないでスタジアムに留まってください。スタジアムは避雷針があり安全です」「雷雨はもうすぐ収まります」という情報が何度もアナウンスされた。
情報を知ると、観客はサッカー談義を始め、ゲリラ豪雨の雨粒もカクテル光線に染まってきれいに見えた。
そして55分後、プールのようなピッチで試合が再開された。
ゲリラ豪雨も半端じゃなくなった。「これまでに経験のないような大雨」が降ると警戒を呼びかける。これからは傘だけでなく、ビニールポンチョも必ず持参すると決めた。
<筆者紹介>
堀田 壽一(ほった じゅいち)
愛知大学経済学部卒業。NHK入局。報道カメラマンを経て、NHKスペシャル「アフリカに架ける橋」「飢餓地帯を行く」「呉清源」など幅広いジャンルでカメラマンとして活躍。スポーツも各種目を取材、スポーツ報道センターチーフプロデュサーとしてサタデースポーツ、サンデースポーツ副編集長を務める。オリンピックはリレハンメル、アトランタ、シドニー、サッカーは1998年のフランス大会を現地取材。特にJリーグは1983年から取材を続けている。1997年、NHK退職後、関連会社でスポーツ番組制作に参加。2007年からフリーランス・スポーツプロデューサー。日本トップリーグ連携機構マネージメント強化プロジェクトアドバイザー、NPO法人スポーツ見物協会会員。
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