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仕事に命を賭けて Vol.632013年09月20日号
陸上自衛隊 東部方面後方支援隊 第102不発弾処理隊
第1処理班長 1等陸尉 髙橋 利仁
文字通り、仕事に自分の命を賭けることもある人たちがいる。一般の人にはなかなか知られることのない彼らの仕事内容や日々の研鑽・努力にスポットを当て、仕事への情熱を探るシリーズ。
我々の生活をさまざまな形で支えてくれている陸上自衛隊であるが、おそらく最も身近な危険を未然に防いでくれる存在が、不発弾処理隊だ。今回は都内を中心に不発弾処理を担う現場の責任者に話を伺ってきた。
(インタビュー/種藤 潤)
全国的に見ても東京は不発弾が多い地域
右中の3人が写っている写真の場所は、港区元赤坂。そんな都民の日常に密着した場所で不発弾が発見されることは、さほど珍しいことではないという。
終戦からおよそ70年という年月を経た今でも、実際に国内各地で不発弾が発見され、危険性が高く発見現場での処理が必要な際は各行政区や電鉄会社、警察などが協力し、対応が行われている。
その処理を実際に最前線で行うのが、陸上自衛隊不発弾処理隊である。
同処理隊は、国内でも不発弾が多く発見される可能性があると考えられる4箇所に配置されている。それが、特に戦闘の激しかった沖縄を管轄する第101不発弾処理隊、西日本全域を担う第103不発弾処理隊、九州地域を担う第104不発弾処理隊、そして東京を中心とした関東甲信越地域を管轄する第102不発弾処理隊だ。
「実は東京は、東京大空襲をはじめ、爆弾が多く投下されたこともあり、全国的に見ても不発弾が多く残されている場所です」
そう髙橋1尉が語る通り、同処理隊が管轄する東京を中心とする東部方面隊では、警察からの不発弾発見の通報件数は年間約300件。そのなかで不発弾の危険性が高いなどの判断により、発見現場へ緊急出動を行う件数は、50件前後。週に1度は緊急出動が行われている計算になる。
ちなみに東京都では、警察署から警視庁へ通知され、そこから同処理隊に不発弾発見の通報がされる仕組みになっている。
自衛隊でも最もやりがいを感じられる部隊のひとつ
その東京を中心とする処理現場で指揮を執っているのが、髙橋1尉である。
「不発弾処理は憧れていた仕事。この仕事には本当にやりがいを感じています」
言うまでもないことだが、不発弾は爆発する可能性もあり、まさに生死と隣り合わせの任務。しかし自衛隊内では希望者が非常に多く、狭き門の部隊として知られているという。
「やはり国や国民を守るために自衛官になったのですから、その実感が最も持てるこの仕事は、多くの隊員が希望しており、その現場の指揮を執れることを誇りに思います」
自分の生死よりも隊員・家族や関係者が大切
第102処理隊では、不発弾発見の通報が入ると、まず警察から状況をヒアリングし、緊急対応が必要かどうかを判断。緊急性があると判断したら、直ちに現場に赴き詳細な状況を把握する。
中にはその場から動かすことが危険と判断されるものもあり、その場合はその不発弾の構造や危険度などを分析、過去の実績なども加味して、発見現場においていかに処理を行うかを検討するとともに、現場を管轄する自治体と協議し決定する。
決定された処理方法に基づいて処理に従事する隊員を選定するのが、髙橋1尉の任務だ。
「隊員にはキャリア豊富なベテランから若手まで幅広くいます。処理だけを考えれば、いつもベテラン中心でいくべきですが、この仕事は現場こそが最大の学びの場です。なので、若手に経験を積ませる意味でもベテランと若手をバランス良く配置できるよう常に心がけています」
そして現場に赴き、設計したプラン通り指示し、実行するのも髙橋1尉の任務。さらに、現場で万が一想定外のことが生起した場合の状況に応じた緊急判断も、髙橋1尉に任されている。
「ほんの少しの操作の誤りで、不発弾を爆破させてしまう可能性がありますから、現場に迷いは禁物。安全確実に処理できるように判断するのが、私の最大の任務だと思っています」
とはいえ常に死と隣り合わせの仕事。現場で不安は感じないのだろうか。
「現場では平常心を心がけ、処理に集中しているので、不安を感じている暇はありませんが、強いて挙げるなら、処理を行う隊員・家族、そして不発弾処理には自衛隊以外にも多くの関係者が関わっていますから、最悪の結果とならないよう事故なく無事に処理を終了したいと考えています。私の生死よりも、そのことを常に意識してしまいますね」
- 【プロフィール】
- 1968年東京都生まれ。1987年第31普通科連隊新隊員教育隊(朝霞)入隊、車両整備に従事。2002年普通科から武器科へ職種変換し、2005年幹部自衛官に任官。2008年に不発弾処理の教育を修了、2012年より現職に。これまで東京都を中心に計6回の不発弾処理の現場指揮を行ってきた
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