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仕事に命を賭けて Vol.662013年12月20日号
海上自衛隊 第3航空隊 副長 1等海佐
山形文則
文字通り、仕事に自分の命を賭けることもある人たちがいる。一般の人にはなかなか知られることのない彼らの仕事内容や日々の研鑽・努力にスポットを当て、仕事への情熱を探るシリーズ。警視庁といえば防犯、治安維持などがまず連想しがちだが、救出救助活動も重要な任務だ。機動隊内にレスキュー隊を配置し、東日本大震災でも活躍。そしてさらにその活動を強化すべく、2012年に全国初の専門部隊を設立。その中核を担う人物に、お話を伺った。
(取材/種藤 潤)
ソマリア沖海賊対処での海上の警戒も担う
2013年7月号にて、海上自衛隊が2009年より行っているソマリア沖・アデン湾の海賊対処行動の海面警戒を担った水上部隊の指揮官を紹介したが、今回は上空からの警戒を行う航空隊の指揮官にスポットを当てる。
山形1佐率いる13次航空隊は、総勢約190人体制で2013年6月から約半年にわたり、通常日本の海上で警戒活動を行っている哨戒機「P―3C」により、アデン湾海域を広域に飛行、警戒監視や情報収集などを行った。
10月に帰還したばかりの山形1佐は、安堵の表情を浮かべながら、終えたばかりの任務を振り返る。
「同じ海上の警戒でも、海賊への対応という活動は、日本とは違う緊張感が張りつめていました。日本を遠く離れた場所で数ヶ月間過ごすことは隊員たちに大きなストレスとなったと思います。そのなかで、全員が活動しやすい環境づくりをするのが、司令である私の役割。ですので隊員全員が無事活動を終え帰還できたことは、本当に嬉しいことですし、ホッとしています」
警戒において重要なのは人の“勘”
日本で山形1佐が副長を務める第3航空隊は、海上自衛隊の海上警備を担う航空集団の中核的存在である第4航空群内に設置。同群が担う周辺海域の防衛及び災害派遣・航空救難などの活動において、「P―3C」を運用し活動する主力部隊である。
1日1回、365日休むことなく「P―3C」は出動、北海道周辺海域や日本海、東シナ海を監視、日本の海上の安全を見守っている。
識別は、「P―3C」に搭乗するSS(センサーマン)と呼ばれる対潜員により、水中の音を聴く「ソノブイ」やレーダー、赤外線暗視装置、磁気探知機等を操作することで行われる。
「監視する機器は非常に進歩していますが、最終的に重要になるのは、人の“勘”。一見普通に見える状況でも、キャリアのある隊員はそのなかの異常を察知できるんです」
そして災害現場での警戒活動も、同隊の重要な任務。先日の伊豆大島の台風災害や東日本大震災でも同隊は出動している。
「災害直後の海上の状況確認は、後の救助活動等を進める上で極めて重要。それをできるだけ迅速かつ正確に収集するのも、我々の大切な役割です」
隊員たちが活動しやすい環境づくりを行う
「P―3C」内には、前出のSSに加え操縦士、山形1佐もかつて経験したTACCO(戦術航空士)、ORD(武器員)、IFT(電子整備員)、FE(整備員)と専門家約10名が搭乗、各自専門任務を遂行するチーム編成が基本だ。
「搭乗前のブリーフィング(打ち合わせ)でその日の任務を共有するのですが、天気や雷、風など自然状況により、ブリーフィング通り進むことはめったにありません。状況に応じて対応する“チェンジマインド”が常に求められます」
その際、轟音響く環境のなか、できる限りわかりやすく、かつ的確に情報共有を行うことが求められると言う。
「轟音に負けない大きな声や、誤解を与えない的確な言葉のセレクトはもちろん、やはり大切なのは隊員同士の信頼関係。搭乗以外の場でも常にコミュニケーションを重ね、どんな状況でも迅速・確実に意思疎通できるようにしています」
そしてチームプレイにおいては、隊員配置も重要。それを航空機ごとに判断することも、非常に重要である。
「能力が高い人だけを集めても、その機体がいい活動ができるとは限りません。ムードメーカーがいたり、ベテランがいたり……そのために常に隊員たちがどんな個性を持っているかを把握するよう心がけ、全員が活動しやすい態勢を取れるよう配慮しています」
場所や規模こそ違えど、まさに前出のジブチでの山形1佐の役割そのもの。こうした見えない存在があるからこそ、海上の安全維持は滞りなく行われているのである。
- 【プロフィール】
- 1967年生まれ、群馬県出身。防衛大学校卒業後、1990年、海上自衛官に任官。1994年、TACCO(戦術航空士)として第2航空隊(八戸)に配属。2004年、海上幕僚監部厚生課、2008年、第22飛行隊長、2009年、海上幕僚監部装備体係課を経て、2012年より現職。2013年より派遣海賊対処行動航空隊司令(第13次要員)としてジブチに派遣された。
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