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2012年6月20日号
News Focus

地域防災力向上を目指して【3】
 南町田自主防災組織(町田市) 中篇

黄色い旗を使用した安否確認や独自に作成した洪水時避難マップ

 意欲的な防災活動を行っている団体として第一回「東京防災隣組」に認定された南町田自主防災組織。災害時の行動マニュアルを作成、黄色い旗を用いた安否確認方法を整備、水害時を想定した行動マニュアルや高低差等を記した洪水時の避難マップを作成するなど、ユニークな防災活動を展開している。今回は具体的な取り組みを紹介する。

 

災害時の行動マニュアル作成

※クリックすると拡大表示されます

 諮問部会発足から1年半かかって設立した「南町田自主防災組織」が、まず手をつけたのは、災害時に何をするか、平常時にどのような準備をするかを各家庭、ブロックの班員、班長、自主防災組織ごとにまとめたA4版8ページの「防災の手引き」と、その要点をまとめ、家庭の壁に貼っておけるようにした「自主防災マニュアル」の作成だ。

 「『実際の災害時にはそんなもの見る暇はない』という意見もありましたが、災害が起こったときに何をすればいいのか、考えておくことは非常に大事です。災害時には必ずパニックになり、何をしたらいいかわからなくなるものです。そんな時、これを見ればいいというものがあれば安心でしょう。それに日頃の備えや心がけを喚起するためにも必要だと思います」と本部員の方々は話す。

 その後、「防災の手引き」は「日ごろの準備」と「災害時の対応」の2枚にまとめられ、より見やすく身近に貼っておけるようになった。

 また、1年に1回広報誌を発行し、防災に関するニュースのほか、会計報告、備蓄品リスト、事務局からのお知らせなどを掲載。地域防災の意識向上に努めている。

 

初期消火と「無事です」の旗

 地震により火災が発生した場合、自主防災組織にできる消火活動は「初期消火」だけ。天井まで火が移ったら、自主防災組織では手がつけられないと消防署は言っている。一般に火が出てから5分弱が初期消火が可能な目安とのことで、出火したらとにかく隣近所に助けを求めるのが最善策なのだ。

 「震災なので水道は断水するものとして、初期消火にはどんな方法が現実的か考えてみたのですが、水バケツリレーは少し問題がある。可搬ポンプは台車まで含めると70万円ほどと高価で、しかも消火可能な範囲が町内の地形の特性で地域の4分の1程度しかないことが判明したので見送り。初期消火活動としては、消火器を近隣住民が持ち寄ることにしました」

南町田自主防災組織が行った防災訓練の様子「無事です」の黄色い旗を家の入口に掲揚

 各家庭に消火器を常備してもらうために、消火器製造・販売業者に依頼して消火器斡旋会を開き、販売と同時に使用限度を過ぎた容器の引き取り(有料)も行っている。なお、9月の防災訓練には、毎年200世帯以上は消火器使用を経験しているという。

 震災時には家屋や家具の倒壊・転倒などにより、救助が必要な人も出る。

 「地震発生時、ブロック内の班長が救助を求めている家庭をいち早く知る手段として、各家庭が自宅と敷地を接する隣家の被災状況を確認し、回ってくる班長に知らせることにしています。また、救助を求めていませんという合図として『無事です』の旗を作ることにしました。『無事です』の旗が出ていれば、その家は素通りできます」

 旗が出ていない家はドアを叩き状況を確認。応答がない場合は数人で庭に回り確認することになるが、場合によっては窓を割って侵入しなければならないこともある。ただ留守のため旗が出せない可能性もあるので、今後さらに検討していくという。

 

「洪水避難めやす図」

 地震災害とは大きく異なる災害が「洪水災害」である。町田市防災安全課が2008年に発行した「洪水ハザードマップ」によれば、2級河川「境川」に接する町内も3分の2ほどの家屋が2m以上浸水することになる。

 さっそく新たに「洪水対策部会」を設け、問題点の抽出、対策の検討作業を開始した。その中で手をつけたのが、境川から自宅まで何メートルの高低差があるのかを明確にすること。境川の護岸の1地点の天端高を基準に設定し、地区内を1mの高さごとに色分けした『洪水避難めやす図』を作成することにした。

洪水避難めやす図

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 「都や市が出しているハザードマップは、50mメッシュ毎に同一情報になってしまいます。洪水は地震と違ってすべての人がすぐに避難しなければならないわけではありません。余裕のある人は大事なものを2階にあげれば、浸水した場合でも余分な出費が抑えられますし、大量のごみの発生が防げます」

 ちなみに測量の基準としたのは、誰でも閲覧できる市の下水道部にある下水道台帳。そこに記された道路のマンホールのふたの高さから家の高さが分かるというわけだ。

 また、なかなか進まなかった洪水時一時避難場所の問題も、自主防災組織員が東急電鉄に交渉し、ショッピングモールの2階駐車場の1階部分を一時避難場所に利用できることになったという。南町田自主防災組織の行動力、発想力には目を見張るものがある。

 次号で実際の訓練の様子と今後の課題を紹介する。

 

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地域防災力向上を目指して 【4】 南町田自主防災組織(町田市) 後編

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