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特集 東京都庭園美術館22日にリニューアルオープン2014年11月20日号

 
文化都市東京の魅力を世界に発信

 東京都庭園美術館が11月22日、約3年にわたる改修工事を終えて、いよいよリニューアルオープンする。今回の改修工事では、東京都指定有形文化財となっている旧朝香宮邸を活用した本館の設備改修や修復復刻作業の他、新たに美術館としての機能を担うこととなった新館の改築が大きなポイントとなっている。東京都庭園美術館では「庭園と新旧の建物が調和した、国際的にも稀有な美術館として、文化都市東京の魅力を高めるべく、世界に向けて発信していく役割を果たせるよう努めていきたい」と話している。2020年のオリンピック・パラリンピック大会はスポーツの祭典であると同時に文化の祭典でもあり、リニューアルした東京都庭園美術館がその機能を十分に果たし、東京の文化的魅力の発信源となるよう関係者の期待は高い。

旧朝香宮邸の歴史と概要

 今回のリニューアルは、文化財保護と新しい価値の創造をめざし、都民に芸術作品の鑑賞の機会を提供する場として実施された。

 東京都庭園美術館の本館である旧朝香宮邸は昭和8年に完成した。建物面積は1048・29㎡、延床面積は2100・47㎡。地上3階地下1階。

 本館の最大の特徴は、フランスの建築様式であるアール・デコを日本で本格的に取り入れたことがあげられる。

東京都庭園美術館本館

東京都庭園美術館本館

 フランス滞在時にアール・デコの様式美に魅せられた朝香宮夫妻は、自邸の建設にあたり、フランス人芸術家アンリ・ラパンに主要な部屋の設計を依頼するなど、アール・デコの精華を積極的に取り入れた。また建築を担当した宮内省内匠寮の技師、権藤要吉も西洋の近代建築を熱心に研究、朝香宮邸設計に取り組んでいる。

 デザインの実現のため、厳選された素材と日本古来の高度な職人技が最大限活用された。壁面のレリーフ、照明器具、エッチングガラスなど、随所に当時のアール・デコ様式を見ることができる貴重な歴史建造物として、東京都指定有形文化財に指定されている。

 本館は昭和22年から29年まで政府が借り受け、吉田茂外相・首相の公邸として使用され、また昭和30年から49年までは、国賓、公賓の迎賓館「白金迎賓館」として使用された。

 その後、昭和58年に東京都庭園美術館として一般に公開、開館30周年を迎えた平成25年12月に本館の改修工事が竣工した。

 新館は建築面積1298・26㎡、延床面積は2140・81㎡。地上2階地下1階。

 昭和38年に迎賓館として建設され、平成18年までイベントや講演会で使用されていたが、平成19年の耐震診断の結果、耐震性に問題があることから閉鎖されていた。その後平成25年12月に本館と同様、改修工事が竣工した。

 新館はバリアフリー対応となっているが、本館は建物自体が東京都指定有形文化財であることから、バリアフリー対応の改修については現在、関係方面と検討中だ。

 

本館を建築当時に復刻
新館には新展示室を整備

東京都庭園美術館新館

東京都庭園美術館新館

 本館では旧朝香宮邸を、より創建時の姿に近づけ、新たな魅力の発信をテーマに位置づけた。具体的には東京都指定有形文化財である旧朝香宮邸の設備の改修と、建物保存を目的とした修復・復原作業を実施している。

 2階の殿下居間の場合、美術館となってから無地の壁紙だったものを、今回の改修で建築当時の壁紙に復原した。

 復原に際しては、竣工当時の写真や倉庫に保管されていた壁紙を手がかりにしている。しかしこれだけでは壁紙の色を特定することができなかったため、さらに緻密な調査を実施、その結果、淡いグレーの色調での復原となった。この他、細部のディテールにこだわった修復が随所で行われ、竣工当時の旧朝香宮邸を再現している。

東京都庭園美術館本館の殿下居間

本館の殿下居間

 新館は建物を改築し、庭園美術館の持つ可能性を広げるため新たにホワイトキューブの展示室が誕生した。

 アール・デコ様式の歴史的建造物の特色ある空間と、新館の新たな展示空間を効果的に組み合わせることで、これまでのラインナップに加えて現代美術の展覧会や映像、音楽、舞台芸術などを紹介するプログラムの実施が可能となる。これによって幅広い知的な関心と美的な経験への欲求に応える展覧会や教育普及事業が展開されるものと期待が高まっている。

 美術館で楽しく充実した時間を過ごしてもらおうと、新館には新たにカフェやミュージアムショップがオープンする。ここでしか手に入らないオリジナルグッズやオリジナルスイーツが用意される。

 さらにサービス向上の一環として、無料でダウンロードできるスマートフォン用アプリの製作も行われるほか、WiFi環境の導入も進められる。

 WiFi環境の導入は、本館の公開部分のすべて、及び新館1階のロビーとカフェで行われている。スマートフォンアプリでは、旧朝香宮邸の歴史や朝香宮家のこと、各室の概要、見どころなどをテキストと静止画で解説したものを提供する。また各室の解説の音声ガイド機能もついている。言語はテキスト、音声ガイドとも日・英だが、来年1月末までには、テキストで繁体字、簡体字、ハングルを追加する予定だ。

ラーニング・プログラムを実施
より親しまれる美術館へ

 東京都庭園美術館では、22日のリニューアル初日から12月25日までの期間、リニューアルオープン記念として、本館で「アーキテクツ/1933/Shirokane アール・デコ建築をみる」展が、新館ギャラリー1及び本館で「内藤礼 信の感情」展が開催される。

 前者では、旧朝香宮邸建築に関わった設計者や技術者たち(アーキテクツ)に焦点を当てる。彼らが1933年に、白金の地で何を目指し実現しようとしたのかを紹介する。

ワークショップの一例

ワークショップの一例

 来年1月17日から4月7日までは、東京都庭園美術館開館30周年記念として、「幻想絶佳:アール・デコと古典主義」展が、本館及び新館ギャラリー1にて開 催される。

 この他、展示会への理解を深めてもらうための講習会などに加え、美術館の楽しみ方を来場者一人ひとりが発見するラーニング・プログラム「ようこそ あなたの美術館へ」を開催する。展覧会の世界観に入っていく前の心の準備や感想を共有するなど、誰でも参加できるものとする予定だ。

 

 

 

 

タグ:東京都庭園美術館 旧朝香宮邸 アール・デコ

 

 

 

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