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特集 おじゃりやれ八丈島、青ヶ島へ2014年05月20日号

 
島の生活・産業を支える基盤整備
東京都八丈支庁 土木課長 浅見卓也氏

東京都八丈支庁 土木課長 浅見卓也

 東京から南へ約290km、太平洋を流れる黒潮の真ん中にひょうたん形をした島、八丈島がある。さらに南、約70kmには、伊豆諸島最南端の神秘の島、青ヶ島。八丈支庁は、この二島に暮らす住民の生活や産業を支えるため、あらゆる分野から事業を展開している。情けに厚く、もてなしの心にあふれた島の人々の「おじゃりやれ(いらっしゃい)」精神で、八丈支庁は日々の業務に取り組んでいる。

八丈支庁土木課について

八丈支庁の新庁舎(平成24年3月竣工)

新庁舎(平成24年3月竣工)

 八丈支庁土木課の所管するエリアは、豊かな自然に恵まれた南国情緒いっぱいの八丈島と神秘の島、青ヶ島である。土木課は、管理、用地、工事第一、工事第二の4つの係で構成され、道路、河川・海岸、自然公園等の基盤施設の整備や維持管理、整備に必要な用地の取得及び自然公園法に関する許認可業務などを担当している。

 なお、八丈支庁の歴史は古く、明治33年に東京府八丈島庁が設置されたことに遡る。昭和14年竣工の元庁舎は、現在、八丈島歴史民俗資料館として活用されている。

 昭和46年には現在地に鉄筋コンクリート造の庁舎が完成したが、厳しい気象条件のもと老朽化が進行、耐震性やバリアフリーなどの問題もあり建て替えが決定した。

 新庁舎は、テレビ会議機能を備えた防災対策会議室を設置し、地上・衛星2系統の通信回線を確保するなど防災拠点としての役割を果たすほか、太陽光発電や雨水利用を取り入れた自然や環境に配慮したものとなっている。

 

道路の整備

八丈空港道路(左側に八丈空港)

大規模な斜面崩落(点線が都道)

上:八丈空港道路(左側に八丈空港) 下:大規模な斜面崩落(点線が都道)

 公共交通機関が発達していない島しょ地域では、自動車等の普及率が高く、島内の都道は生活・経済活動の動脈や観光道路として重要な役割を担っている。

 八丈島空港を降りて最初に通行する道路が、八丈空港道路(都道第216号)である。平成24年2月に全線開通したこの道路は、幅9mの車道と両側に4・5mの広い歩道を持ち、ビロウヤシやハイビスカスなどの南国風の植裁や、歩道舗装材に島内産の石を活用するなど、随所に島らしさを演出する工夫がなされている。

 このほか、公共施設や人口が集中している坂下地区(三根、大賀郷)を横断する八丈中央道路(都道第216号)では道路拡幅と歩道設置工事を、島を周回する八丈一周道路(都道第215号)の樫立地区などでは見通しを良くするための道路線形改良工事を進めており、車両のスムーズな通行と歩行者の安全確保に努めている。

 青ヶ島では、唯一の都道である青ヶ島本道(都道第236号)において、住民生活の中心である中原地区の道路改良を平成21年度から実施しているほか、断崖部を走る道路であるため、がけ崩れや落石を未然に防止するための災害防除工事を随所で行っている。なお、平成19年9月の台風により大規模な斜面崩落が発生し、現在も一部で通行止めとなっている。

 不安定な気候や急峻な地形等、非常に厳しい施工環境のなか、島の動脈である都道の開通に向けて鋭意、努力しているところである。

 

河川・海岸の整備

南原園地と八丈小島

南原園地と八丈小島

 八丈島は、急峻な地形と国内でも屈指の降雨量を有する地域であることから、これまでも多くの土石流や斜面崩壊等の被害を受けてきた。

 このため、島内の8河川を砂防指定し、砂防ダムや流路の整備を進めてきた。現在は、小骨ヶ洞において砂防ダムの築造工事を実施し、土砂災害の防止に努めている。

 また、海岸の荒廃を防止するとともに、高波から後背地住民の生命や財産を守ることを目的とし海岸保全事業を行っている。

 現在、汐間海岸、横間ヶ浦海岸、垂戸海岸、乙千代ヶ浜海岸、洞輪沢海岸の5つを海岸保全区域に指定している。加えて、護岸には危機管理の一環として、津波情報提供看板を設置している。

 

自然公園の整備

きょん

底土キャンプ場

上:きょん(左の角があるのがオス)/下:底土キャンプ場

 伊豆諸島(青ヶ島を除く)は、昭和39年7月、富士箱根伊豆国立公園へと編入され、現在、八丈島と八丈小島の92%が国立公園に指定されている。

 八丈支庁は、これら自然公園法に基づく規制と施設整備を所管し、八丈島内の自然保護と適正な開発の両立を目指し、各種施策を展開している。

 また、八丈島の自然を楽しんでいただけるよう自然公園施設の整備も行っており、都立八丈植物公園では、八丈島や世界の亜熱帯・熱帯植物を公開しているほか、かの有名な(?)「八丈島のキョン」を飼育している。

 園内にあるビジターセンターでは、解説員による八丈島の紹介やパネル展示、映像など様々な形で八丈島の自然を紹介している。地元団体と連携した夏期限定の「光るキノコ」の観察会は、毎年、多くの方に参加いただき、好評を博している。

 また、これまでに南原、大潟浦、大賀郷、登龍、底土の各園地を整備してきた。各園地ともトイレと休憩所を備えているほか、南原、大潟浦、大賀郷には芝生の広がる開放的な空間が、登龍からは絶景の眺めが広がっている。底土には、炊事場やトイレのほか温水シャワーも備えたキャンプ場を併設しており、夏場には多くのキャンパーで賑わっている。

 

 

施設の維持管理

横間道路遠景

横間道路遠景

 施設そのものを良好な状態に保ち、かつ長期間有効利用していくための維持管理も重要である。

 坂下地区と坂上地区(樫立、中之郷、末吉)を結ぶ横間道路は連続した橋梁とトンネル、洞門から構成されている。完成から20年近くが経過し、構造物の劣化等が危惧される時期に来ており、今年度も継続して橋梁の耐震補強工事を実施する。その他、傷んだ舗装を打ち替える路面補修工事についても、毎年計画的に取り組んでいる。

 砂防河川では、ダムに溜まった土砂を取り除き、貯留機能を回復させるための除石作業を、堆積状況を確認しながら適宜実施している。

 園地では、心地よい空間を提供するための草刈や清掃作業が欠かせないが、島の雑草の成長は速く、除草剤等も使用していないため、一年を通しての草刈作業が続く……。

 海岸施設は、昨年の台風26号、27号でトイレのドアやあずまやの屋根が強風で飛ぶなど大きな被害を受けた。また、打ち寄せる高波によりコンクリート製の波返しが崩壊、自然の猛威をまざまざと見せつけられた。

 夏場の観光シーズンを控え、施設の復旧を急いでいる。


 最後に、これらの事業の実施にあたっては、島のみなさんをはじめ、関係部署の多くの方々からの理解と協力を賜っている。この場を借りて、感謝申し上げたい。

 

 

 

 

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